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危うい太陽光発電の主力化 止まらぬ資材高騰に加え、市場ではある異変が

2021年11月16日

銅価格の高騰で、ケーブル盗難まで増加

地球温暖化が進み、日本でも台風や豪雨などの自然災害が増加している。太陽光発電が急速に普及する一方で、発電施設の土砂災害や台風、豪雨などによる太陽光パネルの飛散や破損事故が相次ぐ。経産省によると、2018年の西日本豪雨では11件の太陽光発電施設が土砂災害を起こし、神戸市では一時、山陽新幹線が止まるなどの影響が出た。

さらに銅価格の急騰によって、発電施設からのケーブル盗難も多発している。銅はスマートフォンやパソコン、液晶テレビなどの電子・電気機器はじめ、自動車や建設などさまざまな産業で使われている。新型コロナウイルスからの経済復興に、先述した中国の電力危機による供給制約が銅のひっ迫に拍車をかけ、国内の銅価格はこの1年で2倍の水準にまで高騰した。高騰を背景に、銅を転売して儲けようと、太陽光発電施設で使われるケーブルの盗難被害が相次いでいる。

埼玉県では2021年1月から7月までの間に51件のケーブル盗難が発生した。また、2021年1月に起訴された窃盗犯3人は千葉や茨城、栃木などで228件のケーブル盗難を繰り返し、被害総額は1億4,500万円にのぼると報じられた。

人目につきにくい場所に設置される太陽光発電施設を狙った盗難事件は増加傾向にある。

保険料の高騰が隠れたリスクに

災害や盗難事故に備え、発電事業者は火災保険などに加入しているが、その保険料の値上げが止まらない。原因は保険金支払い額の多さだ。

保険会社にとって、太陽光発電施設は落雷や風水害、そして盗難事故が他業種に比べ多く、保険金支払額が急増した結果、収支は赤字だといわれている。そのため、保険会社の中では、新規の太陽光発電施設の保険引き受けを停止し、契約更新に際しても、1度でも事故が発生した施設は契約更新をしない、という企業が出始めている。また、太陽光発電施設を高損害業種に指定し、数十%の割増を適用したうえで保険を引き受ける企業もあるという。

保険の引き受けが停止されれば、発電事業者は災害や事故などの被害額すべてを自社で被らなければならず、20年以上に及ぶ発電事業の継続性に疑義が生じてしまう。また、保険加入は投融資の際の条件でもあり、資金調達にも影響をきたす。今年に入って、損害保険会社は、PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約)などに新たな保険サービスを相次ぎ提供し始めたが、PPAだからといって、発電施設の損害リスクが減るわけではない。

今後、保険金支払額が増えれば、損保各社は支払いを補てんするために、火災保険料を引き上げるだろう。こうした悪循環が進めば、保険の新規引き受けを停止し、既存の契約者も高騰する保険料を支払えなくなり、太陽光発電の保険業務そのものが存続しえなくなるだろう。

ある発電事業者は「2030年46%削減という目標は太陽光発電のさらなる伸長がなければ達成不可能だ。しかし、今は再エネ電力が欲しい人に比べて、発電所をつくれる人が少ない。そのため、われわれが開発する太陽光発電所は従来の比にならないペースで増えていく。だが、開発件数が増える中において、保険料の上昇、何より保険の新規引き受け停止は大きなリスクになる」と語ったが、太陽光発電にとって保険が隠れたリスクになりつつある。

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EnergyShift編集部
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