サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアチブ(SBTi)、新戦略で企業の目標設定を1.5℃に設定 | EnergyShift

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サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアチブ(SBTi)、新戦略で企業の目標設定を1.5℃に設定

サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアチブ(SBTi)、新戦略で企業の目標設定を1.5℃に設定

2021年07月16日

世界中の企業がコミットメントを出しているSBTi。その目標値が引き上げられた。すでに認定を受けている企業にも対応が必要になる。

SBTiの目標設定が引き上げへ

サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアチブ(SBTi:Science Based Target Initiative)とは、科学的な根拠に基づく気候変動対策(SBT)を企業に対して求めるイニシアチブだ。

今までSBTiでは企業から提出された目標設定を元に認定を行ってきたが、その温室効果削減目標設定は、産業革命前と比べて2.0℃以下というパリ協定に沿ったものであった。その目標設定には「2.0℃目標」、「2.0℃を十分に下回る目標」「1.5℃目標」という幅があったが、今回の新戦略ではこれを「1.5℃目標」のみに引き上げる。

発表によると、2021年7月15日以降に目標を提出するすべての企業、および金融機関はこの新しい基準に合わせる必要がある。

また、今まで認証をとった企業については、2℃を大きく下回るスコープ1、およびスコープ2の目標は、企業や金融機関の検証フレームワークから段階的に削除されていく。2020年以前に目標が承認されていた企業は、2025年までに目標を更新することができる。2021年以降に目標が承認された企業は少なくとも5年ごとに目標を更新する必要がある。

1.5℃目標をすでに掲げているのは世界で653社

SBTiに認証されるまでにはコミットメント(参加の表明)を行い、目標設定を行いSBTiへ提出、認定に至る。

現在SBTiには世界で1,617の企業・金融機関がコミットメントを表明しており、そのうち認定されているのは804。その中ですでに1.5℃目標を提出し、認証を受けているのは653の企業になる。

日本では147の企業が認定(Taeget Set)を受けているが、そのうち1.5℃目標を掲げ、かつ認定を受けているのは46社になる(2021年7月15日20時現在)。つまり、101の企業は2℃目標、もしくは2℃を十分下回る目標、ということになり、目標の見直しが今後求められる。

世界全体では1,618社がコミット、813が認定、1.5℃準拠は479社になる。

たとえば米ファーストフード大手のマクドナルドは2℃目標で認定を受けているので、これから2025年までに目標を更新しなければいけない。

2014年9月に設立されたSBTiは急速に広がりを続けており、今では世界経済の約2割をカバーする企業が参加するに至っている。最新のデータによると、SBT(科学的目標値)を設定した企業の脱炭素の促進は著しい。2015年から2020年にかけて世界のエネルギー、および産業界の温室効果ガス排出量は全体で3.4%増加しているにも関わらず、有効な目標を設定した企業は温室効果ガスを25%削減している。

広がるSBTi参加企業

SBTiでは「Business Ambition for 1.5%」という温室効果ガス削減促進キャンペーンも2019年から行っており、多くの企業がすでに1.5℃を目標にしたコミットメントであるという。2021年のSBTiへの提出物(目標認定未決を含む)のうち、66%は1.5℃目標であり、その企業の時価総額は13兆ドルに及ぶ。

BUSINESS AMBITION FOR 1.5°C

今回の目標引き上げは8月9日に発表予定のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書に対する第1作業部会を前に行われた。

SBTiの理事長であり、国連グローバル・コンパクトのプログラム・チーフを務めるライラ・カルバシ氏は、「SBTiは、企業が気候危機に対処するために信頼できる目標を設定するためのデファクトスタンダードとなっています。温暖化を1.5℃に抑えるためには、1.5℃に沿ったターゲットの採用を早急に拡大し、主流化する必要があります。この新しい戦略により、企業が自信を持って気候科学に沿うことができるよう、最も強固な目標設定フレームワークを世界中の企業に一貫して提供することができます」とコメントした。

SBTiはCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト、炭素排出量見える化プロジェクト)、WWF(世界自然保護基金)、国連グローバル・コンパクト(UNGC・国連の機関)、世界資源研究所(WRI・政策研究と技術支援の独立機関)の4団体が共同で運営している。SBTiはCDPスコアなどとも密接に連動しており、日本でも導入が進んでいる。

小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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