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LNGを超えるか。 洋上風力プロジェクトの難しさ

LNGを超えるか。 洋上風力プロジェクトの難しさ

2020/01/24

「太陽光発電はピークを超えた。次は洋上風力だ」とエンジニアリング各社は口を揃える。日本での潜在能力は91GWとも言われ、再エネの一大市場となる可能性のある洋上風力だが、その建設には巨大建設プロジェクトのノウハウが必要だ。
日本企業、特にエンジニアリング企業にとって、洋上風力発電には、どのような機会と課題があるのか。エンジニアリングビジネス誌編集長・宗 敦司氏が解説する。

有望地域4カ所が認定。入札はこれから

2019年7月。政府は再エネ海域利用法に基づき、洋上風力で一定の準備段階に進んでいる区域として11区域を挙げ、そのうち4区域に「有望区域」を設定*1。協議会の組織や国による風況・地質調査の準備を開始した。

指定されたのは、以下の4地域だ。

  • ①秋田県能代市、三種町および男鹿市沖
  • ②秋田県由利本荘市沖(北側・南側)
  • ③千葉県銚子市沖
  • ④長崎県五島市沖

このうち、すでに秋田県能代市では、ゼネコンの大林組が「秋田県北部洋上風力合同会社」を設立し、関西電力や東北電力も資本参加して、8,000kW×56基、総容量44万8,000kWの計画を進めている。また、同県由利本荘市では再生可能エネルギーのデベロッパーである(株)レノバが主体となって計画を進めている。

ほかの2地域についても、千葉県銚子沖は東京電力ホールディングス、長崎県五島市沖は戸田建設がそれぞれ事業主体として計画を進めている。2020年度末から2021年度にはこれらのプロジェクトで入札が開始されると見られており、エンジニアリング会社各社も準備を進めている。

巨大プロジェクトの知見が必要

ところでエンジニアリング会社は、生産プロセス技術の知見や、巨大プロジェクトのマネジメント力をコアとして、LNG(液化天然ガス)や石油化学プラント、発電所など国内外の巨大プラント建設プロジェクトのEPC(設計、資機材調達、建設)業務を主な生業としている。そのエンジニアリング会社が何故、洋上風力に注目しているのか。

洋上風力発電の主役は、言うまでも無く風車である。通常の(陸上の)風力発電プロジェクトでは事業者が風車を選定し、直接発注する。エンジニアリング会社は、その風車を受け取り(あるいは輸送し)、設置して発電可能とするのが仕事だ。

だが、洋上風力のEPCは、言うほど簡単な仕事ではない。

まず、洋上風力は従来の再生可能エネルギーとは異なり、巨大プロジェクトとなる。建設コストが高いため、大規模化しないと採算が取れないことから、数十基から多いものでは100基程度のプロジェクトとなる。その工事の物量は「LNGプラントを超える」と言われている。

大型LNGプラントで設置される大型のタワーの重量は1,000トン規模。対して、大型の洋上風力発電の基礎として良く採用されるモノパイル(1本の大口径杭を基礎地盤に打ち込む工法で使われる杭)も1,000トン規模と負けていない。しかもそれが数十本から100本近くとLNGに比べて数倍の規模になる。そのため海外の大型LNGプラントの建設を手掛けてきたエンジニアリング会社ですら「未体験ゾーンとなる。気を引き締めないといけない」と言わしめる程だ。

バルト海の洋上風力発電建設の様子

既に競争状態に

しかも、日本は風車を据え付ける基礎構造物を充分賄うだけの製造能力が足りない。特に、欧米で主流のモノパイルは、日本でも作ることはできるが、量産化している欧州メーカーに比べてコストが高く、製造能力も充分ではない。したがって、モノパイルを採用する場合には、欧州からの輸入が必要となる。
大きな物量の構造物を、品質を確保したうえで国内の建設状況に合わせて適切に輸入するには、海外プロジェクトでの機器資材調達の経験がモノを言う。そこにエンジニアリング会社の優位性がある。

風力発電の羽の海上輸送の様子(ドイツ)

一方、ゼネコンや重工業も洋上風力に注目している。日鉄エンジニアリングは日本で数少ないジャケット構造物*1の工事ノウハウを持つ会社として受注確保を狙っている。しかも同社は北九州市などのヤード(大規模な作業場)を使える強みがある。また日立造船は各種基礎構造を製造可能としており、特に独自開発のサクションバケット基礎*2を提案。また「洋上風力の本丸は浮体式」として、浮体構造物のコスト削減に努めている。

五洋建設は、風車の設置で必要となる自己昇降式作業台船(SEP船)の2隻目を建造することを決めた。12MWの大型風車にも対応できる1,600トン吊クレーンを搭載したもので、鹿島建設などと共同運営していく。

このように、様々な業種が洋上風力発電市場への参画を目指して、すでに競争を繰り広げている。

  • *1: ジャケット構造:陸上で鋼管を組み立てたトラス構造物(ジャケット)を海中の杭と溶接などで一体化させる工法。通常工法よりも杭の数が少ない、水平方向の力に強いなどの利点がある。
  • *2: サクションバケット基礎:モノパイルと異なりバケット内部を排水して海底面に置く工法。(リンク:https://www.hitachizosen.co.jp/news/2018/02/002975.html

規制緩和とインフラ整備を

だが大規模洋上風力の実現までには、残されている課題も多い。

まず作業船が国内には充分に存在しない。そのため、作業船を海外から傭船してくる必要があるのだが、「カボタージュ制度」と呼ばれる規制で、国内輸送で運用される船舶は自国船籍に限定されている。この制度があるため、洋上風力建設でも、同一作業が可能な国内の作業船が優先され、海外船籍の作業船を使うにはその案件ごとに国土交通省の特別許可を得なければならず、手間と時間がかかる。
このことから、作業船不足による工期延長などのリスクがあり、工事コストの増加にもつながりかねない。特別許可の手続きの簡素化など、規制緩和が必要だ。

また日本には基地港(ステージングポート)がない。これは風車の組み上げや、基礎構造物の保管のための広大なバックヤードを持ち、大型作業船が接岸できる港のことだ。通常、この基地港で構造物を組み上げて、作業船に積載することになる。これがあることで海洋工事をスムーズに進めることができ、コスト低減にも繋がる。

しかし日本には今現在、こうした港湾が存在しておらず、本格的にプロジェクトが立ち上がって来るのに合わせて、これを整備していく必要がある。現在、北九州市の響灘での基地港の整備が進められているが、今後の一大需要地となる秋田、青森でも同様の基地港の整備を自治体と国、事業者で確保していかなければならない。

洋上風力という巨大市場を立ち上げて行くには、これらの規制見直しやインフラを整備していく必要がある。

宗敦司
宗敦司

1961年生まれ東京都東村山市出身。 1983年 和光大学人間関係学科卒業。 1990年 ㈱エンジニアリング・ジャーナル社入社。 2001年 エンジニアリングビジネス(EnB)編集長

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