日本の脱炭素市場はさらに拡大する グッドフェローズ 水田昌紀顧問・長尾泰広代表取締役に聞く | EnergyShift

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日本の再エネ市場はさらに拡大する グッドフェローズ 水田昌紀顧問・長尾泰広代表取締役に聞く

日本の脱炭素市場はさらに拡大する グッドフェローズ 水田昌紀顧問・長尾泰広代表取締役に聞く

EnergyShift編集部
2020年04月23日

株式会社グッドフェローズは、太陽光発電の見積もり比較サイトの「タイナビ」をはじめとするインターネットメディア事業や太陽光発電および機器販売などの事業を展開し、成長を続けている企業だ。昨年(2019年)には、インリー・グリーンエナジー日本法人の元代表取締役である水田昌紀氏を顧問に迎えた。グッドフェローズ代表取締役社長の長尾泰広氏と、顧問の水田氏に、改めてどのような事業展開を目指すのか、おうかがいした。

「IT×リアル」の「リアル」の強化へ

―最初に、太陽電池モジュールメーカー中国大手インリー・グリーンエナジーの日本法人社長を務めた水田昌紀氏がグッドフェローズの顧問に就任した経緯を教えてください。

水田昌紀氏:社長の長尾と初めて会ったのは2018年4月で、ある方を通じて一緒に会食することになったことがきっかけです。もともとグッドフェローズには興味があり、当時、ある新規法人の立ち上げを進めていたのですが、グッドフェローズにも出資をお願いしました。結果として、この事業自体は出資いただく前に事業譲渡することとなり、出資は実現しませんでしたが、これをきっかけに、連絡をとりあうようになりました。

長尾泰広氏:私も憶えています。共通の知人を通した食事会でしたが、水田と私を含めた3人で2軒目に飲みに行き、じっくり話をしてみてその豊富な知識や卓越した知性にすごく魅力を感じました。その後も情報交換をかねて定期的に会っていましたが、彼はこちらの相談事を本当に親身になって考えて、明瞭な解決案を答えてくれました。そういう経緯で当社の大きな力になってもらえると確信し、ぜひ一緒に仕事をしたいと思うようになったことから、私から顧問就任のオファーを2019年に出しました。同年8月に、顧問に就任してもらっています。

グッドフェローズ 長尾泰広代表取締役社長

―水田顧問にはグッドフェローズの業務でどのような役割を期待しているのですか。

水田氏:私は今までの経歴をいかして、エネルギー事業部の新規事業開発と海外展開という2つのテーマを中心に活動します。当社が掲げる「IT(情報技術)×リアルでエネルギーをつくる、えらぶ、まもる」のミッションのなかで、主に物販などリアルの分野でいろいろな貢献が可能だと考えております。物販以外にもいくつかの事業構想があります。

長尾氏:IT×リアルで展開していく上で、当社の現状においては、リアルの部分の強化が大事だと感じていました。そこで、これまで行ってきたインターネットを通じたマッチングサービスや商社機能の強化に加え、クライアントとは住み分けすることを前提として、太陽光発電の開発・販売もスタートしたいと考えています。 開発する太陽光発電は、FIT(固定価格買取制度)ではなく、自家消費案件や非FIT電源といった、新しいニーズに対応したものが中心となります。

また太陽光発電のセカンダリーマーケット(転売市場)のWEBを通じた仲介や、さらにリパワリング(発電所の出力増強)の提案サービスなどを検討しています。 水田は海外に強く、特に中国や東南アジアとのパイプがあります。そこで、海外展開も考えています。

グッドフェローズ 水田昌紀顧問

日本は再エネ100%に向け、市場を拡大する

―新たな事業の展開にあたって、日本の再生可能エネルギー市場はこれからどういった方向に向かっていくと予想していますか。

長尾氏:結論からいいますと、国内の再エネ市場はさらに伸びると考えています。

日本は再エネの普及状況は世界的にみて周回遅れといわれています。石炭火力発電の継続や、定量的な再エネ目標値が過小であるなど、そこにはさまざまな理由があります。

しかし、再エネが主力電源となっていくのは時間の問題ですし、グローバル経済の時代なので、日本が他の先進国に置いて行かれる可能性だってあります。したがって、脱炭素のエネルギーにギアをあげてシフトチェンジしないと、経済成長はありません。

足元の課題をみると送電網の空き容量問題などありますが、技術力で解決していくことは可能です。

例えば現状、一般販売されている太陽光発電の多くが発電効率20%台という事を考えるとまだまだ伸びしろはあるでしょうし、壁面パネルや透過性パネルが安くなっていく可能性もあります。 EV(電気自動車)が普及したときに、その電気が化石燃料由来であれば本末転倒なので、そうした面からも、再エネの伸びしろがあります。

