なぜ初の電力需給ひっ迫警報発令に至ったのか? このままでは次の冬も危機的な状況に | EnergyShift

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なぜ初の電力需給ひっ迫警報発令に至ったのか? このままでは次の冬も危機的な状況に

次の冬期も危機的な需給に

今後、こうした需給ひっ迫を回避することが可能なのだろうか。また、そのためにどのような方法があるのか。あるいは、供給不足に陥った場合、計画停電などをどのように実施すべきなのか。考えるべきことは多い。

構造的な問題として、次の冬も需給ひっ迫となる可能性は高いといえる。

今回は3月下旬での需給ひっ迫だったが、来冬についての電力需給見通しは、非常に厳しいものとなっている(表2)。

表2:厳気象H1需要に対する予備率

<2022年2月25日時点>

 12月1月2月3月
北海道14.9%7.7%8.1%19.3%
東北10.4%3.4%8.0%19.3%
東京9.2%3.3%2.7%10.6%
中部9.2%3.3%2.7%10.6%
北陸9.2%5.1%4.1%10.6%
関西9.2%5.1%4.1%10.6%
中国9.2%5.1%4.1%10.6%
四国9.2%5.1%4.1%10.6%
九州9.2%5.1%4.1%10.6%
沖縄30.7%31.3%51.2%63.1%

<現時点>

 12月1月2月3月
北海道12.6%6.1%6.1%11.6%
東北8.8%6.1%5.9%11.6%
東京8.8%0.1%1.0%11.6%
中部8.8%3.7%3.1%9.3%
北陸8.8%3.7%3.1%9.3%
関西8.8%3.7%3.1%9.3%
中国8.8%3.7%3.1%9.3%
四国8.8%3.7%3.1%9.3%
九州8.8%3.7%3.1%8.6%
沖縄56.4%42.0%43.6%69.3%

出典:経済産業省HPをもとに編集部再編集

東京エリアでは、2023年1月の予備率がわずか0.1%しかない。今冬を参考に、より厳しい寒さとなった場合に、電力需要がこれまでの想定よりも増加しているということだ。

予備率が低くなっている原因は、経済合理性がないとして老朽化した火力発電所の休廃止が続いているということがある。そこで、10万kW以上の休廃止見込み電源と小売電気事業者との間で電力購入に関するマッチングを行なっているが、これによって休廃止を回避した電源はなかった。問題はそれだけではない。原油価格の上昇などにより、発電コストが高い石油火力そのものの設備利用率が低下していることも指摘できる(図2)。こうした電源の休廃止を回避する方策は考えられるべきだし、費用回収の方法として託送料金に含めるという考えについては、今回の配布資料でも指摘されているところだ。

図2

この冬(11/22~2/27)の石油火力設備利用率の推移 

電源ごとの年間設備利用率の推移


出典:経済産業省HPをもとに編集部再編集

この他、地域間連系線の増強も必要となるが、それに北海道と東北、東北と東京、東京と中部の間については2027年度中の増強が予定されている。

なお、電源確保についていえば、多くのメディアで原子力発電の再稼働の促進が必要だという論調で語る有識者や政治家は少なくない。しかし、実態は再稼働できるものであれば再稼働しているが、工事の遅れなどによって十分な安全性が確保できていないことや、事業者そのものの信頼を損ねるような不祥事によって再稼働に至っていない。そのため、議論の余地はないということは指摘しておきたい。

この他にも、補修の計画の見直しなども必要となるだろう。1月、2月、7月、8月という需要期の計画停止は少ないが、近年は太陽光発電が拡大していることから、7月と8月にもう少しシフトすることも可能かもしれない。

需要側の対応は、より拡大していくことが必要だろう。

DRについては、まだまだ活用できるポテンシャルがあるのではないだろうか。2021年度の容量市場オークションでは、0円で入札したにもかかわらず、落札できなかった発動指令電源(DRはここに含まれる)がある。また、今回の需給ひっ迫のように10年に1度以下の頻度で起こることを想定すれば、より広範なDRを設定しておくことも可能ではないだろうか。2024年度向け容量市場の追加オークションで募集していくということもあるだろう。

3月22日の最大需要電力は、東日本大震災以降では3月としては最大クラスのものであった。異常な寒波だったということはさておいても、震災後に進んできた省エネが近年は停滞していないだろうか。こうした点についても、考えていく必要があるだろう。

今回の電力需給ひっ迫で救われた点は、揚水発電所の上池の貯水量がかなりあったことだ。前日までに貯水して備えてきたと思われる。実は、2017年冬にも電力需給ひっ迫が起きたが、このときは積雪によって太陽光発電の出力が予想よりも少なかったことに加えて、需給予測を誤り、揚水発電の貯水が十分ではなかったということが重なっている。

電力システムの運用にあたっては、より安全サイドに立った運用を検討する必要があるだろう。気象予測についても、そのままではなく、より厳しいシナリオを用意しておくことができれば、節電対応についてもより早くできた可能性がある。

この日はこの他にも、今後の小売政策について審議された。新規参入の小売電気事業者はスポット市場の価格高騰で経営状態が悪化している。今後も価格は高値で推移することが予想される。こうした状況下で、小売電気事業はいかにあるべきか、これも今一度考えるべき課題だ。

 

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もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798064949.html

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