また、日本の総理となった場合には中国との関係をどのようにハンドリングするかが非常に重要になる中で、中国に対して、中国共産党と結びつきが強い企業が家族経営している中にあるという背景をもつ河野氏は、強く出られないのではないかという懸念も出てきている。
さきほど、河野氏の「なんの問題もない」という回答をご紹介したが、それを想定していたのか、次のような投稿もされている。
「合法ですが…共産党の血が40%入っている事。モラルの問題です」
これら一連の投稿に対し、「河野氏が首相になったら、中国と衝突した時に、国益よりも家業の利益を優先するのではないか、と、不安になってしまう」といった意見が拡散されている。
また、米中の覇権争いと関連させる意見もある。
アメリカは今年6月、太陽電池の原材料製造に関して、ウイグル人の強制労働が行われている疑いがあるとして、中国産原材料の禁輸措置に踏み切った。中国における、さらに太陽電池の原材料についての強制労働や人権侵害が大きな波紋を呼ぶなか、河野氏はこれら問題に中国と向き合うことができるのか、という指摘も出てきている。
一方、日本端子の中国子会社について、「日本企業が中国に進出するには、中国側の出資を受けなければいけないことは対中ビジネスの常識」「ファミリー企業の中国進出の何が問題なのか」などと、河野氏に対する一連の批判はネガティブキャンペーンだと指摘する意見も多い。
いずれにせよ、脱炭素については、中国が太陽光パネルの世界シェア7割以上を誇る現状があり、その他、風力や車の電動化などについてもかなりの推進力をもって取り組んでいる状況に照らせば、今後、脱炭素文脈での中国というのは無視できない存在になる。
この点は先述のとおり、バイデン政権も注視している論点であり、日米同盟の文脈から、日本も必ず巻き込まれうる論点である。
したがって、どのような場合であれ、中国に対してどのような姿勢で臨むのかというところは、国家の宰相たる者にとって非常に重要な論点であり、そこについての国民の声にはクリアに回答しておくべきだろう。
総裁選は非常に世間の注目を集めているが、河野氏の勢いはこうした懸念も影響してか、一時の勢いはないように見受けられる。この懸念に対して処置を講じないことは致命傷にもなりかねないほど、反響が大きくなってきているのもまた事実である。再エネ拡大の信条が、ロジカルに説明できるものであるならば、そこについてはしっかり再度説明を行って、懸念に対して回答をした方がいいだろう。
さもなくば、脱炭素推進という世界の潮流に沿ったもの、そのものが世間から間違った印象をもって受け止められることにもなりかねない。また、中国に関する懸念も国民としては大きい事項であり、そこと向き合う必要は、今回に関してはあるように見える。歯切れよく答えるのが河野氏の持ち味であるならば、ここでこそその持ち味を発揮する場ではないだろうか。
いずれにせよ、カーボンニュートラルを掲げた日本がどのようなエネルギーの方針を取るのか、4候補とも意見が異なる中で、今後を占う非常に重要な総裁選となる。エナジーシフト編集部としては総裁選においてまっとうなエネルギー政策が議論されることを願うばかりだ。
ヘッダー写真:U.S. Department of State from United States, Public domain, via Wikimedia Commons
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