株式投資において、いまや「脱炭素」は欠かせないテーマになっている。世界的な脱炭素の流れを受け、事業の成長、株価の躍進を望めるのはどんな会社なのか。マーケットアナリストの藤本誠之氏に、脱炭素投資ビギナーのマネーライターが聞いた連載企画。2回目の今回は「リサイクル」をキーワードに、注目の関連銘柄をレポートする。
近年、脱炭素を目的に、リサイクルに取り組む企業が増えている。例えば、流通大手のイオンは2021年2月、丸紅グループと組み、使用済みペットボトルから新品のペットボトルをつくる「ボトル to ボトル」の活動を開始した。イオングループの店舗で回収したのちリサイクルを行い、同社PB商品「トップバリュ」の飲料容器として使う仕組みを構築するという。環境負荷の低減は企業の使命になりつつある。
「株式市場でもリサイクルは脱炭素をテーマとする投資家から熱い視線を注がれています。とくに資源リサイクルを専業とする企業の株価は、ここにきて右肩上がりの上昇を見せているところが少なくありません」(藤本氏、以下同)
藤本氏が注目する銘柄のひとつが、資源リサイクル大手の「【リバーホールディングス】(東証2部:5690)。同社は金属を主軸に、自動車、家電、オフィス什器など多様な廃棄物の処理および最利用を手掛けている。廃棄物の収集から再資源化までをワンストップで行い、全国展開しているのが特徴だ。
「リバーホールディングスは、金属のゴミも処理できる特殊なシュレッダーを複数台所有しています。廃棄物の自動車、冷蔵庫、洗濯機などを5センチ角程度にまで粉々に砕く高馬力のものです。自動車まで切り刻む1台数十億もするこのシュレッダーと、優れた選別技術を武器に、高いリサイクル率を実現しています」
日本社会にとって資源リサイクルは喫緊の課題。脱炭素の流れも相まって、重要性は増すばかりだ。さらに資源リサイクルを強く意識せざるを得ない別の事情もある。
「日本を含む世界のゴミは膨大な量にのぼります。増えるばかりの廃棄物を、これまでは中国が輸入し、処理や再利用の受け皿になってきました。要は、リサイクルセンター機能を中国にお任せだったのですが、そういうわけにはいかなくなってしまったのです」
中国は、環境への悪影響などを理由に、段階的に廃棄物の輸入を制限。最終段階を迎えた2021年1月1日以降、すべての廃棄物の輸入を禁止した。となると、自国での処理や再利用を迫られることになるのは言うまでもない。
「そこで必要とされるのが、リバーホールディングスに代表される資源リサイクルを専業とする会社です。製造業など製品を生み出す産業を『動脈産業』と呼ぶのに対し、その廃棄物を回収・処理し、再利用をはかる産業を『静脈産業』と呼びます。脱炭素など世界的に環境問題が重要視される中、静脈産業のニーズがより一層高まっていくのは間違いない。したがってリバーホールディングスの躍進も期待できるわけです」
リバーホールディングスと同じく、資源リサイクルを専業とする【イボキン】(ジャスダック:5699)にも注目。解体事業、環境事業、金属事業、運輸事業の4つを軸とし、ワンストップで資源リサイクルを行っている。
リバーホールディングス(東証2部:5690)
2021年9月1日時点株価1,365円(最低購入価格136,500円)
イボキン(ジャスダック:5699)
2021年9月1日時点株価4,475円(最低購入価格447,500円)
廃棄物は100%リサイクルが望ましい。しかし中にはリサイクルしきれない廃棄物があり、そのゴミは最終処分しなければならない。先に紹介したリバーホールディングスとイボキンも最終処分を担っているが、藤本氏が注目する産業廃棄物の処理を専業とする会社がある。静岡県に本社を置く【ミダック】(東証1部:6564)だ。
「ミダックは製造業の産業廃棄物を中心に扱い、収集運搬し、自社施設での焼却や破砕などの中間処理を経て、最終処分しています。静岡県浜松市内に県内最大級となる2つの最終処分場を持っています」
現在、同社では浜松市内に新規の最終処分場を建設中。東京ドーム約2.5杯分の廃棄物処分を可能とする施設で、2022年4月以降の稼働を予定している。
「産業廃棄物の最終処分施設は、自治体や周辺住民の理解を得なければならないため、簡単に作ることはできません。そういう意味でミダックが果たす役割は大きい。脱炭素時代に必要不可欠な会社といえるでしょう」
ミダック(東証1部:6564)
2021年9月1日時点株価4,490円(最低購入価格449,000円)
一方、自社商品のリサイクルで注目の会社も紹介しよう。名門繊維企業の【住江織物】(東証1部:3501)だ。同社は1883年創業の老舗織物メーカー。国会の赤じゅうたんを納入する会社として知られ、自動車や鉄道などの内装材事業、インテリア事業などを主力としている。
「住江織物の驚異的なリサイクル商品が、オフィスや公共施設などで幅広く使われている同社のタイルカーペットです。正式名称は水平循環型リサイクルタイルカーペット『ECOS(エコス)』。世界最高水準の再生材比率84%を実現しています」
リサイクルは商品の回収や分解などに手間やコストがかかり、再資源化した商品は値段が高くなり、品質も落ちるのが通例。だが、住江織物のタイトルカーペットは異なるという。
「リサイクルした品でもほぼ値段は変わらず、品質も落ちません。究極のエコカーペットとして人気を博しています」
今回は取り上げられなかったが、リユースも脱炭素のキーワードに挙げられる。リサイクルはゴミを分解し新しいモノ(新しい製品や同じ製品)に形を変えて再資源化をはかることだが、リユースとはひとつのモノを繰り返し使うことで資源やエネルギーを節約することを指す。リユースの関連企業、注目銘柄にも期待したい。
(取材・文 百瀬康司)
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