2050年は再生可能エネルギー120%で 秋本真利 衆議院議員 | EnergyShift

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2050年は再生可能エネルギー120%で 秋本真利 衆議院議員

2050年は再生可能エネルギー120%で 秋本真利 衆議院議員

2020年12月08日

シリーズ:エネルギー基本計画を考える

2021年度には、国のエネルギー政策の根幹ともいえる「エネルギー基本計画」が改定されることになっている。今度の改定にあたっては、菅首相が宣言した「2050年カーボンニュートラル」(脱炭素)を反映したものとなるだろう。ではそれをどのように達成していくのか。各界の関係者に、次期エネルギー基本計画を語ってもらうシリーズ。今回は、かねてより再生可能エネルギー推進政策を掲げてきた、秋本真利衆議院議員にお話しを伺った。

2050年、再エネ100%に

― 2020年10月26日、菅首相が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。最初に、このときにどのように思ったのか、お聞かせください。

秋本真利氏 国際社会の流れからすれば、当然のターゲットですが、我が国にとっては初めて掲げる形なので、最初の目標設定として良かったと思います。とはいえ、これから目標は前倒ししていくことになるでしょう。すでにEUは前倒ししています。

― ご自身は、2050年カーボンゼロを意識したのはいつ頃だったのでしょうか。

秋本氏 数年前から、2050年カーボンニュートラルを目標にすべきだと発言してきました。ただ、当時は自民党内でも、「そんなことできるのか?」と疑問に思われていました。それが今回は大きく変わったと感じています。

― さて、2021年には、エネルギー基本計画が改定されます。第6次になりますが、どのような内容であるべきか、秋本先生のお考えをおうかがいしたいと思います。最初に、電源構成についてです。現行の基本計画では、2030年には再エネは22~24%となっています。

秋本氏 2030年について言えば、最低でも再エネ44%だと考えています。とはいえ、10年後の目標でいいのかどうか。2040年、2050年の目標を掲げるべきではないでしょうか。その上で2050年は再生可能エネルギー100%を目指すべきだと考えています。

無理に思われるかもしれませんが、10年前に現在の世の中を予測していた人はいないと思います。急速な社会の変化を考えると、再エネ100%は十分に実現してしまうのではないかと考えています。というよりも、実際には110%、120%を目指すべきではないでしょうか。

余剰電力を使って水素を製造し、これを燃料電池や水素発電で利用して、調整電源にすることができます。2050年はこういった世の中になっていくのだと思います。

例えば洋上風力の場合、沖合に行けば行くほど送電コストやロスが大きくなりますが、これをオフグリッドにして、水素製造に利用したらどうでしょうか。こうした大胆な発想や取り組みがあって、再生可能エネルギー100%になっていくのだと思います。


秋本真利衆議院議員

容量市場にはCO2排出量で足切りを

― 一方で、石炭火力発電をいかに退出させていくのかという課題もあります。

秋本氏 石炭火力発電は2030年代にはなくなると思います。

今年度からオークションが始まった容量市場ですが、現在のしくみは化石燃料の存続につながってしまいます。そこで、小泉環境相と河野行革相に、容量市場において温室効果ガスについての考え方を導入するよう申し入れました。例えば、550g/kWh以上あったら、札入れできないようにする、といったことです。

― 原子力についていえば、なかなか再稼働が見通せない状況にあります。また、新増設も難しいと思います。これについても、目標を見直すべきでしょうか。

秋本氏 私自身、積極的な再稼働支持ではありませんが、原子力のサンクコストを考えた場合、現在ある発電所は運転してもいいと考えています。もちろん、安全性を第一に、原子力規制委員会の審査をクリアした原発のみです。それらについて、40年ルールの中で使い切るということでいいと思います。サンクコストを考えたら安い電源であることは間違いないですから。

ただし、2050年に向けた新増設やリプレイスには大反対です。廃棄物の問題もありますし、経済合理性もありません。

先日、電気事業連合会や日本経団連から、2050年に原子力を残すような意見をおうかがいしました。そのときに私から、「kWhあたりいくらで発電できるのか?」と質問させていただきましたが、答えていただけませんでした。

2025年には太陽光発電の発電単価は7円/kWhが目標です。風力発電は2030年に8~9円/kWhです。これが政府のオフィシャルターゲットです。さらに、2032年以降は、卒FITの電源が入ってきます。2050年には再生可能エネルギーはさらに価格が下がるでしょう。では原子力はいくらになるでしょうか。

― カーボンゼロにあたっては、再生可能エネルギー以外にも、CCUS(CO2回収利用・貯留)技術が期待されています。

秋本氏 CCUSによる火力発電所というのは、経済合理性がないと思います。例えば、石炭火力で5円/kWhで発電できたとしても、CCUSのコストがかかり、10円/kWhを超えてしまうでしょう。唯一あるとすれば、空気中のCO2を回収するCCUSでカーボンマイナスにするということでしょう。

