G7共同宣言文からカーボンニュートラルの国際動向を読み解く | EnergyShift

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G7共同宣言文からカーボンニュートラルの国際動向を読み解く

G7共同宣言文からカーボンニュートラルの国際動向を読み解く

2021/06/16

6月13日に英コーンウォールで閉幕したG7サミット。大きなテーマはもちろん、脱炭素だ。妥協と駆け引きの末に編み出されたG7共同宣言文は、欧米各国の将来を探る上で重要なヒントが満載だ。元外交官であるゆーだいこと前田雄大が、共同宣言文から各国の脱炭素政策のこれからを読み解く。

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共同宣言文は各国の思惑と駆け引きの産物

G7首脳会合が英コーンウォールで開催、13日に閉幕した。昨年のG7では国際協調を旨としなかった米トランプ政権が交代。米バイデン政権になって初めてのG7になる。

G20とは異なり、西側諸国のみ(日・米・英・仏・独・伊・加+EU)で形成されるこの枠組みは、共通の価値観を持つ国同士ということもあり、合意形成がしやすく、結束する傾向にある。アメリカが国際協調に戻ってきて初めてのG7という意味でも注目だったが、やはり分かりやすい構図、内容になった。

まず、コロナからの回復が大テーマであり、共同宣言文も基調としてはそうなっている。そして中国、自由貿易などと並び大きなテーマとなったのが、脱炭素だ。重要な合意形成は今回の共同宣言文にも見られる。外交の場において、こうした共同宣言文は各国の思惑が如実にでる。

G7の共同宣言文を仔細に見ることで、日本を含む世界の脱炭素政策は、これからどうなるのかを読み解く。

G7の考える脱炭素政策の優先度

まずは共同宣言文全体の中での位置づけを確認しよう。コロナ、経済復興、自由貿易体制と来て、その後に、「地球を守る」という文脈で脱炭素のテーマに入る。

脱炭素は議長国イギリスの経済政策、一丁目一番地でもあったが、宣言文では4番目に取り上げられる格好となった。G7としては十分重要な位置づけであると言える。

その文言は、以下ではじまる。

Protect our planet by supporting a green revolution that creates jobs, cuts emissions and seeks to limit the rise in global temperatures to 1.5 degrees. We commit to net zero no later than 2050, halving our collective emissions over the two decades to 2030, increasing andimproving climate finance to 2025; and to conserve or protect at least 30 percent of our land and oceans by 2030. We acknowledge our duty to safeguard the planet for future generations.

グリーン革命を推進して地球を守る、から始まるこの文章(和訳は筆者、以下同じ)。G7の文言は「革命」となった。パリ協定の目標値として、平均気温上昇を2度ではなく1.5度に抑えると明確にし、ここがG7のスタートラインになった。2度ではないと言うことで、実質目標の引き上げとなるが、ここは既定路線だ。

そして、カーボンニュートラルの達成年は「no later than 2050」(遅くとも2050年までには達成)という目標も確認。いま、各国が2050年カーボンニュートラルを目指す中、将来の前倒しありき、の文言になっている。

G7全体で1990年比温室効果ガス半減、と解釈できる文言

個人的に注目したいのは、次の文言。

「halving our collective emissions over the two decades to 2030」(2030年までの20年間の温室効果ガス排出をG7全体で半分にする)、という箇所。

つまり、2011年から2030年までの排出量を、それまでの20年間(1990年から2010年)に比して半分にする、という意味に解釈できる(この基準年が1990年と考えられる理由については後述)。

日本の2030年目標はご存知の通り2013年比46%削減。つまり、日本は1990年比50%を求められているに等しく、2030年目標について上方修正の圧力がかかった格好だ。これはかなり厳しい。

各国のNDCの基準年をならした数値 日本は1990年比だと40%になる。

欧州の現行の排出削減目標は1990年比で55%減であることから、この「20年間」というくだりは欧州が提案してきたものであると考えられる。

他方、「2030年目標で50%削減」は、アメリカが気候リーダーズサミットを開催したときに、とにかくこだわった論点であり、その目的は中国だった。中国は2030年に責任を持って排出削減はできないだろうということを浮き彫りにするためだ。

