Envision Groupといえば、風力発電設備の世界一のメーカーとして良く知られている。その関係会社であるEnvision Digitalは、その名の通り、エネルギーをはじめとするインフラのデジタル化を推進する企業だ。2020年11月に、日本法人となるEnvision Digital Japanが設立され、本格的な日本進出となった。代表取締役社長の栗原聖之氏に、日本市場への想いを語っていただいた。(全2回)
― 最初に、Envision Digitalがどのような会社なのか、その点からお話しください。
栗原聖之氏:Envision Digitalは、世界第一位の受注量の風力タービンメーカーであるEnvision Energyのグループ会社です。世界中に風力発電を設置してきましたが、それらのアセットマネジメントなどを目的に、AIoT(AI+IoT)を使って大量のデータを取得し、分析しています。そうした基盤があり、2017年に、エネルギーAIoTのプラットフォーム「EnOS」を提供するEnvision Digitalが設立されました。
では、Envision Digitalはどのような会社かといえば、インテリジェントな再生可能エネルギーの生成、消費効率、およびエネルギー貯蔵のためのソリューションプロバイダーです。
人工知能(AI)とモノのインターネット(IoT)のエネルギー管理ソフトの先駆者として、現在世界中で1億台以上のスマートデバイスと200GW以上のエネルギー資産を接続、管理しています。
モニタリング、高度な分析、予測、アプリケーションの最適化などは、再生可能エネルギーのスマートな利用やエネルギーの制御をはじめ、スマートシティ、スマートビルディング、スマートプラント、スマートネットワーク、資産管理などのための分析データを提供しており、スーパーコンピュータのユーザーとしては世界第二位になります。
また、私たち自身、RE100にコミットしており、2025年には再エネ100%を実現する計画です。
Envision Digital Japan 栗原聖之代表取締役社長
― グローバルではどのくらいの規模で事業を展開しているのでしょうか。
栗原氏:Envision Digitalの本拠点は、Envision Energyとは異なり、シンガポールになります。日本や中国以外では、フランス、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、オランダ、英国、米国に合計12ヶ所の技術拠点を持ち、2021年3月末の時点で約1,000名の従業員がいます。
また、フラットな組織という点が特長で、お客様に対して発生するタスクごとに、部門を横断したメンバーがチームをつくり、スピーディーに対応しています。こうしたフラットで柔軟な組織も特長となっています。
― 2020年8月には、オリックスとの提携を発表されました。同社に限らず、どのような企業がクライアントなのでしょうか。
栗原氏:オリックスとの提携は、メガソーラーに高度な分析と遠隔監視を導入し、いわばオプティマイゼーション(最適化)していくというものです。
その他にも、日本企業では日産、海外で良く知られたところでは、シェル、エネル、エクイノールなどが挙げられます。また、トタールとはグローバルで提携しています。IBMとの提携では、再生可能エネルギー管理ソリューションの開発を行っています。また、当社のEnOSが基幹都市OSとしてシンガポール政府・英国・ケンブリッジシャー郡に採用され、カーボンネットゼロの実現に向けて貢献しています。
クライアントは10業種350社・団体以上になります。
― 事業展開の背景には、どのようなミッションがあるのでしょうか。
栗原氏:世界が経済成長を減速させることなく、カーボンのネットゼロという目標を達成していくために、政府や企業は大規模な変革のための方法を模索しているのが現状だと思います。
こうした状況に対し、我々はネットゼロを義務ではなく、成長の原動力であり、競争の優位性になるものだと考えています。
環境負荷を低減し、インフラコストを下げ、安全性や生産性を向上させていくことが求められていますが、とりわけ再生可能エネルギーの拡大と電気自動車(EV)など交通分野の進化は大きな問題です。
これらを実現するためには、クリーンでデジタル化された技術が必要です。とりわけ2050年までには、太陽光発電と風力発電が石炭にとって代わり、蓄電池や水素が石油にとって代わる。そうした時代にあっては、AIoTのOS(オペレーティングシステム)が新しい電力ネットワークとなるでしょう。
こうした将来像の実現に貢献していきたいということです。
― エネルギーのIoTを扱う会社は他にもあります。御社の優位性はどこにあるのでしょうか。
栗原氏:さまざまなアセットなどをEnd 2 EndかつM2Mで一括して組織化できる会社というのは、当社しかないと思っています。
また、データ分析やそれによる予測の精度の点でも、優位性があります。
当社はEVのレース(フォーミュラE)にも参加しているのですが、そこで気象予測を使い、タイヤ交換などのオペレーションに利用しています。実際に、実用ベースで500メートルメッシュで94%の精度での長期気象予測も可能となっており、そのデータがレースに活かされることで、現在はレーシングチームが好成績をあげています。
― 組織化という点についてもう少し詳しくお願いします。
栗原氏:我々は2つのコンセプトを示しています。1つはEnd 2 End Orchestrationとよんでいます。エネルギー・インターネットは、電力会社やエネルギー貯蔵、再生可能エネルギー発電、送配電網、そして電力のユーザーを結びつけ、都市から建物、工場、住宅におよぶカーボンネットゼロに向けた持続可能なメカニズムです。こうした現場をつなぐオーケストレーションです。
また、もう1つのM2M Orchestrationにおいては、AIoT技術によって、動力、センサー、デバイス、制御システム、そして都市インフラのネットワークによってサポートされます。このネットワーク全体を自動的に最適化していくという意味での、M2Mのオーケストレーションです。
(第2回に続く)
(Interview&Text:本橋恵一、Photo:山田亜紀子)
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