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フランス、小型原子炉で水素精製に舵を切る

フランス、小型原子炉で水素精製に舵を切る

2021年10月13日

欧州における水素の動きが加速している。フランスのマクロン大統領は10月12日、電気自動車(EV)や水素燃料、効率的な原子力発電所などの技術開発を促進するため、総額300億ユーロ、(約3兆9,000億円)の投資計画を発表した。なかでも原子力発電分野での「破壊的イノベーション」に取り組むと宣言し、10億ユーロ(約1,300億円)を投資して発電規模の小さい原子炉「小型モジュール炉(SMR)」を複数導入、その電力を活用して水素の大量生産を目指すとした。

日経新聞の報道によると、マクロン氏は演説で水素エネルギー開発への意欲を示し、「水素を作るには、電気分解が必要だ。フランスには原子力の強みがある。2030年までにグリーン水素の先駆者になりたい」などと表明した。

水素は、使用の際にCO2を排出しないため、脱炭素社会を実現するうえでさまざまな産業での活用が期待されている。2020年7月に採択された「EU水素戦略(EU Hydrogen Strategy)」では、水素を「欧州グリーンディールと欧州のエネルギー転換を達成するための重要な優先事項」と位置づけ、「水素の生産工程を脱炭素化し、化石燃料の代替エネルギー源として利用の拡大を目指す」としている。

水素の製造にはさまざまな方法があり、使用する技術やエネルギー源によって温室効果ガスの排出量は大きく異なるが、EUが水素戦略において重視しているのは、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解して生成する水素である「グリーン水素」だ。既存の水素製造をクリーン化することで短期的にCO2の排出量を削減するとともに、水素市場の規模を拡大することを目指す。

マクロン氏は2018年、75%となっている原子力への依存率を2035年までに50%に引き下げるため、58基(同年時点)ある国内の原子炉のうち14基を2035年までに閉鎖すると表明していた。欧州では天然ガスの価格が高騰し、温暖化ガスを出さず安定して電気をつくれるとして、原子力を再評価する声もある。

こうした中、マクロン氏は2030年までに複数の小型モジュール炉を導入し、発電時にCO2を排出しない原子力から「グリーン水素」を大量生産する姿勢を示した。あわせて水素製造用の大型電解工場を2ヶ所建設することも表明している。

欧州政府は、水素生成が原子力産業の活用先となることに期待を寄せ、水素戦略の推進を加速させている。

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ヘッダー写真:The White House from Washington, DC, Public domain, via Wikimedia Commons

EnergyShift編集部
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