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洋上風力発電 日本の本当のポテンシャルと開発競争の行方は

2021年10月22日

日本の洋上風力発電の現状

日本の洋上風力発電は、累積で58.6MW、28基、7サイトが運転をおこなっている(2020年度12月末時点)。沿岸部からアクセス可能なセミ洋上風力も含まれる。沿岸距離2km以上の本格的な洋上風力はこのうち、14.4MW、5基、4サイト。そのうち、12MW、4基3サイトは浮体式になる。2020年の新規設置はなかった。これらはほぼ実証実験だ。

港湾での洋上風力発電の導入計画も進んでいる。すでに秋田県能代港では140MWの洋上風力発電(着床式)が2022年末の運転開始に向け建設が進む。秋田県能代市は国の定める洋上風力の「促進地域」だ。その促進地域はほかに秋田2ヶ所、千葉県銚子市沖の合計4ヶ所を定めていて、事業者による計画がそれぞれ立てられている。

これからの洋上風力の開発は、もちろん、より沖合の、一般海域での発電所開発となる。

港湾における洋上風力発電の導入計画


出典:国土交通省

政府の開発目標は2040年30GW〜45GW

2020年12月、経産省の審議会「洋上風力産業ビジョン(第一次)」、グリーン成長戦略などによると、日本政府の目標は、2030年に10GW(1,000万kW=1万MW)、2040年までに30〜45GW(3000万kW〜4,500万kW=3〜4.5万MW)の導入を目指す。

日本政府は年間100万kW程度を10年間、区域指定して開発していけば20年後に3,000万kWの案件形成ができるということなのだろうが、こうして書いていても本当にできるのか、疑わしくなる数字だ。

この数字は、2020年7月におこなわれた経済産業省の「第1回 洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」に提出された日本風力発電協会の資料の数字が元になっている。それによると、着床式の日本全国でのポテンシャルは128GW、浮体式のポテンシャルは424GWと試算されている。その前に、2018年2月には着床式のみで91GWのポテンシャルがあるとされている。また、事業者が現在開発検討対象としている区域は34GWとある。

また、同じ7月17日の経産省・国土交通省の資料には、事業者のヒアリング結果として、国内に風車工場などへの投資をおこなうためには、年間100万kW×5〜10の市場が必要とある。

オーステッドのアジア太平洋地域責任者Yichun Xu氏はEnergyShiftの取材に対し、「日本は着床式で90GWのポテンシャルをもっている。年間1から1.5GWのオークションも計画されている」と答えている。また、2020年8月の経産省審議会*では日本風力発電協会の資料では「2030年には1GW/年、2040年からは2〜4GW/年の市場規模の目標を設定」を提案している。

これらの前提から、2040年目標の30〜45GW導入目標、毎年100万kWを10年間、という数字が出てきたのだ。とすると、そこまで無理な数字ではないとも思える。しかも、この91GWのポテンシャルは着床式のみの数字だ。そう考えると逆に、少し消極的な数字にすら見える。

*第58回調達価格等算定委員会

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小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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