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日本のセカンダリー市場の成長はいつまで続く? ソーラーアセットマネジメントアジア2020レポート その2

日本のセカンダリー市場の成長はいつまで続く? ソーラーアセットマネジメントアジア2020レポート その2

EnergyShift編集部
2020/11/09

ソーラーアセットマネジメントアジア2020バーチャルサミットレポート その2

2019年に本格化した日本のセカンダリー(太陽光発電所の中古売買)市場は、2020年に売買取引量が1GWを超えると予測されている。しかし、2~3年後には一転して縮小するとの観測もある。
2020年9月24日に開催された「ソーラーアセットマネジメントアジア2020バーチャルサミット」では、リニューアブル・ジャパン、大和エナジー・インフラ、みずほ証券3社による「日本のセカンダリー市場の展望」を考察するセッションがあった。今回はその模様をレポートする。

セカンダリー案件の3つの類型

運用中の太陽光発電所および太陽光発電のポートフォリオに特化した、カンファレンス「ソーラーアセットマネジメントアジア2020」において、2019年に本格化した日本のセカンダリー市場の成長はいつまで続くのか。「日本のセカンダリー市場の展望」を考察するセッションが行われた。

スピーカーは、眞邉勝仁 リニューアブル・ジャパン代表取締役社長、藤田学博 大和エナジー・インフラ投資事業第三部次長、安藤康介 みずほ証券不動産投資銀行部ディレクターの3名が参加し、「現状のセカンダリーマーケットをどう見ているのか」「セカンダリー案件取得時の問題点とは」「今後の市場展望」の3つのテーマで考察は進んだ。

まず、眞邉氏によるセカンダリー案件の類型分類から議論は始まった。

セカンダリー案件の類型
  • ① 許認可取得後案件(工事着手前)
  • ② F/C後 工事中案件
  • ③ 稼働済み案件

これまでのセカンダリーは、③の稼働済み案件の売買が中心だったが、2020年は、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)を通じた外資系企業を中心とした売りが殺到し、その結果、①の許認可取得後案件(工事着手前)や②の工事中案件の売買が活発化したという。

こうした現状をどう認識しているのか。3名が現状認識と課題について意見を交えた。

50MWなど大型案件の入札が活発化

まず、大和エナジー・インフラの藤田氏は、前述の①②③の売買に関し、要求利回りがフラット化していると指摘した。

「私ども金融会社からすると、①②③の順で取得難易度が下がっていきます。特に自社で開発能力を持たない私どもにとって、①の取得難易度は非常に難しくなります。しかし、直近のマーケットでは、①②③の要求利回りがほとんどフラット化しており、金融会社とすれば、今後の案件調達が厳しくなっていくのではないか」と危機感を語った。

要求利回りフラット化の要因のひとつが、市場構造の変化だと、藤田氏は指摘する。

これまでの市場構造は金融系プレイヤー中心だったが、電力・ガス・通信、そして石油といった日本を代表するインフラ系企業が再エネ電源の取得を目指し、セカンダリーに再参入している。そのうえで、取得案件の拡大を目指し、①や②の買いを進めた結果、市場構造が変化し、利回りのフラット化が進んだという。

次にみずほ証券の安藤氏は、売り案件の大型化をあげた。
「外資系を中心に持ち込み案件が非常に増えており、特に20MW、30MW、50MWを超える案件も出ています。その一方で、2MW未満の高圧案件なども引き続き市場に出ている」と概況を語った。

眞邉氏は自社の実績をもとに現状の認識を次のように示す。

リニューアブル・ジャパンの開発容量は123案件、発電容量688MWとなり、そのうちアセットマネジメント容量が562MW、O&M受託量は737MWだという。一方、許認可取得前案件など自社開発まで含めた評価案件(持ち込み案件)は、2019年過去最高となる2.5GWとなったが、セカンダリー案件は1GWにも満たなかったという。

リニューアブル・ジャパン資料をもとに編集部作成

2020年は新型コロナウイルス感染拡大によって、許認可取得前案件などの持ち込み数はスローペースとなり、2020年1~8月累計で1GWに止まっているという。ところが、「緊急事態宣言が解除されて以降、FAを通じた入札が一気に増え、大型案件の入札は10件程度あったと思います。弊社への持ち込みセカンダリー案件もすでに0.6GWになっており、おそらく2020年のセカンダリー市場は初めて1GWを超えるのではないか」と見解を述べた。