このくだりは、欧州のこだわりとアメリカのこだわりがミックスした文言ということで読み解ける。

文言に基準年が入らなかった理由

基準年に関しては、いまの温室効果ガス排出についてはアメリカが2005(52%)、欧州が1990(55%)、日本が2013(46%)と、それぞれ一番排出量が多かったときを基準にしている。つまり、国によってはこの「2011-2030年の半減」というG7の文言は、受け入れが困難になる可能性がある。

また、日本のように現行の2030年目標が半減まで達していないところもあるため、相当の調整がなされたと筆者は見る。

おそらく最初の打ち出しは、G7 member countriesとして「全ての国が半減」という形であったと思われる。が、日本をはじめ難しい国がある。おそらく基準年の関係ではアメリカも厳しかったはずだ。

であれば、collective emissions=G7全体でのCO2排出、という形にし、2030年まで半減、という文言にしようという調整となった、と見ることができる。これが、前述の「2011年から2030年の排出量を、それまでの20年間(=1990年から2010年)に比して半分」、という表現につながってくる。

ここで言えることは、「2021年のG7共同宣言文で、2030年までに半減」という目標は文言として出てきてしまったわけだ。おそらくフランス議長国の回やドイツ議長国の回が来た時に、ここを足場に上方修正を絶対にトライしてくる。つまり、このタイミングで「2030年半減」という文言が入ったこと自体、日本が今後更なる脱炭素をしていかないといけなくなる可能性が高くなったことを表している(もちろん、脱炭素を応援する観点からは素晴らしいことだが)。

2005年に比べて半減、と書かれたパートはアメリカへの配慮

実はこの部分は、各論のところでも再度登場する。各論38のパートを見てみよう。

In line with this goal, we have each committed to increased 2030 targets and, where not done already, commit to submit aligned Nationally Determined Contributions (NDCs) as soon as possible ahead of COP26, which will cut our collective emissions by around half compared to 2010 or over half compared to 2005.

ここでの書きぶりは「2005年に比べて半分以上」となっている。これはアメリカの2005年比50-52%削減に整合的であり、日本にも配慮された年限になっている。日本に関する部分は「around half」(2010年に比べておよそ半分の削減)という箇所。「日本の2013年比で46%削減」もこれで一応、読み込めるようになっている。

ここは46%まで数字を上げておいて良かったということでもあるが、仔細に読めば事情が丸わかりになってしまう文言調整になっている。おそらく、ここに関して他国は思うところもあるだろう。

アメリカが「2005年比」を譲らなかったために、日本の部分も許されたという格好だろうが、アメリカの進展いかんでは日本のおかれる立場は厳しくなっていくとも見られる。

いずれにしても、これらも「2030年に責任ある削減目標を立てているか」という意味で、中国包囲網の文脈が出てきている。今後、G7で連帯して対中国という議題は継続されるだろう。それに関連して脱炭素も出てくることは間違いない。

なお、総論後段では2025年までに気候資金を増やす点にも言及がある。とにかく資金は公的でも民間でも増えていく方向を再確認した格好だ。ただ、ESG投資はもうトレンドであり、民間は勝手に増えていく。つまりは公的投資を増やす、という意味あいが今回は大きいと見る。

米バイデン大統領のツイート

2021年はグリーン革命の転換点

各論の方向性は変わらないため、特筆すべき論点をポイントで見ていく。

各論冒頭のパラグラフ37からはこの文言。

Through global action and concerted leadership, 2021 should be a turning point for our planet as we commit to a green transition that cuts emissions, increases adaptation action worldwide, halts and reverses biodiversity loss, and, through policy and technological transformation, creates new high quality jobs and increases prosperity and wellbeing.

