経済産業省は国土交通省や環境省とともに、2030年までに新築戸建て住宅の約6割に太陽光発電を導入する新たな目標を掲げる方針だ。経産省は次期エネルギー基本計画の素案をとりまとめ、2030年度の再エネ比率を36〜38%に引き上げるとしたが、実現には再エネのさらなる積み増しが欠かせない。新築戸建てへの設置を拡大することで太陽光発電7GW、発電電力量約90億kWhの上積みを目指す。
経産省は7月27日に開催された「第13回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」で、新たな住宅太陽光の導入目標の検討に入ったと報告した。
国交省の住宅着工統計によると、2020年度の新築住宅の着工戸数は前期比約8%減の81万戸だった。このうち2割を占めるのが大手ハウスメーカーによる注文戸建てであり、高い断熱性能と太陽光発電を搭載したZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)化率は年々上昇し、48%となった。
一方、全体の5割を占める中小工務店のZEH化率は8%、全体の3割を占める建売戸建てのZEH化率はわずか1%にとどまり、中小工務店や建売戸建てのZEHはほとんど進んでいない。
経産省などは、2030年までに大手ハウスメーカーの注文住宅9割に太陽光発電を載せ、中小工務店、建売戸建ての太陽光搭載率を5割に引き上げることで、全体で約6割の導入を目指す。太陽光発電の導入量は7GW、発電電力量は約90億kWhとなり、再エネのさらなる積み増しを狙う。
政府は温室効果ガス2030年46%削減など脱炭素を目指し、再エネを最大限導入する方針だが、2030年まであと9年しかない。だが、切り札とされる洋上風力発電は完成までに10年程度かかる。46%達成は、他の再エネに比べ設置が容易な太陽光発電をどれだけ増やせるかにかかっている。
ただ、太陽光発電も大規模な発電所を建設できる適地が減り、さらに開発中の森林伐採や、台風などで太陽光パネルが飛ばされるといった地域トラブルが増加し、大規模発電所の開発は難しくなっている。
そこで経産省などは住宅やビルなどの建築物の屋根の利用し、太陽光発電を増やしたい考えだ。
だが、実現には一般消費者の負担軽減が欠かせない。
経産省は「集中した財源投入が必要だ。ZEHの導入支援や再エネの買取制度(FIT制度)、事業者や一般消費者への情報提供などで、目標達成を目指す」としたが、タスクフォースの委員は「住宅ローン減税の要件を見直し、ZEHや太陽光発電を優遇すべきだ」などと住宅ローン減税の見直しの必要性を指摘した。
住宅の脱炭素化は、住まい手に電気代の削減や、冬暖かく夏涼しいといった健康で快適な暮らしを提供する。またハウスメーカーや中小工務店にとっても、住宅着工戸数が減少するなか、住宅単価をあげられ収益アップにつながる。金融機関も住宅ローンの拡充が可能だ。
それだけに、「7GWでは低すぎる」「2025年にも太陽光発電を設置義務化すべきだ」といった意見も出された。
経産省などは検討を重ね、新築住宅に関する新たな目標を近く正式に表明する予定だ。
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