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Amazonが狙う2040年脱炭素、再エネ調達規模は世界最大に

Amazonが狙う2040年脱炭素、再エネ調達規模は世界最大に

2021年01月08日

Amazonの脱炭素化の取組みが勢いを増している。パリ協定の2050年カーボンニュートラルを10年前倒しし、2040年とするClimate Pledgeを立ち上げてから1年。再エネ調達の規模は世界一に達した。配送による排出量もゼロとするEV車両開発にも余念がない。

Amazon、世界最大の再エネ調達企業に

2020年12月10日、Amazonは世界最大の再エネ調達企業となった。世界各国で、26の再エネプロジェクトに新たに投資することを決定したのだ。これらの新プロジェクトは、オーストラリア、 フランス、 ドイツ、 イタリア、 南アフリカ、 スウェーデン、 イギリスにおける風力発電所と太陽光発電所で、合計容量は約3.4GWに達する。

これまでに同社が投資した再エネ発電所の規模は6.5GW。1年間に家庭で消費される電力量に換算すると170万戸分だ。年間1,800万MWh超の再エネ電力をAmazon本社や倉庫であるフルフィルメントセンター、データセンターなどへ供給している。

Amazonの目標は、2040年までにCO2排出量をゼロにするというものだ。パリ協定が掲げる2050年というタイムラインを10年間も前倒ししている。2040年CO2ゼロに向け、2030年までに再エネ調達100%を目指してきたが、これも2025年には達成できる見込みだという。

創設者のジェフ・ベゾスCEOは、同日のプレスリリースで「これはClimate Pledgeを達成するため、我々が取っている多くのステップの1つにすぎない(This is just one of the many steps we’re taking that will help us meet our Climate Pledge)」と語った。

パリ協定を10年前倒し目指す「Climate Pledge」とは

Climate Pledge」とは「気候変動対策に関する誓約」を意味する。2019年9月にAmazonとGlobal Optimismの共同調印によってスタートしたイニシアチブだ。Global Optimismは、国連気候変動枠組条約事務局のクリスティーナ・フィゲレス前事務局長が創設した団体。これまでにも気候変動に関するイニシアチブを多く発表している。

Climate Pledge はパリ協定の2050年排出ゼロ目標を10年早め、2040年に達成するという野心的なゴールを目指している。

署名企業には、1. 温室効果ガス排出量を測定し報告すること。2. 効率改善や再エネ導入などを含む、実ビジネスの変化を伴う脱炭素戦略を実装すること。3.それでも残る排出量は、永続的で社会的に有益な方法でオフセットすること。― の3つが求められる。

配送によるCO2に切り込む「Shipment Zero」

Amazonは、商品の配送におけるCO2排出量もゼロとする「Shipment Zero」にも取り組んでいる。スコープ3のバリューチェーンにおける排出も完全になくすという。Shipment Zeroによる配送は欧米から始め、インドや日本でも展開する考えだ。

Shipment Zeroがカバーする排出範囲は、次の通り。

  • 電力運用施設およびEV車両充電からの排出量
  • 在庫から顧客に貨物を輸送する車両での化石燃料の燃焼による輸送に伴う排出量
  • 発送用梱包資材で使用される材料の製造および輸送からの排出量

つまり、倉庫で使用する電気は100%再エネ由来とし、EV、自転車、徒歩などによるゼロエミッション配送とする。さらに、梱包に使う段ボールなどもカーボンニュートラルなものに徹底する。

2019年2月、Amazonは無公害EVメーカーのスタートアップであるRivianに4億4,000万ドルを投資した。同年9月のClimate Pledge発足時には、過去最大となる10万台の配送用EVを発注している。


Amazon News : Uber, Rivian, JetBlue, Cabify, and Boom Supersonic join The Climate Pledge より

それからわずか1年で、配送のためのカスタマイズを完了した。ドライバーは、Alexaを通してハンズフリーでルートや気象情報の確認が可能となった。視認性を上げるため、フロントガラスを大型化し、車載カメラで車外360度を見渡すこともできる。2025年までにヨーロッパに1,800台、インドに10,000台を配備し、2030年までに10万台すべてを実装する計画だ。

今回の再エネ投資には、日本は含まれていない。しかし今後、Amazonが日本で再エネ発電所を開発し、事業所への供給を行っていくであろうことは容易に想像できる。そうしたことにとどまらず、日本の配送業者も、CO2を削減しなくては、Amazonの商品を配送できないということにもなってくる。それだけに、このインパクトには大きなものがあるといえるだろう。

 

山下幸恵
山下幸恵

大手電力グループにて大型変圧器・住宅電化機器の販売を経て、新電力でデマンドレスポンスやエネルギーソリューションに従事。自治体および大手商社と協力し、地域新電力の立ち上げを経験。 2019年より独立してoffice SOTOを設立。エネルギーに関する国内外のトピックスについて複数のメディアで執筆するほか、自治体に向けた電力調達のソリューションや企業のテクニカル・デューデリジェンス調査等を実施。また、気候変動や地球温暖化、省エネについてのセミナーも行っている。 office SOTO 代表 https://www.facebook.com/Office-SOTO-589944674824780

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