排出削減を伴うグリーンへの移行や雇用の創出、また生物多様性や気候変動への適応も書かれているが、ここで個人的に注目をしたいのは、2021年は転換点である、と記載した点だ。

アメリカも帰ってきた、G7の各国も、排出削減でねじを巻いた。そうしたことが起きた2021年は重要な年である。ここは日本の努力も肯定的に捉えられていると見ていいサインだ。

日本の民間も脱炭素ドミノが続いており、日本も本当に変わり始めてきている。このようにG7の場で認知された意義は大きい。もちろん、日本にとっても、この2021年が脱炭素元年と呼べる年であることは、個人的にも間違いがないと見ている。

「ゴールを共有することを求める」国とは

そして、同じパラグラフ37で、先ほどの2030年目標のくだりがあった後に来る文言はここだ。

We call on all countries, in particular major emitting economies, to join us in these goals as part of a global effort, stepping up their commitments to reflect the highest possible ambition and transparency on implementation under the Paris Agreement.

この前段まで、「G7としてどれだけ取り組んでいるか」「これからやっていくか」、を書き、「G7は(脱炭素)めっちゃやるよ」感を出したあとで、「他国に対して、こういうゴールの共有や努力に参加することを求めていく」と。

早い話が、「他の国も一緒にやろうぜ」、という内容を書いている。その対象は、(in particularと強調しつつ)「major emitting economies」、つまり排出量の多い国、だ。定義上、インドも射程に入るが、正直、ここの狙いは中国だ。

「G7は2030年目標が立てられるけれど、中国さんは立てられないでしょう? 立てられるならそれでもいいんですよ、G7としては大歓迎。でも、できないですよね」という思いを行間に込めた最大限の皮肉になっている。

その皮肉ぶりは「to reflect the highest possible ambition and transparency on implementation」という、その手法の形容にも現れている。「最も野心を上げて、かつ透明性をもって実施してほしい」。つまり、中国の脱炭素が不透明であることも揶揄しているのだ。

IEAのネット・ゼロ・ロードマップに言及

パラグラフ39からはさらに各論に入っていく。各論への入りの文言はこうだ。

We will lead a technology-driven transition to Net Zero, supported by relevant policies, noting the clear roadmap provided by the International Energy Agency and prioritising the most urgent and polluting sectors and activities:

「ネットゼロは技術が可能にする」という箇所が印象的だが、さらに印象的なのはIEA(国際エネルギー機関)への言及だ。

これはもちろん、先日話題になったIEAのネットゼロのロードマップだ。さすがにあのロードマップは尖り過ぎているため、受け入れ困難な国も一部あったのだろう。また、G7という国の集まりに対して、国際機関の提言ということもあり、あくまで「noting=留意」ではあるが、それでもIEAのロードマップへの言及が入った。これは、あのロードマップが、今後は世界の指針にそれなりになっていく、ということでもある。

発電の表現が「非常に強力な脱炭素」となった駆け引きとは

In our energy sectors, we will increase energy efficiency, accelerate renewable and other zero emissions energy deployment, reduce wasteful consumption, leverage innovation all whilst maintaining energy security. Domestically, we commit to achieve an overwhelmingly decarbonised power system in the 2030s and to actions to accelerate this. Internationally, we commit to aligning official international financing with the global achievement of net zero GHG emissions no later than 2050 and for deep emissions reductions in the 2020s. We will phase out new direct government support for international carbon-intensive fossil fuel energy as soon as possible, with limitedexceptions consistent with an ambitious climate neutrality pathway, the Paris Agreement, 1.5°C goal and best available science. To be credible, ambitions need to be supported by tangible actions in all sectors of our economies and societies. We will lead a technology-driven transition to Net Zero, noting the clear roadmap provided by the International Energy Agency and prioritising the most urgent and polluting sectors and activities.

エネルギーセクターに関する文言で特に取り上げたい点は2点。

一つは「国内の発電部門は、2030年代までに脱炭素化の仕組みにしていく」と書かれていること。しかも、その脱炭素には「overwhelmingly」ということで、「非常に強力な脱炭素」、という形で書かれている。

おそらく元々の文言は、「ゼロエミッション」などの文言だったのが、反対した国がいた、でも、単なるdecarbonized、脱炭素化では譲れないので、このoverwhelminglyが入ったということではないか。

2035年までにアメリカも発電部門のゼロエミッションを掲げているので、ここで反対した急先鋒は日本だったのだろう。だが、定量的ではない表現ではあるが、「2030年代までの発電部門の脱炭素化に強力に取り組む」、これがG7の合意である。これを日本としても示していかなくてはならなくなった格好になった。

