何か一つ閣僚ポストを渡すことはできなかったのか、と思われるかもしれないが、そうもいかない事情がある。
通常、何らかの閣僚ポストに就任すれば、基本的にその所掌が自分の管轄エリアとなるため、他の行政には口を出さない。例えば、厚生労働大臣が脱炭素に口出しをすることは基本的にない。
ただ、一応、大臣というのは閣議というものに出ることになっている。ここで誰もストップをかけなければ閣議決定となる、というしきたりだ。
すでにもう文春でも音声が出ているので、お伝えすると、河野氏は、仮に何かの大臣になった場合、この閣議カードを最大限活かすタイプの方だ。文春でも「では、俺は閣議で反対する」という趣旨の音声が出ていたが、それがまさにその証拠である。
つまり、何かの大臣にしてしまうと、閣議カードが切られてしまう。これからエネ基など、脱炭素に関する3つの政策が閣議にかかることを考えれば、ここは封じておきたい。
であれば、閣僚ポストは用意できない。一方で、三役も無理だ。でも、無職にするにはリスクがある。そうだ、広報本部長なら、全ての条件を満たす、とこういうロジックなわけである。
かつ対外的には「河野氏の発信力は、党の魅力を伝えるには最適」と言えるわけだ。
このロジックは、根回しをする側の役人の入れ知恵がないと構築できない。そして、これが一番関係する省庁はもう自明。防ぎたい論点も、脱炭素というのは、もう自明。
つまり、かなり、今回の岸田新政権は、脱炭素には慎重というところが、すでにここからも見えてくる。
その上で、次は甘利幹事長が脱炭素戦線に及ぼす影響について見ていきたい。
甘利氏は経産大臣の経験もあり、そういう意味では昔からある日本のエネルギー論に精通する方である。
今年の7月には次期エネルギー基本計画の素案について「30年度の温室効果ガス排出削減目標を達成するため、原子力を重要な電源の一つに位置付けていることは間違いない」と指摘し、かつ、「一番大事なのは安定供給」と強調し、原子力に関しては「有事を想定した上で、被害を最小に抑える新型炉の設計や技術開発が必要だ」と述べている。
そう、ごりごりの原発推進論者だ。エネルギー界隈では有名な話でもある。
甘利明氏のTwitterより
この点について、事実だけお伝えすると、例えば朝日は「パーティー券と原発利権 電力9社がすがる甘利経済再生大臣の場合」という本を出版している。また、テレビ東京と原発をめぐる論点について、裁判を起こしたこともある。
その方が三役のうちの幹事長を務めている。根回しの対象となる。
方向性は自ずと見えてくるだろう。しかも、構造的には原子力だけではなく、火力についてもディフェンドする立場を取るのも、また勘の鋭い読者なら見えてくるかと思う。
さらに、高市政調会長が脱炭素戦線に及ぼす影響についても、お伝えしたい。
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