事業会社は電気そのものに価値を見出している

では、外資系中心に活発化する入札動向について、どのような背景から売りが殺到しているのだろうか。

安藤氏は、買い手サイドの環境整備が進んだ結果だという。
「自分たちで開発できる、もしくは発電所を直せる事業会社の再参入によって、開発中、もしくは開発前というステイタスであっても、買える。売り手サイドとしても魅力的なプライスで売りやすくなっており、買い手サイドの環境整備が大きいのではないか」と分析した。

一方、藤田氏は日本の制度変更リスクを嫌気した売りではないかと推察する。
「外資系が緊急事態宣言明け直後に、売りに殺到したのは売り逃げではないかと推察しています。日本のFIT制度は抜本的な見直しが進んでおり、また特定の自治体ではパネル課税の導入などの議論もあり、日本の制度変更リスクを取れないと判断し、売りに出したという印象です」という。

さらに事業会社と金融会社の違いを指摘する。
「FITのキャッシュフローだけを信じて、売電収入をバリエーションで増やしていくという組み方が、金融屋の発想です。つまり、私どもは発電設備から生み出された電気がお金に変わった瞬間に価値を見出すのですが、事業会社は電気そのものに価値を見出すことができます。電気自身に価値を見出す事業会社はおそらくFITの買取期間が終了しても、発電設備を維持するでしょう。FITだけを見ている金融屋は、少しずつ存在感が薄れていくのではないか」と語った。

セカンダリー案件取得時の問題点」に関する議論では、藤田氏、眞邉氏の経験談が共有された。

藤田氏は売り手側が提供する発電量レポートの甘さを指摘した。
「発電量レポート通りに発電しないという事例があります。日射量が2~3%ずれただけで、プロジェクトIRRが5%吹っ飛ぶような世界なので、セカンダリーを取得する際は、発電量レポートの精査が重要になってきます」と述べる。

また、取得後のトラブル事例について、「最近、プログラムミスによってPCSが作動せず、売電ロスをしたという悲しい事例がありました。また、北海道の発電所では、太陽光パネルの傾斜角度を30°にするはずだったのが、20°でつくられてしまい、パネル上の雪が落雪してくれず、全然発電しないという事例もあった」と失敗談を披露した。

眞邉氏も、「私どもも多くの案件を取得しています。つまり、かなり痛い目にあっているということです。購入前に手直しをした、あるいは購入後に手直しをした案件は、取得案件のほぼすべてだと言っていいと思います。やはり、発電量レポートやテクニカルレポートをそのまま鵜呑みにすることは非常に危険だと思います」との見解を示したうえで、「投資家の方々が、セカンダリーの購入を検討する際は、優秀なゲートキーパーを選ぶことが大切です」とアドバイスした。

藤田氏も「入札価格がどんどん上昇している中で、落札した事業者を見て、あとで苦労するのではないかと心配する場面が多々ある」と目利きの重要性を語った。

踊り場は1~2年後に来るのか?

最後のテーマとなる「今後の市場展望」では、まず藤田氏が市場に対する危機感を率直に語った。

「私どもは発電所に投資をして、それを金融商品に変え、大和証券グループの顧客に買っていただくことが、ビジネスモデルのひとつです。しかし、事業会社さんは一度保有すると、特別な事情が発生しない限り、再度、市場にリリースすることはないと思っています。こうした状況の中で、大規模な発電所が売りに出されるのは、あと1~2年くらいではないでしょうか。ものが仕入れられなくなれば、私どものビジネスはかなり厳しくなります。現物の発電所売買がいつまで続くのか。高圧案件などを取得するなど、新しいアセットタイプをどこまで広げていけるかが、今後の課題です」と述べた。

安藤氏は、「2016年や2017年時点では、太陽光発電所のセカンダリーは成立しないという意見が多数だった中、特高や高圧、そして小規模案件まで流動性が高まり、セカンダリーが本格化する時代になってきています。もちろん、市場は一段落する可能性はありますが、セカンダリーで取得したアセットを、再びマーケットで売れる可能性も出てきたということに大きな意義があると思っています」と答えた。

最後に眞邉氏は、「FIT制度のもとで開発されたPV電源は、60~70GWで終わるでしょう。そのあとは、ノンFITの時代に入っていきます。ノンFIT電源でも金融商品化できるセカンダリーマーケットになって欲しい」と締め括った。

あと1~2年で大型案件の売買は終わってしまうのか。それとも高圧や低圧まで売買領域が広がり、成長し続けるのか。少なくとも現状は、売り買いともに活発で、落札価格が上昇傾向にあることは間違いない。

(Text:藤村朋弘)

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