いずれにせよ、グッドフェローズは「日本を代表するエネルギー企業になり、再エネ100%の実現に貢献する」というビジョンを掲げているとおり、将来の日本の電源構成における再エネ比率を100%にすることを目指して事業活動を続けています。

水田氏:私はFITがスタートした時期から、日本に再エネを最大限普及させるよう力を入れてきました。インリー・グリーンエナジーでは、日本法人社長だけではなく、後にアジア代表も一時兼務していました。
その経験からいうと、海外の方がPPA(電力直接販売契約)の市場が発達しており、非FIT電源でも投資は十分成り立ちます。このPPAに加えて、日本では自家消費、自己託送の3つの形態がFIT後に普及していくと考えています。

とはいえ、日本市場を明確に予測しているわけではありません。そうした中で自分の役割は、海外知見とノウハウと人脈、そして商材、技術力に関する情報を最大限有効活用し、貢献していくことです。別の顧問先でもある東洋アルミニウム様の特殊な軽量モジュールを、グッドフェローズで取り扱いさせていただき、タイナビ会員様に広げていくといった活動はその一例です。

WEBプラットフォームが最大の武器

―具体的な新規事業の方向性について、可能な範囲で教えてください。

長尾氏:当社の最大の武器はWEBプラットフォームです。プラットフォームが確立しているので集客に困ることがありません。このプラットフォームを軸に新サービスを展開したいと考えています。

例えば、法人向けの新電力の比較サイトは毎日多くの問い合わせをいただいており、すでに1万以上の施設を扱っています。このうち約40%は工場ですので、このサービスに自家消費モデルを乗せることができます。

また、国の再エネの導入目的は、再エネを主力電源としていくためのインフラ構築ですが、発電事業者の多くは投資目的です。こうしたズレがあり、インフラを担っているという責任を感じていない発電事業者も多いのではないでしょうか。こうしたゆがみを正し、分散している発電事業者を集約していく、ということもいずれは起こると思います。その集約のためのプラットフォームにもしていきたいですね。

いずれ、事業用太陽光発電が卒FITを迎えますが、そういった時期になれば、プラットフォームの価値がさらに高まると考えています。

―そこでの水田顧問の役割はどのようなものになっていくのでしょうか。

水田氏:まずは、現在の商材・サービスに枝付けしていきます。例えば、再エネだけでなく省エネサービスも取り組む、といったことです。

太陽光発電の長所は大手電力会社が所有していた権益を、分散型エネルギーにより開放できることです。個人が小口で出資しても、今の太陽光発電システムなら安定した利回りをだすことができ、自立的に普及させることができます。そうすると再エネの普及をみんなで進めることができます。

2019年に国連気候行動サミットでスウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが、気候変動問題はまったなしの状況だと訴えました。人間は何度も戦争をしていますが、気候変動はやり直しがききません。一回失敗したからといってやり直すことはできません。すでに南極で気温20℃を記録するなど、本当にまったなしなのです。
その想いを持って、ファンドを組成するなど、さまざまな再エネビジネスに取り組んでいきたいと考えています。

タイナビが協賛した中津川THE SOLAR BUDOKAN 2015の出演者による記念サイン

No Re-new No Future

長尾氏:水田に顧問をお願いしたのは、もちろんビジネス的なジャッジが大前提としてありますが、それだけでなく理念やビジョンに共鳴する部分があるからです。
当社の理念は“No Re-new No Future”です。これには「再エネなしには未来はない」という意味が含まれています。そしてビジョンは「日本を代表するエネルギー企業となり再エネ100%の実現に貢献する」です。

一方、水田は、10数年前より、気候変動問題をビジネスで解決していくという強い想いを抱いていることから、当社の理念やビジョンと深くリンクしています。ビジョンを確実に達成するには、同じ価値観をもっている仲間が集まるのが、もっとも早いと思います。そんな想いで一緒にやらせてもらっています。

―水田顧問は海外の事業にも取り組んできたということですが、どのようなものだったのでしょうか。

水田氏:インリーを退職後、主にフィリピンで新たな事業に取り組みました。このときは、技術と金融を組み合わせたものになります。私の論理では、太陽光発電は技術と金融を融合できる象徴的な発電サービスです。
実は、長尾社長と話していてもこの技術と金融を融合するサービスについては議論が盛り上がります。というのも、それぞれの着眼点が面白いくらい違うからです。

長尾氏:そのとおりです。議論をすることでケミストリー(化学反応)が起きてイノベーション(技術刷新)は生まれます。
彼自身、モルジブでPPAの太陽光発電に投資しています。ヴィラ(宿泊施設)敷地内の高圧発電所で島ということもあり、普段、発電機で作られる高い電気を購入しているようなのですが、それをPPAにする事で、ヴィラのオーナーは電気が格段に安くなります。投資家は発電機で作られる電気より安いけど、一般的には決して安くない単価で販売できるので、十分な利回り実績が出るようです。
こうした水田の経験を通じて、タイナビ発電所を海外展開できないかとも考えています。

