では、着床式だけで日本の2040年目標がまかなえるのであれば、日本での浮体式開発は不要なのか。もちろん、そんなことはない。
世界の導入量を見ても現在は着床式がメインだが、水深を気にしなくてよいため、より広範囲な設置が可能な浮体式の開発と導入が進んでいる。冒頭の導入ポテンシャル量を見ても圧倒的に浮体式のポテンシャルが高い。
また、日本の近海は遠浅でないため、水深が深くても設置が可能な浮体式が有効だ。
この浮体式は第6次エネルギー基本計画でも次世代太陽電池(ペロブスカイト)と同じく、「革新技術の開発」の扱いになっている。
『特に、サプライチェーン構築に不可欠な風車や中長期的に拡大の見込まれる浮体式等については、要素技術開発を加速化し、長期間にわたる技術開発・実証等を一気通貫で支援する取組等を行う。また、政府間の協力関係の構築と国内外の企業の連携を促し、海外での洋上風力事業への参画等を検討する日本企業をFSや実証、ファイナンスで支援しつつ、浮体式の安全評価手法の国際標準化等を進める』(第6次エネルギー基本計画(案))
この「革新技術の開発」、当然ながら日本の洋上風力発電の発電量確保だけの問題ではない。浮体式の技術を、アジア展開を見据えた次世代技術開発につなげたいという思惑もある。
まだ世界でも浮体式は確立技術ではないからだ。
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 2021年6月18日より
グリーン成長戦略には「横一線」とあるが、浮体式の開発競争はすでに始まっている。牽引しているのは欧州だ。2022年には浮体式の累計導入量300MWを目指している。
浮体式洋上風力の導入予測 2020-2030
GLOBAL OFFSHORE WIND REPORT 2021:GWEC
10月19日、世界最大の浮体式洋上風力がスコットランド沖合に完成した。キンカーディン洋上風力発電所は海岸からは15km離れ、水深は60mから80m。50MWで、年間200GWhの電力を発電する。また、同じくスコットランドでは最大100MWの浮体式洋上風力発電所「PentlandFloating Offshore Wind Farm」の計画が進む。フル稼働は2027年と先だが、検証用の8.6MW浮体式一基は2023年の建設予定だ。このコンソーシアムには丸紅が参画している。
ほかにもフランスのブルターニュ沖などで200MWを超える大型案件が進んでいる。
中国は2021年に再エネ大手の三峡集団が5.5MW実証基を試作し、広東省沖で実証実験をおこなうと発表。実は中国は着床式洋上風力の導入量が世界2位だ。浮体式でも導入量拡大を目指している。韓国も洋上風力トップ5を目指し、6GWの浮体式洋上風力発電所の建設計画を発表した。
左:洋上風力の国別新規導入量(2020年)右:洋上風力発電の国別累積導入量
GLOBAL OFFSHORE WIND REPORT 2021:GWEC
浮体式の要素技術は浮体の基礎、ケーブル、そして係留索とアンカーに大きくわけられる。中でも浮体基礎はコスト的にも全体の3割を占める重要な要素だ。
その浮体基礎はスパー式、セミサブ式、バージ式、TLP式の4つが主流で、それぞれ一長一短があり、まだ開発は継続している。スパー式とセミサブ式は本格的な商用利用に一番近くなっている。そのスパー式を開発、運用しているのが戸田建設だ。
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