GXリーグを語る上で、キーワードになるのが“自主的”という言葉だ。前ページで述べた生活者の動きにしても「生活者が能動的な選択をできる」基盤を整えるというのが、構造段階で求められている。
何より、冒頭で述べたGXリーグでの排出量取引は、あくまで企業が自主的に参加する仕組みを目指している。これは、排出量取引が義務付けられている欧州連合(EU)と大きく異なる点だ。
そのうえで、参画企業に対しては下記の3つの要件が求められる。
1、2は必須要件で、3は任意要件という違いはあるものの、基本的に参画企業はいずれの要件にも賛同した企業となる。2023年度以降に、リーグが本格スタートする際には、改めて企業の参画意志を確認するというのだから、あくまでやる気がある企業だけが来てくれればよいという自主性ありきの姿勢だ。
こうしたカーボンニュートラルに向けた自主性を持つ企業を集めたGXリーグでは、3つのプロジェクトを中心に取り組みを進めることとなる。
中でも特に注目を集めているのが3番目で、冒頭の排出量取引の件もこれに当たる。
GXリーグでの排出量取引は、2050年カーボンニュートラルを見据えた、2030年目標・計画を策定し、達成に向けて取り組み状況を報告。目標に達しなかった場合は、未達分を自主的なクレジット取引で補い、反対に目標を超えて削減できた分はクレジット化して売却できるというのが、その流れの概要となる。脱炭素を頑張った企業はその分を利益化でき、その反対の企業はクレジット購入で費用が掛かるという形をとることで、自主的な脱炭素を加速させていく狙いだ。
市場で取り扱うクレジットに関しては、今後の市場設計に係る議論の中で定めていくとのことだが、国際的なクレジット取引標準化の動きとも連動し、国際的な市場を整備することも見据えているという。また、取引される環境価値にはJクレジットやJCM(二国間クレジット制度)の海外での削減寄与分、Voluntary Carbon Standardなどの外部クレジットも含まれる見通しだ。なお、そうした外部クレジットに関しては、リーグに参画していない企業も売買可能な仕組みを作る予定となっている。
出典:経済産業省「GX リーグ基本構想」をもとに編集部作成
もちろん、実際に運用が開始された後、産業界の取り組み進捗が芳しくない場合には、政府によるプライシング案も考えられており、企業の行動変容を促すという観点から、補助金や税金、規則など様々なポリシーミックスも検討されている。
募集開始:2022年2月1日(火) 募集締切:2022年3月31日(木)
出典:経済産業省
最後に、このGXリーグはこれからどのような動きを見せるのかについて説明したい。
まず、近い未来についていえば、政府は今月1日の基本構想の発表からそう間を置かずして、GXリーグ設立準備事務局を立ち上げることを明かしている。その後、3月31日まで参画企業の募集期間を設け、ルールを設定した後、今年の9月ごろから試験的な運用を開始して、来年4月の本格稼働を目指すという流れになっている。
このように、構想から立ち上げ、運営までの見通しが立っている一方で、政府はすでにこのGXリーグの先をも見据えている。
2月8日に経産省がオンラインで発表した「GXリーグ基本構想担当者向け説明」では、GXリーグ自体が、将来的に取って代わるであろう代替手段への準備であることを明言。将来、本当に必要となるのはCO2の排出量自体を調整する仕組みであることに触れている。
また、GXリーグの運営上でも、先行導入企業とそうでない企業との取り組み強度の不公平を是正するために、調整機能を設ける必要が生じることを示唆している。
とはいえ、それらは2050年を見据えた先の未来への青写真であり、まず最初に必要なのは、国によるGXリーグのブランディングだろう。目標は国際競争に勝てるだけの下地を産官学で整えることなのだから、そこに人や技術を集めるだけの訴求力が重要になってくる。
そして、政府がGXリーグの価値を国際間で知らしめることができたかどうかの指標の一つは、排出量取引の国際市場の形成なのかもしれない。
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