東京都の小池百合子知事は9月28日、新築住宅などに太陽光発電の設置を義務づける都独自の制度の導入に向けて検討を開始することを明らかにした。対象となる建物の規模や面積、開始時期などについては、専門家を交えて今後議論する。政府は2030年に新築住宅の6割に太陽光発電を設置する目標を表明しており、東京都が義務化すれば、政府目標の実現を後押しすることになる。
小池知事のもと、東京都は2019年12月、2050年までに世界のCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を公表、2021年1月には2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減するマイルストーンも表明している。
ゼロエミッション東京の実現に向けて、小池知事は、新築住宅含めた建物に太陽光発電の設置を義務づけることを検討する。第3回都議会定例会の所信表明で明らかにした。
小池知事は所信表明で、「ゼロエミッション東京の実現に向けた2050年を見据え、数十年にわたり使い続ける住宅等の建物を環境面、防災面にも優れたサステナブルな性能に転換しなければならない。新たに一定の新築建築物に太陽光発電の設備設置を義務づける都独自の制度の導入に向けた検討を開始する」と述べ、今後、専門家を交えて、義務づけの対象となる建築物や導入を支援する補助金などについて、都の環境審議会で議論する。
政府は2030年温室効果ガス46%削減など脱炭素に向けた施策のひとつとして、「新築住宅への太陽光設置義務化」を今年4月から検討したが、一般消費者のコスト負担増や、それに伴う住宅着工数の減少懸念といった反対意見を受け、義務化を断念。義務化に代わって、2030年に新築住宅の6割に太陽光を設置する目標を表明した経緯がある。
義務化は見送られたものの、2030年目標実現には、コスト低減が進み、かつ、他の再エネ電源に比べて建設までのリードタイムが短い太陽光発電を伸ばすほかない。だが、太陽光発電の導入量はここ数年伸び悩んでおり、2020年度の導入量は1.5GWにとどまる。2021年度も同水準が見込まれている。大規模な発電所を開発できる適地が減り、さらに自然環境や景観が損なわれることへの懸念から、地域住民が反対するケースが増加していることが背景にある。
それだけに新築住宅など建物への太陽光発電の導入が欠かせない。
導入義務化をめぐっては、すでに京都府および京都市が2,000m2を超える建築物への再エネ設置を義務化する制度を導入済みだ。さらに京都府、京都市は2022年4月から300m2以上の建築物も義務化の対象とするとともに、10m2以上の小規模建築物は努力義務とする方針だ。
仮に東京都が設置義務化を導入すれば、政府目標の後押しになるだけでなく、他の自治体に広がる可能性が指摘されている。
また小池知事は所信表明において、東京都の環境基本計画を改定し、都の環境政策を新たなステージに導くと発言。そのうえで、「人類が克服すべき気候危機を前に脱炭素化に向けた行動を資金面で支えるサステナブルファイナンスへの期待が高まるばかりだ。東京グリーンファイナンスイニシアティブを推進し、社会課題の解決に資する分厚い金融市場を構築することで、環境分野のみならず、世界を惹きつける国際金融都市として東京の地位を飛躍的に高めていく」ことにも言及した。
(Text:藤村朋弘)
関連記事
国交省も脱炭素に本腰 新築住宅6割に太陽光導入など2,135億円 2022年度概算要求
2030年目標「新築戸建て6割に太陽光」 経産省など検討 消費者への影響は?
エネルギーの最新記事