実は、一番厳しい調整だった点は、さきほどの「2030年目標」と、この「国内発電の脱炭素化」。ここだったのではないかと筆者は見ている。

火力発電は完全に旗色が悪くなった

続く2つ目のポイントが「石炭火力」だ。

「可能な限り早く、炭素密度の高い化石燃料エネルギーに対する、政府による国際的な新規の直接支援をやめる」という文言。

ここは、石炭と書いていないのがポイントだ。「carbon intensive」、「CO2排出が多い」という表現で、普通に考えると、ここはガス火力ですら支援停止の範疇に入ってきたと読める。もちろん、石炭火力は当たり前として。

ここも日本として守った論点がある。一つは、例外を設けたこと。「with limited exceptions」=「限られた例外はある」、という文言をねじ込んだ。日本には、バングラデシュのマタバリ石炭火力案件が残っているので、それをどうしても例外として残さなくてはならなかったのか、と思ったが、続きを読むと少し違う。

例外の条件を、他のG7からつけられており、それが、「consistent with」以下の部分、「カーボンニュートラルに整合的な形で」となっている。つまり、普通に考えるとCCUS付きでないと火力に対する政府支援はしてはならない、と読める。

もう一つが「phase out(フェーズアウト)」。即刻禁止ではないため、リードタイムで何とかしようということなのだろう。

いずれにしても火力は、石炭に限らず完全に旗色が悪くなった。

日本に突きつけられた石炭支援の禁止

その石炭。これについてはそもそも菅総理が、G7最終日の討議で、温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力の輸出について、新規の国際的な直接支援を年内に終了する方針を表明した、と報じられている。また、これまでもそうした政府方針は度々出てきていた。かつ、気候・環境大臣会合ですでにG7プロセスではワンラウンドあったため、日本としても理論武装できていた論点だろう。注目すべき文言はこちら。

Recognising that coal power generation is the single biggest cause of greenhouse gas emissions, and consistent with this overall approach and our strengthened NDCs, domestically we have committed to rapidly scale-up technologies and policies that further accelerate the transition away from unabated coal capacity, consistent with our 2030 NDCs and net zero commitments.

石炭火力が温室効果ガス排出の唯一最大の原因である、という文言は気候・環境大臣会合に引き続き入った。これが首脳会合でも確認されたという意味は大きいし、G7プロセスでこれ以上後退することはもうないだろう。

To accelerate the international transition away from coal, recognising that continued global investment in unabated coal power generation is incompatible with keeping 1.5°C within reach we stress that international investments in unabated coal must stop now andwe commit now to an end to new direct government support for unabated international thermal coal power generation by the end of 2021, including through Official Development Assistance, export finance, investment, and financial and trade promotion support.

日本がOKを出したこともあって、ここの文言はなかなかすごい。「削減対策のない石炭に対する国際的な投資は直ちに中止すべき、と強調する」とまず言っているのだ。もちろん、日本も含めて。

その上で、排出削減対策が講じられていない石炭火力発電への、政府による新規の国際的な直接支援の2021年末までの終了にコミットした。

もう今年度を最後に、削減対策をしていない石炭火力へは政府支援はしてはならない、ということだ。その政府支援については、丁寧に列挙までされている。政府開発援助、輸出金融、投資、金融・貿易、促進支援等。いずれも日本のお家芸的手法な支援であり、それが列挙されて禁止された。日本政府としてもこの露骨な文言は中々強烈だ。

早い話が「日本、もう石炭火力の支援禁止な」というメッセージである、と言っていい。

ここまでぐうの音も出ないくらいに禁止になったので、もう石炭火力への支援復活はないだろう。筆者としては、こうなることは数年前から分かっていただけに、予測が甘い、という思いもあるが。

EV分野について特筆がない理由

続いて車についてはどうか。車は、アメリカが電動化目標を打ち出していないこともあり、正直見るべきところはほとんどない。

In our transport sectors, we commit to sustainable, decarbonised mobility and to scaling up zero emission vehicle technologies, including buses, trains, shipping and aviation. We recognise that this will require dramatically increasing the pace of the global decarbonisation of the road transport sector throughout the 2020s, and beyond. This includes support for accelerating the roll out of necessary infrastructure, such as charging and fueling infrastructure and enhancing the offer of more sustainable transport modes, including public transport, shared mobility, cycling and walking. We commit to accelerate the transition away from new sales of diesel and petrol cars topromote the uptake of zero emission vehicles.

