モータージャーナリスト、大田中秀一が、三菱・i-MiEV(初期型)にややロングに乗ってみた。 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

モータージャーナリスト、大田中秀一が、三菱・i-MiEV(初期型)にややロングに乗ってみた。

モータージャーナリスト、大田中秀一が、三菱・i-MiEV(初期型)にややロングに乗ってみた。

2021年10月24日

中古EV(電気自動車)は、自動車としてどうなのか、前回は三菱自工のi-MiEV “M”に試乗したところ、不満を感じたというモータージャーナリストである大田中秀一氏。とはいえ、劣化が少ない東芝製の蓄電池を搭載した“M”は人気が高いという。一方、初期型から搭載してきたLEJの蓄電池を採用したi-MiEVはどうなのか。今回は初期型の試乗レポートをお届けする。

シリーズ:EVにややロングに乗ってみた

前回は、岐阜県土岐市の販売店に出向き“M”に試乗させてもらい、その報告をさせていただきました。

その後また大量在庫をもつ販売店を奈良県生駒市に見つけたので早速乗せてもらいに行きました。

嬉しいことに在庫は全てLEJ(リチウムエナジージャパン=GSユアサと三菱系の合弁会社)製電池を搭載するモデル。前期、中期、後期モデルに加えて光岡LIKEまであるという充実ぶりでした。

“M”編の繰り返しになりますがおさらいです。

i-MiEVには大きく分けて以下のモデルがあります。細かい仕様変更や価格変更はあるもののこれだけ知れば充分でしょう。

  1. LEJ製16.0kWhリチウムイオン電池搭載、出力47kWタイプ
    前期(2009年~2011年7月)
    中期(2011年7月~2013年11月) “G”
    後期(2013年11月~2018年4月) “X”(省電力型ヒートポンプエアコン搭載)
  2. 東芝製10.5kWh SCiB電池搭載、出力30kWタイプ
    全期(2011年7月~2018年4月) “M”(省電力型ヒートポンプエアコン搭載)
  3. 軽自動車から小型車化(2018年4月~2021年3月生産終了)“X”のみに(LEJ製電池を搭載)

これはすごくいい!

試乗したのは2009年(平成21年)式。前述の通り16.0kWhのLEJ製電池を搭載したモデル。走行2.6万キロで34.8万円です。電池容量は航続距離80~90キロ程度にまで低下しているとのことでした。

試乗は住宅地で、平坦路→カーブが続くちょっとした登り坂と下り坂区間→平坦路という、通常の試乗プラスアルファという感じのルートでした。

販売店から路上に出てアクセルを踏んだ瞬間から、すでに先日乗った“M”との違いは明らかでした。力強くぐいっと加速し、全然違うなと思いました。

特に、運動不足の体で歩くときついくらいの坂道途中からの加速が素晴らしい。後から押される感じがとてもいいです。

また、登り下りでアクセルを踏みながらステアリングを切ったときのクルマの挙動がなんとも言えず楽しい。

価格からしても運転しての楽しさからしてもこれは「買い」だと思いました。

パリ・ダカールラリーで活躍した増岡浩さんが、後にパイクスピーク(アメリカで行われているヒルクライムという山を駆け上がるレース)のEVクラスに“i-MiEV Evolution”で参戦するきっかけになったのが、最初のi-MiEVに乗って感激したからだと、Clubhouseで知り合ったi-MiEVをよく知る人に聞きました。

SCiBの“M”かLEJの初期型か、それが問題だ

前述のi-MiEV事情通によると、LEJモデルは初期型が最もアグレッシブで、中期、後期と改良されるに従っておとなしいセッティングになっているそうです。

ユーザーの声を聴き、航続距離を伸ばそうとしていった結果だそうですが、デビュー当初は尖った部分があってもその後の改良で段々丸くなっていくということはどんなクルマでもあるのでi-MiEVに限ったことではありませんね。

と、いうことで、中古のi-MiEVを買う場合どちらがいいか?

今後の電池の劣化が少ない方がいいと思えば“M”ですし、運転の楽しさを求めるなら断然初期型です。

約100万円の費用がかかりますが、初期型も電池を新品に交換すれば航続距離は180キロに戻ります。ただしその場合はどの期のモデルでも後期型と同じセッティングになってしまうらしいので注意が必要ですが。

電池交換してまで乗らなくても、航続距離の範囲で楽しめばいいと思います。

ところでLEJモデルの電池がなぜこんなにくたびれているか? ですが、“M”に乗せてもらった岐阜の販売店の話では、急速充電の多用が原因だとのことでした。あちらにあったのも今回のもそれぞれの地域の電力会社が使っていたものなので手厚く使われることがなかったのでしょう。

急速充電は電池を傷めることと、何も気を遣わずに使われたEVが数年後にどうなるのかがわかるエピソードです。

i-MiEVの中古車を買おう!

今回注目したのは価格。35万円ですよ。新車で買うと補助金をいろいろもらってもまだあんなに高かったのに。中古EVを買うのはアリだと思います。

個人で新車を買った人は気の毒と言うほかない値落ちですが、中古で買おうとする人にとってはこんなにいいことはありません。

EVをセールス氏に勧められるままに買って、ブームに乗って買って後悔した人をたくさん知っています。

エンジン車とは使い勝手で異なる部分も多いので、興味はあるけどいきなり新車でEV購入には踏み切れないという人にも中古を買うのはお勧めできます。

30万円の中古車に3年も乗れば下取り価値がゼロになるのはどんなクルマも同じですし、ゼロになったとしてもこのクルマの場合で最高で35万円(諸費用別)の出費で済みます。

どんな中古車でも新車でも買って売れば35万円は値落ちしますので、金額だけ見ればEVの中古車だから特別に損したということにはなりませんし、後悔もしないでしょう。

試しに買ってみて、自分に合わないとか、まだ早いなと思えば次はエンジン車に戻ればいいし、これはいいとなれば次は新車でEVを買えばいいし、選択肢が広がるのはいいんじゃないでしょうか。

ちなみに私が買うなら、

“街中を法定速度内でも楽しく走れる小さい後輪駆動車”

としてこの初期型のi-MiEVを選びます。

(取材・写真・文:大田中秀一)

大田中秀一
大田中秀一

乗りもの、特にクルマ好きで、見ること、乗ること、買うこと、しゃべることすべてが好き。特に運転が好き。ハンドルを見るととにかく運転したくなる。世界各国のディーラーを中心に試乗台数したクルマはのべ1,000台を超える。5年間のレース参戦経験を活かし、レーシングスクールインストラクター(見習い)も時々務める。大型二種免許も所持していて、運転技術や安全運転に関しての研究も行なう。モビリティに関わることすべてを興味のままに取材、自動車専門誌並びにweb、経済ニュースサイトなどに寄稿している。世界のマイナーモーターショーウォッチャー、アセアン・ジャパニーズ・モータージャーナリスト・アソシエーション会長、インドネシアにも拠点がある無意識アセアンウォッチャー。実は電池の世界もちょっとだけ知っている。

モビリティの最新記事