洋上風力、大型火力45基分導入に向け1,195億円 経済産業省、2兆円基金から | EnergyShift

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洋上風力、大型火力45基分導入に向け1,195億円 経済産業省、2兆円基金から

洋上風力、大型火力45基分導入に向け1,195億円 経済産業省、2兆円基金から

2050年脱炭素に向け、政府は再生可能エネルギーを最大限導入し、その切り札として2030年までに太陽光発電の主力電源化、2040年に洋上風力を大型火力45基分導入する目標を掲げている。実現に向けて、経済産業省は8月31日、脱炭素技術の開発を支援する総額2兆円の基金から、洋上風力の低コスト化に1,195億円、次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト開発に498億円をあてる方針を決めた。

洋上風力、経済効果は2兆円

経産省では脱炭素実現に向け、CO2を排出しない再エネを2050年に電力全体の50〜60%に引き上げるという参考値を公表している。その切り札と位置づけられたのが洋上風力だ。

毎年100万kWずつ増やし、2030年に1,000万kW、そして2040年までに3,000〜4,500万kW、大型火力45分に相当する洋上風力を導入する方針だ。

しかし、実現には課題も多い。

イギリスが1,043万kW、ドイツは769万kWを導入するなど、欧州を中心に洋上風力の導入は拡大しているが、日本の導入量はわずか1.4万kW、電力の0.6%をまかなうに過ぎない。

日本の普及が遅れた背景には、漁業者など利害関係者の同意や環境アセスメントに時間がかかってしまう。これまでの政府目標が低く、事業者の導入意欲があがらなかったなどの課題がある。

だが、日本の国土は山が多く、太陽光発電や陸上風力をさらに大規模に導入しようとしても、適地は限られ、周辺環境への配慮もいっそう必要となる。その一方で、海は障害物がなく、安定して強い風が吹く。四方を海に囲まれた日本にとって、洋上風力は大量導入が可能だと期待されているわけだ。

さらに欧州では30年前から導入が進み、風車の大型化などを通じてコストが劇的に低下しており、1kWhあたり10円を切るプロジェクトが登場。また、洋上風力の構成機器、部品点数は数万点にのぼり、日本国内でサプライチェーンを構築できれば、その経済波及効果は非常に大きい。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、2030年の世界導入量は228GW、うちアジアが126GWとなり、年間投資額は61億ドル(約6.6兆円)、2050年には1,000GWとなり、うちアジアが613GWを占め、投資額も100億ドル(約11兆円)になると試算する。急成長が見込まれるのが、中国や台湾、韓国を中心としたアジア市場だ。経産省は、日本市場全体とアジアでシェア25%を獲得すると、その経済波及効果は2030年約1兆円、2050年に2兆円になると見込んでいる。

劇的なコスト低減が進む洋上風力を大量導入することで、脱炭素とともに経済成長も果たす、これが経産省が描くシナリオだ。

ただ、課題は少なくない。

課題は技術、人材の再構築

政府は風が強く、漁業者の理解を得られた海域を30年間、洋上風力に使用できる促進区域に指定する、再エネ海域利用法を2019年に施行し、長崎や秋田、千葉の5海域を促進区域に指定している。このほか、4海域を有望な区域とし、青森、新潟、北海道、山形などの海域でも促進区域に向けた準備を進めている。

さらに海域の風況や地質調査を政府主導で行ったり、経産省と国土交通省にまたがる審査を一本化するなどして、事業者を支援する方針だ。

しかし、これだけでは目標達成に届かない。

また、技術や人材の再構築にも取り組まなければならない。

かつては日立製作所や三菱重工など日本勢も風車製造を手がけていたが、撤退し、日本国内には製造拠点がない状態で、技術も人材も散逸してしまっている。世界シェアを握るのは欧州のシーメンスガメサやベスタス、それに中国勢が続くという格好だ。特に世界ではさらなる稼働率の向上、コスト低減を目指し、風車が東京タワーに迫るほどの大型化か進む見込みで、日本メーカーだけでは事業化が困難な状況だ。

