コーポレートガバナンス・コードが6月に改訂される。今回の改訂は、世界的に高まる脱炭素、気候変動対策とダイバーインクルージョン(多様性)がポイント。海外投資家が環境問題などをはじめ、人権問題、労働環境にもより高い対応を求めていることも背景にはある。
コーポレートガバナンス・コードとは、企業統治(コーポレートガバナンス)の指針。2014年の成長戦略に織り込まれ、金融庁と東京証券取引所が2015年3月に取りまとめ、同年から上場企業に適用されている。
法的拘束力はないものの、指針を実施しない場合には金融庁、東証に対して説明が求められる。このコーポレートガバナンス・コードは2018年に一度改訂されており、今度が2度目の改訂になる。2018年では取締役会の透明性、客観性などが求められた。
この指針が今年6月に改訂される。改訂の目的は、脱炭素、気候変動対応、多様性だ。
世界的に高まる脱炭素、気候変動対策とダイバーインクルージョン(多様性)に対応する。特に、海外投資家が環境問題などをはじめ、人権問題、労働環境にもより高い対応を求めていることも背景にはある。
金融庁が4月7日に発表した改訂案では、「我が国企業においては、サステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくことが重要である」(第2章 「考え方」より)とある。
特に、第3章「適切な情報開示と透明性の確保」の情報開示の充実、補充原則には「特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである」とある。
プライム市場とは、東証の現在5つある市場を3つに再編する際に予定されている最上位のもので、企業数は未定だが、市場に流通する株の時価総額が100億円以上の予定だ。そうした企業にはより厳格な対応を求めている。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応も重視されており、日本企業が現在201社参加している同コンソーシアムへの参加をより促す効果もありそうだ。
これらに関連して、4月28日に行われた金融庁とJPX(日本取引所グループ)が主催のセミナーでは、金融庁の桑田尚総合政策局総合政策課総合政策企画室長が参加。 「幅広いESG課題をカバーするフレームで考えるが、2050年カーボンニュートラルの実現が当面の最重要ターゲット」と考える金融庁・サステナブルファイナンス有識者会議について紹介した。
桑田氏は、カーボンニュートラルとTCFD開示について「気候変動対策は長期、かつ不確定要素が多く、TCFD開示に対応しようと思っても手間も経費もかかり、算定ツールも定まっていないため、未対応の企業もある。それは考えながらやるしかない。金融庁としても事例や各種ナレッジの共有を提供したい。まずはじめて、その上で学びながら、投資家とも建設的な対話をすることが最重要だと考える」と述べた。
また、「フロントランナーも大事だが、すそ野の広がりも重要。その意味で、地域の金融機関も重視している。トップダウンだけではなく、現場のすり合わせをおこない、金融機関自身の取り組みとともに、顧客へのコンサルティングもしていけるようにしたい」と述べた。
(Text:小森岳史)
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