7月20日、住宅や建築物の脱炭素化に向けた政策などを議論する審議会が開かれ、とりまとめ案を公表した。だが、新築住宅の太陽光設置義務化や住宅の断熱基準のさらなる引き上げなどをめぐり審議会は紛糾。とりまとめ案を修正し、継続審議とする、異例の事態となった。
国交省や経済産業省、環境省の3省は今年4月から、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を立ち上げ、住宅などの脱炭素に向けた政策(建物や住宅のゼロエミッション化や再エネ導入など)を議論してきた。
この検討会には、6月28日に開催した、河野太郎行政改革担当大臣直轄の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」から「住宅などの太陽光発電の導入について、どの省庁が責任を持って進めるのか明確にすべきだ」などの要望を受けており、その対応が注目されていた。
タスクフォースからの要望から約1ヶ月、7月20日に開かれた検討会でとりまとめ案が公表された。その中ではZEH(ゼロエネルギー住宅)やZEB(ゼロエネルギービル)の推進や、太陽光発電をはじめバイオマスによる熱利用など再エネ利用の促進などが記されている。
だが、肝心の「省庁の責任の所在」について、とりまとめで案は「3省協力のもと推進」との記述にとどまり、新築住宅の太陽光パネル設置義務化に関しても「ほぼゼロ回答」だったことなどから審議会は紛糾。目標設定などで不十分な点が多い今回のとりまとめ案に対し、複数の委員から「失望した」「到底、承服できない」などの厳しい意見が出された。
事務局はタスクフォースからの要望について、「近々にタスクフォースが開かれる。そこに向け、きちんと説明できるよう3省間で整理、検討中だ」と回答。この回答について、ある委員は「今の時点で決まっていないことが問題ではないか。タスクフォースの議論を踏まえたうえで、あり方検討会で議論すべきはずだが、まったく議論していない。この検討会は関係ないのか」と指摘した。
また別の委員は、脱炭素型住宅であるZEH推進を問題視した。
とりまとめ案には、2030年度以降の新築住宅は、(太陽光発電など)再エネを考慮しない設計で、エネルギー消費量20%削減を目指す、とある。この記述について「太陽光発電などによる創エネが、ZEH目標から外れ、ZEHの中身は省エネ20%減となったことが明らかとなった。これで本当に良いのか」と述べたうえで、「太陽光設置義務化についてはほぼゼロ回答だ。2030年46%削減に向け、あらゆる分野で再エネ導入の加速が求められているなかで、このとりまとめはその要望に応えられていない。大いに失望した」と述べた。
住宅の断熱性能についても厳しい指摘が出ている。「断熱性能があがれば快適性能があがり、健康な状態になる。だが、今のZEH基準では冬、暖房が切れた翌朝の室温が8℃に下がってしまう。何度も断熱性能の強化を申し上げてきたが、完全にスルーされている」とし、「断熱性能を強化しないのは、国交省のスタンスなのか」と質した。
さらに「革新的な技術などいらない、既存技術で住宅部門のCO2を大幅に削減できるのに、なぜ、減らす手を緩めるのか。これが1番の問題点だ」と指摘した。
審議会では、とりまとめ案が公表されると、微調整を経たうえで、座長一任とする流れが通例だ。しかし、今回多くの意見が出たことで、とりまとめ案を全体的に修正し、改めて議論する事態となった。住宅などの建築物の脱炭素政策はどうなるのか、余談を許さない状況が続く。
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