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日立の脱炭素戦略を俯瞰する:カーボンニュートラル、あの会社はこうしている 日立製作所の場合(1)

2022年04月25日

2倍以上に引き上げたインターナルカーボンプライス

日立ではその上で様々な取り組みを行っているが、特筆すべきは環境成果評価を役員報酬にリンクさせるしくみの導入と、インターナルカーボンプライシングだ。

役員報酬とのリンクに関しては、まだしくみがはじまって一年経っていない(2021年4月から)ため、直接的な効果は明らかになっていないが、この取り組みから経営層への脱炭素への理解が深まってきた手応えはあると言う。

インターナルカーボンプライシングは、2019年導入時の設備投資にかかるCO2トンあたり5,000円を、21年8月に倍以上の14,000円にひきあげた。脱炭素につながる設備投資の優先順位の引き上げに活用している。この引き上げは、IEAや世界銀行などの多くの将来予測、これからの炭素価格動向などを調べ上げて決めた。

「少し、急に上げすぎたという声が社内にあったことも事実ですが、将来的には国境炭素税なども日立の事業には無関係ではありません。ヨーロッパではすでに8,000円で、2030年にはさらにあがるでしょう。それを考えるとあらかじめ高めに設定しておいたほうがいいという判断です」(久保氏)

「(金額設定は)相当大変でした。アジアの新興国から、欧米まですべて調べました。財務部門とも何度もやり取りをして、将来のステークホルダーのことを考えた数字が大事だと議論しました。日立に限らず、カーボンプライシングをあげるとPL上では悪化する傾向になります。ただ金額を増やせばいいというものでもない。すべての財務指標をみながら調整しなければなりません。脱炭素だけを考えていてもダメなのです」(久保氏)。

こうした取り組みはCDPの気候変動Aリスト入りにも評価ポイントだったのではないかと長岡氏は言う。「CDPは投資家目線の設問が入っていて、しかも問題を先取りしている。これから何をしていけばいいのかという指標づくりにも役にたっています」

こうした取り組みで削減する温室効果ガスは、CO2換算でスコープ1:120万トン、スコープ2:210万トン、スコープ3が6,900万トンになる(2020年度)。次回は、このCO2をどのように削減していくか、具体的に見ていく。

バリューチェーンを通じた温室効果ガス排出量の現状(2020年度)
出典:日立製作所の資料をもとに編集部再編集

 

「シリーズ:カーボンニュートラル、あの会社はこうしている」はこちらから

小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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