さらに、日本は遠浅の海が少ないため、風車の土台を海底に固定する「着床式」だけでなく、海上に風車を浮かせる「浮体式」の技術開発も求められている。また、台風や地震、落雷、低風速といった日本やアジアの自然条件にあった風車をつくり出すことも欠かせない。

メンテナンスも重要だ。専用船も必要なうえ、維持費もかかり、全体コストの36%を占める。メンテナンスの高度化や人材育成が欠かせない。また、海の上で発電した電力を陸地に送るための海底ケーブルなど新たな送電網の整備も必要だ。

そこで経産省は8月31日に開催した第2回産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 グリーン電力の普及促進分野ワーキンググループにおいて、2兆円基金から、洋上風力の低コスト化に向け最大1,195億円を支援することを決めた。

浮体式、2030年までに50〜100MW2基建設

経産省はサプライチェーンの再構築に向けて、2040年までに国内調達比率を60%に、また着床式の発電コストを現状の1kWhあたり29円から、2030年までに8〜9円とする目標を掲げている。

実現に向けて、2025年までに日本やアジアの自然条件に対応した風車開発はじめ、発電機や増速機、ベアリングなど日本企業が技術力を持つ部品の大量生産、低コスト化を図る。また、2023年をめどに海底ケーブルの開発やメンテナンスの高度化を確立する計画だ。

さらに最大850億円を投じて、2030年までに50〜100MWクラスの浮体式洋上風力を2基建設し、アジア市場でもシェアを取れる低コスト化と商用化を目指す。

ペロブスカイト太陽電池、ビル200棟に搭載

経産省は洋上風力への支援とともに、次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト開発に最大498億円をあてる方針を決めた。

ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の材料を用いた次世代太陽電池だ。その特徴は、発電層を含む厚みが現在、95%以上のシェアを持つシリコン系太陽電池と比べて100分の1と非常に薄く、軽くて曲げることができるため、ビルや住宅などの屋根や壁面、窓ガラスなど、これまで重くて設置できなかったさまざまな場所への導入が期待されている。

このほか、少ない製造工程でつくれる。主要な材料であるヨウ素の生産量を日本が世界シェアの30%を持つ。さらに、直近7年間で変換効率が約2倍に向上しており、これはシリコン系太陽電池の約4倍のスピードだ。

日本ではパナソニックや東芝、リコー、富士フイルムなどが開発を進めており、モジュールサイズの変換効率で17.9%という世界最高記録を持つ。

各種国際機関の試算によると、太陽光発電は世界全体で2030年から2050年にかけて年間120GWのペースで導入され、このうち次世代太陽電池の市場規模は2030年約500億円、2050年約5兆円になる見込みだ。

そのため、各国がペロブスカイトをシリコンに対抗しうるゲームチェンジャーと位置づけており、開発競争が激化しつつある。

アメリカはNREL(国立再生可能エネルギー研究所)が中心となり「米国先進ペロブスカイト製造コンソーシアム」を設立し、開発に取り組む。欧州も基盤技術や製造技術の開発を進めている。しかし、ペロブスカイトには寿命が短い、大面積化が難しい、変換効率がまだまだ低いといった課題がある。

そこで、経産省では最大298億円を投じ200棟のビルにペロブスカイトを搭載するなど、合計498億円をあてることで、2030年までに1kWhあたりの発電コストで14円以下を目指す。この水準は直近の業務用電力価格並みだ。

日本はシリコン系太陽電池で2000年代まで世界を席巻したものの、中国勢に敗れ、撤退した過去を持つ。陸上風力でも国内市場が立ち上がらず、技術や人材が散逸してしまった。

洋上風力やペロブスカイト太陽電池は同じ過ちを繰り返すことなく、グローバル競争に打ち勝てるのか。経産省には目標に向けた進展をチェックしながら、有効な支援策を継続的に実施していくことが求められている。

Text:藤村朋弘)

EnergyShift編集部
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