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なぜGoogle Waymoはテスラと決別するのか ひとつの道路に二つの自動(自律)運転技術が走る

なぜGoogle Waymoはテスラと決別するのか ひとつの道路に二つの自動(自律)運転技術が走る

2021/01/26

自動車における大きな変化は、電動化と同時に情報化に向けたものとなっている。いわゆる自動運転技術の確立と導入だ。この自動運転技術をめぐって、テスラと他社勢の間に、亀裂が生じているという。それはどういうことなのだろうか。日本サスティナブル・エナジー代表取締役の大野嘉久氏が解説する。

完全自動運転に対する大きな期待

人は完全自動運転に何を期待するだろうか

完全自動運転となった車は、自宅から駅、学校、農場、港、工場、店、オフィスあるいは病院まで送迎してくれるだろうし、帰りを気にせず飲酒もできるようになる。しかしそれ以上に、視覚障害をお持ちの方を含めて、ご移動が困難な方々に大きな助力と自由を与えることになる。人の介助なく移動できればもちろん人件費が削減されるが、「誰かに介助を頼まなければならない」という精神的な負担からも解放される。常に身近な人に移動の助けを借りなければならない方々にとって、これは何にも代えがたいだろう。

あるいは家庭内に介助を必要とされる方がお二人以上いた場合、完全自動運転の価値はさらに増すことになる。他方、稼働していない時間に自家用車を「ロボタクシー」として人の送迎サービスに使うことで新たな収益源にすることもできる。

こうした未来に向けて世界各国で自動運転に関連した技術の開発が進んでいるが、米国を中心とした自動車産業界では、自動運転システムの根幹技術の一つである周辺監視用センサーの方式をめぐって、電気自動車大手のテスラと他社勢が対立してきた。

そして今年1月6日、非テスラ陣営の代表的な企業であるGoogle系自動運転開発企業のウェイモ(WAYMO)から「今後は我々の自動運転技術をテスラと区別してほしい」と発表された。

この対立は今後も続くのだろうか? それとも、ビデオのVHSとベータのように、どちらかが勝者となって収束するのだろうか?

テスラは他社勢とセンシング技術で対立している

現在、自動運転に関わるほとんどの事業者がレーザー光を対象物に照射して帰ってくる時間をもとに距離や方向を算出する「LiDAR/Light Detection and Ranging(ライダー)」という方式を利用している。これに対してテスラは電磁波(Radar)を照射する「Vision(ビジョン)」という方式を採用してきた。

多数派が使うLiDARはミリメートル単位で物体を検知できるが、その代わりに1つあたりのコストが数千ドルから1万ドル(数十万円~百数十万円)と高価である。一方のテスラのVisionでは一般的なカメラを使うためコストはわずか数ドル(数百円)で済み、その差額は数千倍にもなる。

LiDARの技術では、ウェイモが米国で事業を展開しているロボタクシーや高級車ならともかく、低い価格帯の自動車だと物体検知装置が車体価格を上回ってしまう事にもなりかねず、これだと一般に普及させるのは困難であろう。

自社と対立するテクノロジーに辛口なことで知られるテスラCEOのイーロン・マスクは、2019年4月22日に開催した自動運転イベント「Autonomy Investor Day」において次のようにLiDARを酷評している

LiDARは馬鹿の道具だ(LiDAR is a fool’s errand)…」「…LiDARを使う者は消える運命にある(and anyone relying on LiDAR is doomed)」

Tesla Autonomy Day(テスラ公式動画)

テスラは自社のAIに自信がある

ただしテスラは当然ながらコストの違いだけで優劣を論じているのではない。というのも、同社はLiDARよりヒトの視覚に近いカメラで得た情報を高度なAI(人工知能)にて解析することで、LiDARを使ったシステムより精度の高い自動運転を実現しようとしている模様である。

テスラのエンジニアは上記のAutonomy Dayで「皆さんは目からレーザー光線を照射せず(つまりLiDARを使わず)、視覚で得た情報だけを頼りにこの会場まで運転してきた。だから車も同様にレーダーの情報(カメラの画像情報)だけで周囲の情報を3Dで感知できる」と解説して、実際に車載カメラだけで完成させた走行時の周囲を3次元で再現した動画を上映した。

つまりテスラは人の目と頭脳に代わるAIを完成させる技術力があり、且つそれを十分に低価格で普及させることができる、と言っているのである。

非テスラ陣営における中核企業の一つ、グーグル系ウェイモが“自動運転”を“自律運転”に再定義

一方、自動運転の業界団体「Self-Driving Coalition for Safer Streets」は、自動運転の安全性を高めて社会が享受する便益を理解してもらうよう、政治家や規制当局に働きかけている。

この業界団体には米フォードやスウェーデン・ボルボ・カーズ、米配車大手リフト、前出のウェイモ、米フォード傘下の自動運転技術開発企業アルゴAI、自動運転の宅配ロボットを開発している米ニューロ、配車サービス大手の米ウーバー・テクノロジーズ、そして米アマゾンが出資している自動運転ベンチャー企業米オーロラの8社が加盟している。

この中でもウェイモは価格競争力の強いLiDARを独自開発しており、それらをウーバーやボルボに提供するなど非テスラ陣営において技術面でもたいへん重要な存在であるが、そのウェイモは2021年1月6日のブログ「Why you'll hear us saying fully autonomous driving tech from now on」において自社の技術を「“Self-driving”(自動運転)」ではなく「“Fully Autonomous Driving”(完全自律運転)」と呼ぶことを発表した。

というのも同社の技術はあくまで運転補助技術をベースに発展したものであり、安全を確保するためには免許保有者の監督を必要とする、と説明している。さらにそのうえで、「残念なことに‟自動運転”という言葉を間違って使用している企業がある」「それらの混同は運転者だけでなく他人の安全も脅かす危険がある」とあからさまにテスラを示唆しつつ非難し、「当社の技術はこれら“自動運転”と区別する」としている。

そのうえ、自動運転の公的な教育プログラムとして展開してきた「Let’s Talk Self-Driving」キャンペーンも、「Let's Talk Autonomous Driving」へと名称を変更させるという。


Let's Talk Autonomous Driving キャンペーン

非テスラ陣営とテスラの溝が広がる

今回のウェイモによる“自動運転”から“自律運転”への定義の変更は、非テスラ陣営がテスラと開いている溝をさらに大きく拡げることになるだろう。

もちろん本件はLiDARとRadarの技術的な優劣を決めるものではないが、両者が歩み寄ることも当分の間は期待できなくなったと言える。

今後も双方が譲らなければ、将来はOSのウィンドウズとマッキントッシュが互いに干渉を避けて残り続けているように、同じ道路の上に二つの自動運転システムが併存する可能性もある。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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