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「なぜ原発20基分に相当するLNG火力発電は停止した?」衆院予算委員会で電力ひっ迫、価格高騰を質疑

「なぜ原発20基分に相当するLNG火力発電は停止した?」衆院予算委員会で電力ひっ迫、価格高騰を質疑

EnergyShift編集部
2021/02/10

シリーズ 2021年電力ひっ迫

2021年2月8日の衆議院予算委員会において今冬に発生した電力ひっ迫、それに伴う電力卸売価格の急騰について質疑が行われた。秋本真利衆議院議員は、「2020年12月26日から2021年1月6日にかけて、なぜ原発20基分に相当するLNG(液化天然ガス)火力発電所は停止したのか?」「ひっ迫、そして価格高騰はLNGの在庫不足によるものではないか?」と質問し、さらにFIT特定卸供給を実施する再エネ系新電力への追加支援を求めた。

ひっ迫原因は、太陽光発電の出力低下ではない

この冬、電力需給がひっ迫し、電力単価が約30倍も急騰した。

秋本真利議員は、「今回のひっ迫で、電力単価が170時間もの間1kWhあたり100円を超えた。1ヶ月近く、高値で張り付いたのは世界でも初めてだと言われ、非常に恥ずかしい。市場のルール形成、制度そのものが未成熟ではないか」と指摘した。

今回の事態について、一部メディアから、「今回の事態は、雪の影響で太陽光発電の発電量が落ち込み、LNG火力の消費に拍車をかけた。国は原発の再稼働を進めるべきだ」といった報道がある。

秋本議員は、こうした報道はミスリードだと指摘する。

「1月6日から12日までの全国の太陽光発電の発電量を見ると、前年同期と比べ1割以上増えている。確かに積雪地帯では発電しなかったが、太陽光発電はしっかりと貢献した。今回ひっ迫した時間帯は朝と晩だ。この時間帯はどの地域であっても、太陽光発電は発電しない。つまり、太陽光発電の出力低下によってひっ迫したという報道は、完全なミスリードだ」と述べた。

LNG火力は恣意的に停止したのか?

では、なぜ、電力需給はひっ迫したのか?

秋本議員は、「1番の原因はLNGの在庫不足だ」と指摘する。さらに、「電力卸取引所に玉が出てこないために価格が高騰したのだが、2020年12月26日から2021年1月6日まで2,000kW、原発20基分のLNG火力が停止したと電力・ガス取引監視等委員会は指摘している。なぜ、原発20基分のLNG火力が止まったのか?」と質問した。

松山泰浩資源エネルギー庁電力・ガス事業部長は「厳寒によりLNG火力の稼働率が高まり、2020年12月中旬から下旬にかけて、相当程度燃料在庫が減少したため、燃料の制約運転が進んだ」と述べた。

これを受け、秋本議員は「本当に恣意的に停止していなかったのか? 詳細なデータが開示されない限り、原因究明はできない。第三者が検証できるよう詳細なデータの開示をお願いしたい」と述べた。

再エネ系新電力への追加救済はあるのか

続いて、秋本議員はFIT特定卸供給に関する質疑を行なった。

FIT特定卸供給とは、一般送配電事業者がFIT価格で買い取った再生可能エネルギー(FIT電源)を市場価格に連動した価格で新電力が調達する仕組みである。再エネ電気を売る地域新電力など多くの再エネ系新電力はFIT特定卸供給を中心に再エネを調達している。

秋本議員は、「法律上、卸電力市場を介さなければ、再エネを調達できない仕組みになっている。リスクヘッジをしない新電力が悪いという議論があるが、他の市場では再エネを調達することができない。リスクをヘッジする手段がない中、法律に基づき、地域の再エネを調達し、地域に供給し、地域の経済活力をあげていこうという意識を持つ新電力が、今回の高騰によって大ダメージを受けている。FIT特定卸供給について梶山経済産業大臣の見解をおうかがいしたい」と質問した。

梶山経産大臣は、「FIT特定卸供給の中にもいろいろな種類がある。地域の再エネを使い、地域に供給する。また公が出資をしている、ということも含め、何かしらの手立てがあるのか。これから考えていきたい」と述べた。

大手電力会社の社内取引価格の情報開示を検討

このほか、秋本議員は大手電力会社の社内取引が不透明であるため、グロスビディングの取引量に関しても詳細な情報開示を求めた。

グロスビディングとは、大手電力会社がグループ内取引している電力の一定量を卸電力市場に放出する仕組みだ。このグロスビディングに関して、秋本議員は、「大手電力会社の小売部門は、自社グループの発電部門が市場放出した玉を100円、200円の値段を入れても買うことができる。小売部門は大損を抱えるが、発販一体のため、発電側に収入が入るためイコールゼロになると指摘されている。

今回のひっ迫の原因は玉不足だ。このグロスビディングがどのように行われたのか。きちんと究明されなければひっ迫の真相究明はできない」と発言。

この発言を受け、河野行政改革担当大臣は、「社内の取引価格が外に出なければ、今、発言されたことが現実に行われる可能性がある。社内の取引価格を対外的に公表することは必要だ」と述べた。

梶山経産大臣は、「電力市場の健全性とは、透明性と流動性だ。その観点からグロスビディングの情報開示もしっかりと考えなければならない」と発言した。

求められる電力市場の成熟化

2021年2月3日に開催された「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」において、河野大臣は、以下のように述べている。

「電力・ガス取引等監視委員会の説明はうわっつらだ。本当に市場の番人という役割を果たせているのか。これだけのことが起こり、きちんとした調査ができないのなら、監視委員会ではなく、公正取引委員会にこの分野を担ってもらうしかない。電力自由化には公正な市場と多様な新規参入者の両方が不可欠だ。市場制度の不備によって、新電力が続々と撤退してしまうということになれば、電力自由化の時計が逆戻りしてしまう。新規参入者に不測の事態が起こらないよう対応を考える必要があるのではないか」。

今後、再エネ系新電力への追加支援は進むのか。あるいは、LNG火力の停止は恣意的だったのか。またグロスビディングは適正だったのか。再エネの普及拡大に向けても、電力市場の成熟化は欠かせない。

 

参照
衆議院予算委員会 2021年2月8日

(Text:藤村朋弘)

シリーズ 2021年電力ひっ迫

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