化石燃料を使っていては国際競争力ゼロに

― 第5次エネルギー基本計画までは、2030年目標で語られてきました。しかし、目標年度についてもこれでいいのか、という議論があると思います。2010年の第3次エネルギー基本計画から、目標年度が変わっていません。

秋本氏 ご指摘の通り、少なくとも2040年の目標を掲げるべきだと思います。また、そうした目標を掲げないと、本気度が伝わりません。企業はエネルギー基本計画といった国の計画をもとにして、投資判断していくのですから、影響は大きいと思います。

― 2040年、2050年の目標を達成するにあたって、どのような政策に力を入れていくのか、どのようなことをエネルギー基本計画に盛り込むべきでしょうか。

秋本氏 今、取り組むことができることは、すべて取り組んでいくということが必要だと考えています。どの電源ということではなく、すべてです。
例えば、太陽光発電のコストが下がっているとしても、2050年には現在の5倍から6倍は導入していないといけない。そのためには、現行法ではなかなか導入が難しい荒廃農地の有効活用ができるようにしなくてはいけない。駐車場に太陽光発電を設置していくには、建築基準法の見直しも必要かもしれません。こうした規制緩和が必要になります。

また、省エネルギーや再生可能エネルギーに国の総力を挙げて取り組むくらいの力の入れ方をしていかないと、国際競争力がキープできないと思います。

日本ではいまだに、大規模集中型の電源の方が電気は安いと思われています。しかし、欧米ではどんどん再生可能エネルギーが安くなっています。10年後、15年後、日本だけが化石燃料を使っているようだったら、日本の国際競争力はゼロになってしまいます。
それでは、目先だけ、自分たちだけのことしか考えず、30年先を考えなかったのではないかと、次の世代に言われてしまうでしょう。まして為政者は50年先、100年先を見ないといけません。国家としてのビジョンとターゲットを持つべきです。

洋上風力は日本の外交力の見せどころ

― 規制緩和に関しては、最近注目されているのが、オフサイトのPPAです。RE100にコミットする企業は、欧米ではPPAによって再生可能エネルギーを調達していますが、日本では進んでいません。

秋本氏 日本でもRE100に限らず、多くの企業がクリーンな電気を買いたいと考えています。そのために日本では、PPAのような電気の相対取引を行い、トラッキングがきちんと機能する必要があると考えています。非化石証書やJクレジットなどの環境価値はデジタル化し、トラッキングを容易にすれば、PPAを行いやすくなると思います。

― 先生は再生可能エネルギーのうちでも、とりわけ洋上風力発電の推進に力を入れてきたと思います。

秋本氏 洋上風力発電はかなり高いポテンシャルを持っていると思います。海洋国家である日本においては、EEZ(排他的経済水域)でも洋上風力発電ができるように、国際社会との調整も行っていくべきでしょう。そこでは日本の外交力の見せどころとなってきます。

逆に、こうした分野に取り組まないでいると、中国や米国、欧州が先に広い面積で洋上風力を先行させることになります。
そうした問題意識から、推進に力を入れています。

― カーボンゼロを目指すにあたって、再生可能エネルギーそのものだけではなく、これを上手に使っていく、例えばVPPなど、いわゆる送配電系統の運用についての技術も必要になってきます。しかし、現状では、国会議員から、この分野の発言が少ないことが気になっています。

秋本氏 電力広域的運営推進機関がスペインなど海外でどのように送配電系統が運用されているのか、調査をしています。その上で、この分野には高度なデジタル技術が必要だと思っています。その点では、今度政府でデジタル庁が発足しますから、送配電系統運用のデジタル化も期待したいです。

一方、送電事業者については、この国にこんなにたくさんの事業者が必要なのか、ということは疑問に感じています。例えば、洋上風力が拡大していけば、海底直流送電線の拡充が必要になります。さらに海外と系統接続することもあるかもしれません。こうした状況に対応するためには、送電事業者を統廃合する必要があると思います。例えば、東日本なら東京電力、東北電力、北海道電力の送電会社を1つにまとめてはどうでしょうか。その方が透明性を確保することができるとも思います。

あるいは、デジタル化を進めるとしても、東京電力ができて北海道電力ができない、ということでは困ります。過疎地域の送電網についても、きちんと整備する必要があるし、事業者にはそれだけの体力も必要です。

また、海底直流送電線を整備すると、東西の50Hz/60Hzという周波数の違いも関係なくなります。特に北海道から再生可能エネルギーを送電する場合、送電事業者は限られてくるのではないでしょうか。

(Text:本橋恵一 Photo:小川直美)


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秋本真利
秋本真利

自由民主党 衆議院議員(千葉県第九区選出) 成田高校卒業、法政大学法学部卒業。 第46回総選挙にて当選、第47回総選挙にて当選、第48回総選挙にて当選。 国会対策副委員長、選挙対策副委員長、元国土交通大臣政務官、自民党青年局次長、自民党エネルギー政策議員連盟事務局長、自民党再生可能エネルギー普及拡大議員連盟事務局長、自民党航空産業振興議員連盟事務局次長、エネルギー政策勉強会会長。

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