第6次エネルギー基本計画と再生可能エネルギー導入目標を考察する ソーラーシェアリングの可能性 前編 | EnergyShift

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第6次エネルギー基本計画と再生可能エネルギー導入目標を考察する ソーラーシェアリングの可能性 前編

第6次エネルギー基本計画と再生可能エネルギー導入目標を考察する ソーラーシェアリングの可能性 前編

2021年10月05日

国の中長期的なエネルギー政策の指針となる、第6次エネルギー基本計画の案がまとまり、2021年10月4日にはパブリックコメントも締め切られる。新しい基本計画では、アップデートされた2030年の温室効果ガス排出削減目標46%削減と、それに対応した非化石発電の割合が注目される。そこではソーラーシェアリングは大きな役割を果たすことが求められるが、そもそも計画に問題はないのか。2回に分けて、千葉エコ・エネルギー代表取締役の馬上丈司氏の論考をお届する。今回は馬上氏のエネルギー基本計画についての考察編をお届けし、次回、その中でのソーラーシェアリングへの期待と課題などをご紹介する。

連載:これからのソーラーシェアリング

カーボンニュートラルに不可欠なソーラーシェアリング

昨年来の我が国における2050年カーボンニュートラル目標の設定とそれに伴うエネルギー政策の方針転換を受け、年始の記事ではゼロエミッション達成に向けたソーラーシェアリングのポテンシャルについて整理を行った。

そして現在、第6次エネルギー基本計画の議論が最終版となり、2030年の新たなエネルギー需給の目標が明らかになった現在、目先の目標達成に向けてソーラーシェアリングとひいては太陽光発電が果たすべき役割について改めて論じておきたい。

【参考】ゼロエミッション達成に向けたソーラーシェアリングのポテンシャル

混迷を極める第6次エネルギー基本計画案

エネルギー転換に向けた個別施策である太陽光発電やソーラーシェアリングの話をする前に、第6次エネルギー基本計画の素案における課題を指摘しておく。2030年の電源構成における再生可能エネルギーの比率は36~38%程度という表現に着地しようとしているが、各電源種の目標を積み上げた結果として下記のような数字が示されている。


再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会(第35回)資料より

ここでは2030年に向け、太陽光発電及び風力発電が現行ミックス水準より大きく導入量を拡大していくことが示されている。FIT制度下で導入が進んできた規模から更に太陽光発電は2倍以上、風力発電は陸上+洋上で5倍以上という数字であるから、この目標を掲げる以上はFIT制度を超える劇的な普及促進政策の追加が期待される。一方でこの目標には懸念点があり、果たしてこの目標水準で本当に足りるのかという懸念である。

新たなエネルギー需給の見通しでは、これらの再生可能エネルギー電源に加えて、原子力発電を電源構成の20~22%という比率に高めることで59%程度の非化石電源比率を達成するとしているが、この目標値が2030年に向けた気候変動対策目標の達成に向けたものと考えると必ず達成していかなければならないものである。

しかしながら東日本大震災の直前期、2010年度の原子力発電による発電電力量が2,882億kWhであり、その70%程度に相当する2,000億kWhを2030年までに回復する、加えて言えば2019年度時点(638億kWh)の3倍まで増やすというのは、原子力発電を取り巻く現状から現実的とは言えない目標値ではないか。

そして、今回のエネルギー基本計画の素案では再生可能エネルギーの拡大を図る中で、「可能な限り原発依存度を低減」するとしていることからも、「原子力発電の導入目標未達分を再エネ発電で賄う」ことはあっても「再エネ発電の導入目標未達分を原子力発電で賄う」選択肢はないと言える。

エネルギー消費の7割は熱・燃料需要だが

また、電源構成の話ばかりが取り沙汰され、エネルギー基本計画の議論において熱や燃料に関する施策が置き去りになっていることも日本のエネルギー政策の未熟さを示すものと言わざるを得ないが、ここにも一つ懸念点がある。

日本の最終エネルギー消費に占める電気の割合は26%程度にとどまり、残りの74%は化石燃料を中心とした熱や燃料であるため、本来であれば絶対量の多いこちらを重視した政策議論がもっと盛り上がる必要がある。

そして、熱や燃料分野における温室効果ガス排出対策の一つが、電気自動車に代表される電化の推進と再生可能エネルギー電源の活用であるにもかかわらず、政府は2030年に向けたエネルギー需給の見通しでは電力比率を30%にするとしながら、電力需要全体に対して「省エネの野心的な深掘り」という数値を作り出してしまった。

そのため、熱や燃料からの電化を進めつつ電力需要を現在より20%減らすという、矛盾した目標値になっている。ここはむしろ最大限の電化によって電力需要が増えたとしても、気候変動対策目標の達成に向かうというシナリオも示されるべきではないか。

このように第6次エネルギー基本計画の議論で出てきている数値目標を見ていくと、原子力発電の発電電力量が目標を下回ったり、電化の推進によって電力需要が増加したりする可能性を考慮した場合、再生可能エネルギー電源の導入目標は2030年時点で少なくとも50%程度を目線として置いておく必要があるのではないかと推測している。

そうでなければ、2020年代半ばの次のエネルギー基本計画が議論される頃には、2030年目標の達成に向けて打つべき手がないという状況を生じさせてしまうことが懸念される。

こうした再生可能エネルギー導入目標の更なる上積みが必要と考えられる中で、ソーラーシェアリングを含む太陽光発電の見通しについて、次回整理することとしたい。

(後編に続く)

馬上丈司
馬上丈司

1983年生まれ。千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役。一般社団法人太陽光発電事業者連盟専務理事。千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し、日本初となる博士(公共学)の学位を授与される。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。2012年10月に大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立し、国内外で自然エネルギーによる地域振興事業に携わっている。

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