日立製作所は現在、全社的に大きく環境戦略を推し進めている。日立の脱炭素戦略とはどういうものか、具体的な手法も含めて日立製作所にきいた(全3回)。
日立製作所(以下、日立)の会社名から、何を思い浮かべるだろうか。この木なんの木、かもしれないし、いわゆる家電製品かもしれない。グローバルITサービスや、産業用機器、COP26の日本唯一のプリンシパルパートナー。そのどれもが正解だ。
日立は次期中期経営計画に向け、2022年4月から事業体制を変更した。事業領域セクターを「デジタルシステム&サービス」「グリーンエナジー&モビリティ」「コネクティブインダストリーズ」の3つとオートモティブシステム事業に組み換え、成長を加速させる狙いだ。その成長の軸のうち、デジタル、イノベーションと並んで大きくフィーチャーされているのが環境戦略だ。環境長期目標に向けた取り組みを強化するだけでなく、事業機会や価値創出にも力を入れ、GXによるサステナブルな成長を目指す。
その日立の脱炭素社会に向けた環境戦略は、以下のふたつが柱になっている。
しかし、グローバル、かつ事業領域が多岐にわたる日立でこれらを達成することは容易ではない。
日立は以前から環境問題に取り組んできたが、その内容や目的は大きく変わった、と日立サステナビリティ推進本部の長岡康範氏はいう。
「以前の目標は省エネが中心でした。しかし、京都議定書、パリ協定など、この20年ほどで、社会が求める環境対応がどんどん高度化していった。2016年には2050年バリューチェーン80%削減の目標だったのが、いまはカーボンニュートラルになった。世界の温暖化抑制目標も2℃から1.5℃になり、それに合わせるように目標もより厳しいものになりました」(長岡氏)。
「80年、90年頃とは外部の意識の変化が大きく、イシューが変わってきました。90年代は、CO2は目標というより、報告という感じでしたが、2010年以後、一気に変わってきました」と、サステナビリティ推進本部の久保勉氏もいう。
その最新の目標が、サステナビリティレポートには詰まっている。TCFDに基づき、シナリオ分析は6事業それぞれで行っている。事業ごとに気候変動への影響は大きく異なるからだ。
「気候変動リスクは、その事業でどれだけ化石燃料を使っているかが大きく関連しています。脱炭素社会に向けて、(化石燃料を)使わない、早期に減らすように移行する、がカギです。日立はほとんどの事業が電気エネルギーを使ったものになります。一方、エネルギー事業では発電側の脱炭素にも貢献できるとも考えています」(長岡氏)
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