海外再エネはリープフロッグで

―海外事業にも取り組んでいくということですが、実際に海外市場はどのように予測されているのでしょうか。

水田氏:PPAは今後さらに浸透すると考えています。モルジブでの事業は経済性があるでしょう。ではフィリピンやスリランカで事業はどうなのか、安心して投資できるのか。100%の自信にテクノロジーが加わり、経済性がクリアされれば、そういった地域でもPPAが進むと考えています。もっとも、フィリピンは大規模施設が少なく、小規模の建物の屋根に太陽光発電を設置していくことになるので、PPAとしては課題が多いかもしれません。

とはいえ、オーストラリアでも石炭火力発電より太陽光発電による分散型電源の方が利益が出る時代に入っています。それぞれの地域性や経済性に対応した普及の仕方をしていくのだと思います。

長尾氏:イメージとしては、グリッドが発達していない地域での再エネ導入というのがあります。リープフロッグ現象、すなわち既設インフラがないから新しい技術が導入される現象があります。中国のキャッシュレス化がそういったイメージです。PPAも同じように導入されていくのではないでしょうか。

とはいえ、まずは日本市場です。エネルギー業界の変化はますます激しくなるでしょうし、そこにリソースをとられることが予想されますから、海外展開はその次、ということになります。それでも、2020年中には、何等かのアクションをしたいと思います。

日本政府は脱炭素社会実現に向け、再エネ導入目標の引き上げを

―再エネ主力電源化に向けて、さまざまな課題があると思います。

水田氏:やはり、系統連系は課題だと思っています。電力会社(送配電会社)はコンサバティブに見ており、これが割高なコストとなっています。もっとも、電力会社もそのことを理解しはじめているのではないでしょうか。

長尾氏:いろいろな法制度の問題がありますが、その上で日本政府には再エネに対する方針として、大きな目標を設定していただきたい。2030年の政府の目標は、再エネが電気の22~24%ということですが、そこが引き上げられないと、市場も業界も動きません。

中長期的に主力電源を目指すわけですし、そうであれば技術開発に投資しやすい環境をつくることが必要です。そのことが、世界での競争力を高めることになります。

再エネの普及は正義だと思っています。気候変動や原子力、戦争といった問題を解決してくれるのが、再エネだと思うのです。

水田氏:技術開発を加速させることも必要です。例えば、中国のとあるメーカーは、エアコンや冷蔵庫に特化した技術として、チップを埋め込んでコンプレッサーの電力をAIをつかって自動調整する、といったことを行っています。蓄電池でもレドックス・フロー蓄電池技術*において有望な技術力をもつ日本の会社があります。「レドックスは終わった」という人がいますが、その会社の社長と話せばそんなことはないことがわかります。こうした、たくさんの新しい技術が重なって大規模な力になっていく、というのがこれからの未来を支えていくのだと思います。

長尾氏:再エネは不安定電源です。しかし、AIの活用とビッグデータの収集を通じて需給調整ができると思いますし、P2P取引も可能になるでしょう。それぞれの需要家が最適なアプローチをすることで、再エネそのものの最適な運用ができます。

残念ながら、今の電気事業法ではP2P取引はできません。こうした障壁を取り除き、民間と政府が一体となって、再エネを拡大していく必要があると思います。

*レドックス・フロー蓄電池:電池反応を行うセル、活物質を貯蔵するタンク、活物質を循環させるためのポンプと配管から構成されている蓄電池。充放電反応が電解液中でのイオンの価数変化のみなので、電極や活物質の劣化がなく、長寿命の大型蓄電池として適している。

(Photo:岩田勇介、Interview:本橋恵一、Text:土守豪)

プロフィール

水田 昌紀(みずた まさき)

上智大学外国語学部を卒業。株式会社マクニカを経て、2011年、インリー・グリーンエナジージャパン株式会社を設立し、同社代表取締役社長に就任。年商350億円まで成長させる。その後、2016年に株式会社 IQg、2018年に株式会社モバチャージを設立(翌年事業売却)。現在は太陽光発電所の運営、コンサルティングなど、業界の発展に尽力している。

長尾 泰広(ながお やすひろ)

富山国際大学を卒業。某ITベンチャー企業にて取締役に就任し、Web集客のスキルを得る。2009年に株式会社グッドフェローズを設立し、代表取締役に就任。同社は2019年に創立10周年を迎え、業界最大級の利用者数を誇る再生可能エネルギーのWebプラットフォーム「タイナビシリーズ」が運営するエネルギーメディア事業、卸事業、電源開発事業、メンテナンス事業を展開している。
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株式会社グッドフェローズ

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