輸送セクターも脱炭素化をしよう、ゼロエミッション車の技術を拡大していこう、関連インフラを整備していこうなどと書かれているが、ここではEVやFCVという言及はなし。

一応、あえて注目をするのであれば、最後の文章。「排出ゼロ車両の導入を促進するために、ディーゼル車やガソリン車の新規販売からの移行を加速させる」。アメリカの合意がないと、このような弱い表現、文言になるのだなという、これはこれで象徴的な文言調整と言える。今までの強い文言に比べ、一目瞭然なのが分かるだろう。

難しさが残る工業とイノベーション分野の脱炭素政策

続いて、工業・イノベーション部分。

In our industrial and innovation sectors we will take action to decarbonise areas such as iron and steel, cement, chemicals, and petrochemicals, in order to reach net zero emissions across the whole economy. To this end, we will harness our collective strengths in science, technological innovation, policy design, financing, and regulation including through our launch of the G7 Industrial Decarbonisation Agenda to complement, support and amplify ambition of existing initiatives. This includes further action on publicprocurement, standards and industrial efforts to define and stimulate demand for green products and enhance energy and resource efficiency in industry. We will focus on accelerating progress on electrification and batteries, hydrogen, carbon capture, usage and storage, zero emission aviation and shipping, and for those countries that opt to use it, nuclear power. We therefore fully support launching Mission Innovation phase two and the Clean Energy Ministerial third phase.

産業はどうしても炭素排出があり、すぐに脱炭素化をしていくことは難しい、という点では共通認識であることが見えてくる。そのため、あくまでも「take action」=「取組みをします」に表現がとどまっている。

そうした難しさがあるフィールドとは、鉄鋼、セメント、化学、石油化学等という形で列挙。列挙されることによって、脱炭素が難しい認識が明示されたと見てもいい。

今後、G7として注力をしていく分野も列挙。それらは、電化及び電池、水素、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)、排出ゼロ航空・海運であると書かれている。気候・環境大臣会合では水素は「それなり」な書きぶりが、首脳では列挙にとどまった。

原子力発電を残したかった国とは

最後、何より注目すべきは、ここに「原子力」が入ってきたことだ。

注釈として書かれた「for those countries that opt to use it」、原子力を使う選択をした国にとっては、という限定した表現の文言だが、これは一部の国が「どうしてもこだわって」入れた文言であるというのが分かる。

本当は発電セクターの箇所に書きたかったのだが、2030年代脱炭素化の明示もあり、厳しかったのだろう。ごった煮で列挙した中に、どうにか滑り込ませることで、G7としての合意をとったという形を、日本として取った。

ただ、G7の合意というよりも「やりたい国はどうぞ」という書きぶりになっている。これはもう、原子力とはそういうものだと捉えた方がいいと思う。

その他、セクター別では建物や農業などのセクターも記載はあるが、特段特筆すべき事項はない。また投資の話もあるが、前述のとおり、公的も民間からも気候資金を増やしていこうという話が書かれている印象だ。ここは正直、いつもコミットメント合戦になるところでもあり、あまりフォーカスしても仕方ないということと、民間レベルの投資が大きくなってきそうなところもあり、今回は気候変動や脱炭素関連の投資の動きがより大きくなる方向、ということだけ押さえておけばいいだろう。

G7首脳会合を共同宣言文から読み解いた。こうして仔細に分析することで、日本にとっていくつか、本当に厳しい論点があった一方で、46%目標とともに、色々と日本なりに準備をしてきて良かった点もある。

今後は、むしろ日本がどんどんリードしていって、他の国にプレッシャーをかける立場になっていく、そんな将来を期待したい。今日はこの一言でまとめよう。

G7は中国包囲網形成で合意 脱炭素は、また目標引き上げ予感


参考:G7共同宣言文:英語外務省訳

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボール出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。