岸田人事から見る脱炭素の行方 河野外しの狙いも分析 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

岸田人事から見る脱炭素の行方 河野外しの狙いも分析

2021年10月01日

何か一つ閣僚ポストを渡すことはできなかったのか、と思われるかもしれないが、そうもいかない事情がある。

通常、何らかの閣僚ポストに就任すれば、基本的にその所掌が自分の管轄エリアとなるため、他の行政には口を出さない。例えば、厚生労働大臣が脱炭素に口出しをすることは基本的にない。

ただ、一応、大臣というのは閣議というものに出ることになっている。ここで誰もストップをかけなければ閣議決定となる、というしきたりだ。

すでにもう文春でも音声が出ているので、お伝えすると、河野氏は、仮に何かの大臣になった場合、この閣議カードを最大限活かすタイプの方だ。文春でも「では、俺は閣議で反対する」という趣旨の音声が出ていたが、それがまさにその証拠である。

つまり、何かの大臣にしてしまうと、閣議カードが切られてしまう。これからエネ基など、脱炭素に関する3つの政策が閣議にかかることを考えれば、ここは封じておきたい。

であれば、閣僚ポストは用意できない。一方で、三役も無理だ。でも、無職にするにはリスクがある。そうだ、広報本部長なら、全ての条件を満たす、とこういうロジックなわけである。

かつ対外的には「河野氏の発信力は、党の魅力を伝えるには最適」と言えるわけだ。

このロジックは、根回しをする側の役人の入れ知恵がないと構築できない。そして、これが一番関係する省庁はもう自明。防ぎたい論点も、脱炭素というのは、もう自明。

つまり、かなり、今回の岸田新政権は、脱炭素には慎重というところが、すでにここからも見えてくる。

その上で、次は甘利幹事長が脱炭素戦線に及ぼす影響について見ていきたい。

甘利幹事長が脱炭素戦線に及ぼす影響とは

甘利氏は経産大臣の経験もあり、そういう意味では昔からある日本のエネルギー論に精通する方である。

今年の7月には次期エネルギー基本計画の素案について「30年度の温室効果ガス排出削減目標を達成するため、原子力を重要な電源の一つに位置付けていることは間違いない」と指摘し、かつ、「一番大事なのは安定供給」と強調し、原子力に関しては「有事を想定した上で、被害を最小に抑える新型炉の設計や技術開発が必要だ」と述べている。

そう、ごりごりの原発推進論者だ。エネルギー界隈では有名な話でもある。


甘利明氏のTwitterより

この点について、事実だけお伝えすると、例えば朝日は「パーティー券と原発利権 電力9社がすがる甘利経済再生大臣の場合」という本を出版している。また、テレビ東京と原発をめぐる論点について、裁判を起こしたこともある。

その方が三役のうちの幹事長を務めている。根回しの対象となる。

方向性は自ずと見えてくるだろう。しかも、構造的には原子力だけではなく、火力についてもディフェンドする立場を取るのも、また勘の鋭い読者なら見えてくるかと思う。

さらに、高市政調会長が脱炭素戦線に及ぼす影響についても、お伝えしたい。

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

エネルギーの最新記事