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太陽光発電だけのSolar TAXIと運送業がついに実現、配送費9割減の企業も

太陽光発電だけのSolar TAXIと運送業がついに実現、配送費9割減の企業も

2020/08/25

脱化石燃料という将来を考えたとき、自動車はガソリン車から再エネを利用した電気自動車にとってかわられていくことになると考えられる。実は、アフリカのガーナではすでに、再エネ100%の運輸業者が登場しているという。日本サスティナブル・エナジー株式会社の大野嘉久氏が、この野心的な取り組みを紹介する。

燃料コストがかからないソーラータクシー

これまで人類は石油の利権をめぐり幾度となく衝突してきたが、誰にでも、どこへでも降り注ぐ太陽光を奪い合う戦争は起こらない。この太陽光エネルギーだけで人やモノを移動させられたらどれほど平和で素晴らしいことか。

産油国への依存度が減り、はるか遠くの油田から製油所へ運ばれてから全国の隅々までタンカーやタンクローリーで運ぶエネルギーの消費量、そして危険物の運搬にあたるドライバーの負担や事故のリスクも削減できる。燃料費がかからないうえ、排ガスも出ない。

そんな夢のような輸送を、世界で初めて事業化したのは西アフリカ・ガーナ第2の都市クマシの「ソーラータクシー」だ。同市では、太陽光発電だけで充電した車両での運送事業を展開している。

利用している鶏卵事業者によると、「従来は配達ごとに燃料費がかかっていたため、一回の配達で10セディ(約183円)の運送費を支払う必要があり、採算がとても悪かった。ところがソーラータクシーに切り替えたら半月でも60セディ(約1,094円)しかかかっていない」と語っている。これは従来の配送費と比べるとわずか1割であり、おかげで事業採算が大きく向上したという。

出典:SolarTaxi社

ここまで劇的に輸送費が削減できた最大の要因は、やはり燃料コストがかからない点であろう。同社の自動車やバイクそして三輪車は全て電動であり、太陽光パネルで発電した電力を電池に貯めておいて配達終了後に車両と接続して充電する。また人を運ぶタクシーも小型の三輪車であるため日本のタクシーと比べて車体価格がかなり安く、そして構造がシンプルで車両総重量も軽いことから航続距離が稼げる。

出典:SolarTaxi社

女性を積極活用

同社が低コストの運輸サービスと同様に高く評価されているのは、女性の活用である。社内に「女性エンジニア・アカデミー」を設立し、それまで男性の起用が多かった組み立て工の分野で積極的に女性を使っているほか、ドライバーでも女性を活用するなど、多くの貧困女性を助けている。

出典:SolarTaxi社

ソーラータクシーの創業者はアフリカ有数の女性企業家ヴァレリー・ラビ氏である。ラビ氏は英ケンブリッジ大学の修士号を取得した優駿で、「ガーナに変革を与える10人の若者」に選ばれたほか、2014年に「マンデラ・ワシントン奨学金」を獲得した際には米オバマ大統領にも表彰されている。

彼女はロンドンの投資銀行に勤務していたが、経済・雇用・環境などアフリカが抱えている様々な問題を解決するために自ら事業を立ち上げたという。

彼女はビジネスを通してガーナ人に適切な価格の輸送手段を提供するのみならず、ガーナをソーラー・モビリティの事業および研究開発の中心地として発展させ、アフリカ大陸におけるクリーン・エネルギー推進のリーダーにしたい、という大きなビジョンを掲げている。

その点、クマシ市にはコフィ・アナン第7代国連事務総長も輩出したアフリカ有数の理工系大学KNUST (クワメ・エンクルマ科学技術大学)があり、また同大学に設立されたエネルギー・センターは途上国における再生可能エネルギー研究の世界的権威と位置づけられているので、ソーラータクシーのような革新的エネルギー・ビジネスが育つ下地があったとも言えるだろう。

スタートアップ時にはクマシ市のベンチャー支援ユニット「Kumasi Hive」に身を寄せていたが、2018年にはマスターカード基金からの支援を得られることになって事業を加速させた。現在では操業地域を当初のクマシから首都アクラを含む4ヶ所に増やし、一日あたり450件ほどの配達を行っている。また電動バイクの数も2020年7月時点で112台に増えているが、2020年内には300台まで増やす計画だという。

配達やタクシーだけでなくソーラーEVのレンタカーや販売も

同社は人やモノの運搬のみならず、「ソーラーカー」のレンタルと販売にまで乗り出している。ただし自社で自動車を製造しているわけではなく、中国から輸入したEVを改造しているが、ついでに車名もオリジナルから微妙に変えている場合がある。

例えばChery Automobile(奇瑞汽車)のTiggo 3xeというEVを「Cherry 3XE」(rが一個多い)として、あるいはLifan Motors(力帆集団)の650EVというEVを「Lefan 650ev」(iがeに変えられている)としてラインアップする場合があれば、BYD(比亜迪汽車)のe6というEVを「BYD B6」(社名をフルに入れて車種名を少し変える)に変えるケースもある。このほかJAC Motors(安徽江淮汽車)のiEV7LやDongfeng Electric Vehicle(東風電動車輛股)のER30、あるいはChangan Automobile(長安汽車)のEV460はオリジナルの車名をそのまま販売・レンタルしている。日本だとありえないが、アフリカらしいネーミングである。

料金は購入だと100,000セディ(約1,827,000円)から200,000セディ(約3,654,000円)と原価によって倍の幅があるものの、レンタルの場合は月あたり800セディ(約14,600円)から1,000セディ(約18,300円)と車種による差は少なく、いろいろなメーカーのEVを試してみたい人にはとても有難いであろう。

初めて脱石油を果たした運輸事業者

ドイツのカール・ベンツがガソリンエンジンを完成させたのは1879年の12月31日、この日から人類は今日に至るまで輸送のほぼ全てを石油に頼るようになった。その恩恵は計り知れないが利用する際の環境への負荷も大きく、また近年では地球温暖化をもたらす主要因の一つとも言われており、再生可能エネルギーによる交通手段の開発は世界共通の目標だと言えよう。

ガーナのソーラータクシーは初めて脱石油を果たした運輸事業者であり、今後の拡大が期待されよう。ただし太陽光発電は無料なだけに、石油関連税によってまかなわれている道路整備などのインフラ財源が不足するため、より一層の普及にあたっては法制度の整備も欠かせないであろう。

大野嘉久
大野嘉久

経済産業省、NEDO、総合電機メーカー、石油化学品メーカーなどを経て国連・世界銀行のエネルギー組織GVEPの日本代表となったのち、日本サスティナブル・エナジー株式会社 代表取締役、認定NPO法人 ファーストアクセス( http://www.hydro-net.org/ )理事長、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所元客員研究員。東大院卒。

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