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電動飛行機が、世界の空を変える

電動飛行機が、世界の空を変える

2020/02/07

多量の燃料を使い、CO2排出量も多大な交通手段として急速に問題視されている飛行機。航空機各社が凌ぎを削って開発しているのが、電動航空機だ。2019年のパリ航空ショーではイスラエルのスタートアップによる電動エアバスが展示され、話題にもなったが、エアバスの実現はまだ先と思われる。それよりももっと実現性が高く、すぐ近くに商用化が見込まれているのが小型の電動航空機だ。小型と言ってもロンドンーパリ間を一回の充電で飛ぶことができるなど遜色がない仕上がりになっている。小型電動航空機の最新情報を、日本サスティナブル・エナジー株式会社の大野嘉久氏が紹介する。

意外に古い、電動飛行の歴史

自動車をはじめ、自転車や車椅子など様々な乗り物の電化が進むなか、オール電化の旅客機も実現が近づいている。実はその歴史は古く、世界で初めて電気を使って人が空を飛んだのは、ライト兄弟よりも20年も前の1883年、フランスのガストン・ティサンディエが飛行船に独シーメンス製モーターで電気式プロペラを駆動させた試みとされている(縦の移動は飛行船の浮力、横の移動のみ電気)。

1917年にはオーストリア=ハンガリー帝国において、同国のアウストロ・ダイムラー社製モーターを動力源にしたヘリコプターで、軍事用空中偵察装置を高くまで上げることに成功させた。この場合は移動が目的ではないため、電気は有線で地上からケーブルで送っていた(縦の移動のみ電気、横の移動なし)。

電気の力だけで有人の空中飛行を成功させたのは1973年、当時わずか23歳のオーストリア人エンジニアHeino Brditschkaであった。

フォークリフトに搭載されていたニッケル・カドミウム蓄電池をグライダーに乗せ、ボッシュ製DCモーターでプロペラを回転させることで300メートルの高さまで上昇。さらに14分間も飛行を続けたことでギネスブックにも認定された。

折しもその二週間前に第一次オイル・ショックの原因となった第四次中東戦争が起こったため、この石油を使わない電動プロペラ機は世界中から注目を浴びて事業化を果たし、HB-Flugtechnik社として現在でもオーストリアで小型航空機を作り続けている。

経済性のプロペラ機だが、速度が課題

プロペラ機はジェット機と比べて燃料費が大幅に安いうえ、滑走路も3分の2程度で済むため、短距離路線を中心に、今も国内外で多くの小型機が活躍している。

一方でジェット機の巡航速度がマッハ0.8(≒時速864km、ただし実際の飛行速度は風況により大きく変動)であるのに対し、プロペラ機はその構造上から音速より速い飛行ができない。代表的な機種であるカナダ・ボンバルディア社製Q400の最大巡航速度は時速667kmにとどまる。

電動プロペラ機の最高速度はもっと遅く、現在の最高記録はシーメンス製エンジンを積んだ独エクストラ・エアクラフト社「エクストラ330LE」が2017年に出した時速337.5km(離陸重量1,000kg未満)である。

つまり、プロペラ機は経済性に優れる一方、大きなデメリットは速度だ。

ロールスロイスの21世紀型電動プロペラ機はエネルギー効率90%、時速480km

英国の航空機・船舶エンジン大手ロールスロイスは、時速480kmの世界最速プロペラ機を2020年春までに実現する計画を2019年1月に発表していた。ロールスロイスは今後100年間にわたる長期戦略として“電化の覇者になる”ことを掲げており、航空の電化を目指すACCEL(Accelerating the Electrification of Flight)というイニシアチブのもとで試作機を製作していたが、いよいよその成果であるion Birdが公開された(2019年12月発表)。

英ロールスロイス社の電動プロペラ航空機

これは英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の航空宇宙技術研究所(ATI)と英国政府の研究資金助成機関「イノベートUK」が資金の半額を援助しているプロジェクトであり、同国の電力貯蔵スタートアップ企業エレクトロフライトと航空機用モーター製造業YASAの技術協力のもとで進められている。

世界で最もエネルギー密度の高い電池を開発し、それを6,000個使用して出力500馬力を確保しつつ、従来よりも大幅に低いプロペラ回転数での飛行を実現させることなどで、エネルギー効率を脅威の90%まで高める。これにより、一回の充電でロンドン=パリ間(322km)の飛行を可能とする。

英国政府は2030年までに30機以上のリージョナル航空機(地域間輸送旅客機)をゼロ・エミッション機に入れ替える目標を掲げており、商用機が完成したのちは世界でも利用が広まるだろう。

“電気ジェット飛行機”は空中タクシーを実用化

プロペラ機のみならず、ジェット機でも電動化は進んでいる。とりわけ電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する企業は仏エアバス、グーグル創始者ラリー・ペイジが支援する米キティホーク(ボーイングと提携)、米ウーバーテクノロジーズ、中国イーハン(Ehang)、そして上述の英ロールスロイスなど世界中で開発企業が出現している。

その中でも、現状で最先端と言えるのが独スタートアップ企業リリウム Lilium社の「リリウム・ジェット Lilium Jet」であり、同社は2019年5月4日に史上初の電気だけによる垂直離着陸実験を成功させた。そのわずか5カ月後の同年10月1日には飛行実験も行った。

リリウム・ジェットは助走することなく浮き上がって徐々に高度を上げたのち、時速65kmで3分にわたりバンク角(機体の左右傾斜角)を調節しながら周辺を水平飛行し、そして安全な垂直着陸も果たした。このまま順調に開発が進めば、空中タクシーは2020年代に実現する可能性が高いと言えよう。

リリウム社は2025年までに5人乗りエア・タクシーの開業を目指しているが、その距離はニューヨークからボストンをカバーする300km、そしてスピードは時速300kmになるという。

参考までに2件の現状のデータを並べると下記の通りになる。(ただしロールスロイスの "イオンバード" は一人乗りの試作機であり、そのため商用機に近いと思われるリリウム・ジェットのテスト機と単純比較はできない)

残念ながらどちらも現在の目標値では東京=大阪間(約400km)には届かないが、ロールスロイスの電動プロペラ機は実用段階では商用小型機ほどの大きさになると想定されるため、エネルギー効率が90%になることで航空運賃の引き下げが期待される。

また滑走路が全くいらないリリウム・ジェットは、都市部での交通に革命的な変化をもたらすほか、高齢者の運転が課題となっている地方の交通でも大きな助力となるであろう。このほか遠隔地の救急搬送にも大きな威力を発揮することから、これらの新しい電動飛行機技術を日本でも利用できる日を待ち望みたい。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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