ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、エクソンモービルやシェルなどの石油メジャーは相次いでロシアからの撤退を決めている。
日本が輸入するLNGのおよそ1割は、主としてサハリン産のものだが、いずれも石油メジャーも参加するプロジェクトであり、日本企業の対応も問われることになる。
2022年2月28日、シェルは世界最大の天然ガス会社でもあるロシアのガスプロムとその関連事業体から撤退する意向を表明した。その中には、ロシアとドイツをバルト海を通じて結ぶ海底ガスパイプライン事業のノルドストリーム2や日本にLNGを供給するサハリン2が含まれている。
Shell intends to exit equity partnerships held with Gazprom entities. https://t.co/UVidOeydZB
— Shell (@Shell) February 28, 2022
シェルはサハリン2の株式の27.5%を所有しており(ガスプロムが50%)、同様に株式を所有している三菱商事と三井物産も判断を迫られることになる。とはいえ、日本向けのLNG供給の確保の点からは、難しい判断になりそうだ。
ノルドストリーム2は、ほぼ完成しているものの、米国のロシアへの経済制裁を受けて、運用が延期されてきたものだ。こうした状況を受けて、ノルドストリーム2そのものが、破綻を検討しているという報道も出ている。
シェルのCEOであるベン・ファン・バーデン氏は今回の決定にあたって、「ウクライナや他の国のシェルのスタッフは、現地での危機に対応するために協力してきました。また、シェルは救援活動を支援するために人道支援機関と協力します。私たちの当面の焦点は、ウクライナの人々の安全とロシアの人々の支援です。また、世界中の政府との話し合いの中で、関連する制裁に準拠して、ヨーロッパやその他の市場への安全なエネルギー供給の重要性など、ビジネスの詳細な影響についても検討します」とコメントしている。
2021年末の段階で、シェルはロシアの企業を通じて約30億ドルの固定資産を有しており、今回の決定は減損につながるとしている。その上で、営業キャッシュフローの20~30%を配当と自社株買いにあてることなどで、財務の枠組みを変えない方針だ。
翌日の2022年3月1日には、米国の石油メジャーであるエクソンモービルが、ロシアの石油事業サハリン1の操業を中止し、ロシアへの新規投資を行なわないという声明を発表した。
エクソンモービルの声明は以下の通り。
「エクソンモービルは、自由を守り、国家としての自らの未来を決めようとするウクライナの人々を支援します。私たちは、ウクライナの領土の一体性を侵害し、その国民を危険にさらすロシアの軍事行動を遺憾に思います。
我々は、罪のない人々の命が失われたことに深い悲しみを感じるとともに、強力な国際的対応を支持します。私たちは、すべての制裁措置を完全に遵守しています。
エクソンモービルは、日本、インド、ロシアの企業で構成される国際コンソーシアムの代表として、サハリン1プロジェクトを運営しています。最近の事態を受け、当社は操業を停止するためのプロセスを開始し、サハリン1から撤退するための手順を開発中です。
サハリン1のオペレーターとして、私たちは人々の安全、環境保護、そして事業の完全性を確保する義務があります。オペレーターとしての私たちの役割は、単なる出資にとどまりません。操業中止のプロセスは慎重に管理され、安全に実行されるよう共同出資者と密接に調整される必要があります。
現在の状況を鑑み、エクソンモービルはロシアでの新たな開発には投資しない方針です」
We issued the following statement regarding the situation in Ukraine today. https://t.co/TVF1yL3Ga6 pic.twitter.com/d29DWVEzDz
— ExxonMobil (@exxonmobil) March 2, 2022
声明にある通り、サハリン1はエクソンモービルと日本の官民による合弁会社のサハリン石油ガス開発が30%ずつ、インド石油天然ガス公社とロシアの石油大手ロスネフチの子会社が20%ずつ権益を持っている。また、サハリン石油ガス開発には政府の他、丸紅、伊藤忠商事などが出資している。
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