日本ではあまり紹介されない海外のエネルギー業界最新ニュース。EnergyShift編集部が厳選してお送りする。
Eco Wave Power、ポルトガルで最大20MWの波力エネルギー発電所を建設
スウェーデンの波力発電会社EWP(Eco Wave Power)は、APDL(A Administração dos Portos do Douro, Leixões e Viana do Castelo)と、ポルトガルで20MWの波力発電所のコンセッション契約を締結した。契約では、APDLはEWPに防波堤を25~30年間提供し、EWPはその間、発電所の建設、運転を行うというもの。
発電所は2段階で建設され、第1段階で最大2MW、第2段階で15~19MWの追加の建設を行う。
EWPのCEOであるInna Braverman氏は、「ポルトガル政府の推定では、波力発電の可能性は3~4GWある。ポルトガルが波力エネルギーのパイオニアであることに感謝する」と述べている。
波力発電の将来の可能性は、ポルトガルの電力消費の25%に相当する。また、海洋エネルギーは、ポルトガルにおいて産業輸出クラスターとして、2億5,400万ユーロの投資、2億8,000万ユーロの付加価値、1億1,900万ユーロの輸出、および1,500人の新規雇用を生み出す可能性があるという。
フランスは2028年までの国家エネルギー計画を策定、太陽光発電は44GWに
フランス政府は、2020年4月21日、国家エネルギー計画(PPE)と国家低炭素戦略(SNBC)の採用を決定した。この2つの文書は1月に発表されたものだが、新型コロナウイルスの危機と、より持続可能な世界を構築するための多くの要求があるにもかかわらず、変更されていない。太陽光発電など再エネの開発は2024年~2028年に集中し、2028年末で44GWになるとしている。一方、2023年までの取り組みは全体として先送りした形だ。
実際に、2023年までのCO2排出量は、2015年の計画である3億9,800万トン(CO2換算)に対し、新しい計画では年間平均4億2,200万トンに相当するものとなっている。これを、2024年からの計画で相殺するということだ。
太陽光発電は2023年には20.1GW、2028年には44GWになるという。また、電気自動車(EV)については、2023年には66万台、2028年には300万台の導入が計画に含まれる。また、2023年に10万台の公共充電ステーションを設置する。
一方、2035年までに電力構成における原子力の割合を50%に減らし、14基の原子炉を閉鎖するが、これは同時に6つの新しいEPR(欧州新型原子炉)の建設への道を開くものとなっている。
天然ガスについては、2028年には22%(2012年比)まで削減することを目標としている。同様に石油使用量は34%、石炭は80%となっている。エネルギー効率は、2012年比で2023年には7.5%、2028年には16.5%改善する。
新型コロナウイルスの感染拡大による不確実性にも言及しており、年末までに4,500万トンのCO2排出削減効果が推定されるが、そのリバウンドが懸念されるという。
計画の最後では、イエローベスト運動によって炭素税が凍結されたことに対し、あらためて温室効果ガス排出削減のための新たな対策を講じる必要があると明記している。
(LA FRANCE ADOPTE ENFIN SA FEUILLE DE ROUTE CARBONE POUR 2023, MAIS SES ÉMISSIONS SONT TROP ÉLEVÉES Novethic 2020/4/22)
(France makes 44 GW solar target official pv magazine 2020/4/23)
オーストリアはEUで二番目の脱石炭火力の国に
オーストリアとスウェーデンはそれぞれ最後に稼働していた石炭火力発電所を閉鎖し、EUにおいて脱石炭火力を実現した2番目および3番目の国となった。
オーストリアは4月17日にVerbund’s Mellachの石炭火力発電所を閉鎖。スウェーデンもこれに続き、Stockholm Exergi ABVäのVrtaverketにある石炭地域熱供給プラントを予定より2年早く閉鎖し、スカンジナビア諸国の中では最も早く脱石炭火力を実現したことになる。
EUではすでにベルギーが脱石炭火力を実現している。今後、以下の6ヶ国が脱石炭火力を予定している。
- フランス– 2022年
- スロバキア– 2023年
- ポルトガル– 2023年
- 英国– 2024年
- アイルランド– 2025年
- イタリア– 2025年
太陽光発電業界の景況感はドイツの太陽光発電の上限達成により崩壊
ドイツ太陽光発電産業協会(BSW)の調査によると、ドイツの太陽光発電企業の景況感は、ここ数週間で崩壊しているという。同協会によると、新型コロナウイルスの流行の影響ではなく、太陽光発電の固定価格買取制度上限である52GWが間もなく達成されるためだという。
「私たちは、これほど短期間で景況感の減少を経験したことはなかった。太陽光発電業界は上限に達することを恐れている」と、BSWのトップであるCarsten Körnig氏は述べている。コロナ危機はこれまでのところ、需要にほとんど影響を与えていなかったとした上で、「おそらく今年の夏には(52GWの)上限に達する」と述べ、既に大規模なプロジェクトの一部でキャンセルがでているとした。
ドイツの太陽光発電設置の合計容量は2020年2月に50GW近くまで上昇し、政府の上限である52GWにさらに近づいている。2019年11月、メルケル首相は上限を撤廃すると発表したが、政府はこれまでのところ、実施に向けた成果を上げていない。太陽光発電の上限や、特に陸上風力発電へのハードルは、国のエネルギー移行の足かせとなっており、国の温室効果ガス排出量削減と再生可能エネルギーの目標を危うくする脅威となっている。
(PV industry business expectations collapse due to German solar cap Clean Energy Wire 2020/4/22)
中国のEV補助金は、高級車を除外
中国は2020年4月23日、電気自動車(EV)に対する補助金の10%減額を発表した。さらに2021年に20%、2022年に30%の補助金減額を行う。現在、補助金の対象となる車種については、30万元(約450万円)以下の価格のものに限られる。これにより、テスラのモデル3は高価格のため対象外となる。この他にも、BMWやダイムラーの高級車が排除される可能性がある。
中国は2025年までに、燃料電池車などを含むクリーン自動車を新車販売台数の20%まで引き上げる計画だ。中国のクリーン自動車の売上高は、9ヶ月連続で前年同月比では減少しており、3月は前年比50%の減少となった。ただし、2月の3倍の販売台数となっており、新型コロナウイルスからの回復もみられる。
市場をけん引しているのは、中国製のテスラモデル3で、3月の販売台数の5分の1がテスラだ。テスラは今後、上海の工場で年間15万台のモデル3を生産する計画だ。
(China’s new EV subsidies disqualify luxury models from Tesla, BMW, and Daimler electrek 2020/4/23)
(Text:本橋 恵一)