「中国製スマホに監視機能」報道から考察する、車の電動化と情報漏洩の危機  | EnergyShift

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「中国製スマホに監視機能」報道から考察する、車の電動化と情報漏洩の危機 

2021年09月28日

アメリカによる対中国戦略とは

当たり前だが、アメリカはきっちり対応している。中国とはデジタル戦争を繰り広げているというところもあるのだが、もちろん、それだけではない。

まず、2019年5月に、当時のトランプ大統領は、同国の安全保障にとってリスクのある外国企業の通信機器を、米企業が使うことを禁止する大統領令に署名した。この時点でどこか特定の企業が名指しされたわけではないのだが、商務省は同日、安全保障上の懸念がある外国企業のリストに華為技術(ファーウェイ / HUAWEI)を追加。同社が米国企業の技術を政府の許可なく入手するのを禁止した、ということで明らかに中国企業を念頭に置いた措置だった。これによって、ファーウェイの携帯にはGoogleのAndroidが使えなくなる。Googleもアメリカ企業であるため、ファーウェイへのOSの提供はダメ、というわけだ。

さらに2020年6月、アメリカ連邦通信委員会(FCC)はファーウェイや中興通訊(ZTE)の2社を、アメリカの通信ネットワークおよび5Gの未来に対する「安全保障上の脅威」と正式に認定。その後、措置は拡大し、政府の補助金を受け取る通信会社が、ファーウェイやZTEなど中国企業5社の機器を買うのを禁じる措置も講じられた。どの通信会社も補助金を使って、通信網を整備したいため、この措置で太宗を封じたと政府は思ったわけだ。

ただ、それでも補助金を使っていないアメリカ通信企業が中国企業の技術を頼ってしまうことが問題視され、2021年6月にFCCは、安全保障上のリスクとみなすファーウェイ、ZTEを含む、中国企業5社の通信機器の認証を禁じる方針を決め、ここにアメリカにおける通信業界からの中国締め出しが一通り完結したわけだ。

ちなみに、携帯についてはファーウェイやZTEに対しては厳しいが、OPPOとXiaomiについては現時点ではそこまでの警戒にいたっていないようだ。

ただ、今回のリトアニア騒動で、アメリカも調査するだろうから、その結果がどうでるのか、注目の論点になっている。アメリカが対応をとらなければ、リトアニアが警戒しすぎた、となるだろうし、アメリカが動いて、追随すれば、やっぱりか、となり、国際的に広がっていく流れになるだろう。

こう解説すると気になる読者もいるのではないか。なぜアメリカはそんなに対応が早いのか、と。そこで次は、なぜアメリカは対応が早いのか、情報管理の問題と絡めて説明したい。

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前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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