そうなると、次に気になるのは充電場所の問題だ。
中でも大きな課題として挙がるのが、アンケートでも聞こえてきたが、自宅に充電設備がないパターンで、特に集合住宅はその設備を整えるのが難しいとされてきた。いつでも自宅で充電できて、補給のために出かける必要がないことがメリットの一つであるEVにおいて、この結果は本末転倒と言えよう。
分譲・賃貸、どちらのマンションの駐車場に充電設備を設置しようとした場合でも、同じマンションに住む人たちやオーナー・管理者の承認を得る必要がある。EVを所有する当人はともかく、自分たちが利用していないうえ、現時点で普及していると言いがたいEVのために、費用と手間をかけて充電インフラを整えることには高いハードルが付きまとうだろう。
充電設備のために手間と投資費用、設備の維持管理費がかかる上、現状では、利用したい人も多くは見込めない。普及率の低さが、導入のハードルを上げ、それが普及率に歯止めをかける。そんな悪循環に陥りかけているといえる。
しかし、今、そうした状況を打開すべく、多くの企業が集合住宅向けの電気インフラ設備拡充に向けて動き出している。
中でも、日産自動車の動きは先進的だ。同社は2010年に世界初の本格量産電気自動車「リーフ」を発売し、2019年にはEV史上初の販売台数40万台を達成するなど、EV普及にかけては初期から動き出して、成果を挙げている。
日産はEV販売と共に、その充電設備の充実にも尽力しており、2010年11月には「賃貸集合住宅の駐車場におけるEV充電設備に関する共同検討について」を発表している。都市再生機構(UR)と共同で、横浜市のUR賃貸住宅にEV用充電設備を設置して、実地検証を行った。また、2017年にはNEC、大京アステージと「分譲済みマンションにおけるEV充電器を設置する実証プロジェクト」もスタートさせている。
日産、NEC、大京アステージの3社による共同プロジェクトは「今居住するマンションに充電設備を設置できないため、EVの購入に踏み切れない」というマンション居住者の声に対応するためのプロジェクト。リーフを購入した顧客が居住するマンションの駐車場へ普通EV充電器を初期費用実質負担ゼロで設置し、月々のサービス基本料と電気料金のみで利用可能とした。その後、実験結果は公表されていないものの、集合住宅におけるEV充電設備導入のための先進的な取り組みとして話題を集めた。
NEC「『分譲済みマンションにおけるEV充電器を設置する実証プロジェクト』を開始」より
最近では、東京ガスが始めたEV充電サービス「EVrest(イーブイレスト)」がある。スマートフォンアプリなどの利用により、戸建て住宅と遜色ない利便性を実現したのが特徴だ。
料金については、充電量に応じて課金する基本料0円のプランのほか、充電量・走行目安に応じた定額制プラン5種類を用意している。現住の集合住宅に充電環境が整ってない利用者についても、駐車場や電気容量の状況、充電設備設置箇所数や場所等の要望に合わせて、管理組合や集合住宅のオーナーへ最適なプランを提案。補助金制度の説明や、導入時に必要な諸手続きについても東京ガスがサポートしていくとしている。
サービス提供は、東京都、千葉県、群馬県、神奈川県、茨城県、山梨県、埼玉県、栃木県、静岡県(富士川以東)から始まり、順次拡大していく予定。事業開始から3年をめどに、千台程度の設備導入を目指す。
東京ガス「電気自動車充電サービス「EVrest(イーブイレスト)」を開始」より
充電スタンドは全国で2万1,000ヶ所まで拡充 郵便局やショッピングセンターでも…次ページへ
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