Hitz (日立造船) 脱炭素の豊富なプラント技術、さらに全固体電池にも注目 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(12) | EnergyShift

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Hitz (日立造船) 脱炭素の豊富なプラント技術、さらに全固体電池にも注目 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(12)

Hitz (日立造船) 脱炭素の豊富なプラント技術、さらに全固体電池にも注目 -シリーズ・脱炭素企業を分析する(12)

「脱炭素企業分析」シリーズ、第12回は、日立グループでもなく、造船事業もない日立造船、通称Hitzである。最近は、世界最大級の全固体電池を開発し、注目を集めたが、それ以外にも豊富な脱炭素技術を持つ。どんな技術があるのか、今回はその点に注目していきたい。

エナシフTV「脱炭素企業分析」シリーズ

中期的に上昇傾向 日立造船の株価と業績は

2018年暮れから2年間低迷した後、2020年暮れに急騰、現在は当時のほぼ2倍の株価となっている。

中期的な上昇傾向となった理由は2つある。1つは2020年末にドバイの廃棄物発電プラントを受注したことが好印象を与えている。そしてもう1つは、近年注目されている水素関連技術だ。具体的には、日立造船の持つ水の電気分解のプラントに関する技術が評価されたと考えられる。

最も、今年に入ってからの急上昇は、3月に展示会で発表された、世界最大級の全固体電池が影響しているのだろう。実際に全固体電池は世界中が非常に注目しており、トヨタ自動車などさまざまな企業が開発を進めている。

さまざまな技術を有する日立造船だが、基本的にはエネルギーインフラの会社だと考えていいだろう。

 

一方、業績だが、ここ数年は4,000億円規模の受注高、売上高で、安定して推移しているといえるだろう。売上の約7割が環境・プラント事業であり、また、海外事業の比率は約3割。

業種や事業規模に比して、海外事業の割合が3割というのは少ないと感じるが、この点については、後述したい。

日立造船からHitzへ

日立造船の創業は、1881年までさかのぼる。個人事業の大阪鉄工所として創業したが、創立者は日本人ではなく北アイルランド出身のE. H. ハンター氏。その後、1934年に現在の法人が設立・改組され、日立グループとなり、1943年には日立造船に商号を変更した。しかし、戦後の1946年に財閥解体の影響で日立グループから離脱し、現在に至っている。

1965年には、大阪市で日本初の大型発電設備付きごみ焼却施設を建設したが、この分野が後の事業の柱の1つとなっていく。その後、1996年には電力卸供給事業に参入しているが、ごみ焼却場の電源を使えることが強みだ。

2001年にはサウジアラビアで、海水を真水に変えるプラントを建設。この技術が後の水を電気分解して水素をつくる事業につながっていく。

2002年には、造船事業をユニバーサル造船に移管し、日立造船としての造船は、船舶のエンジン製造など一部を除き、終了することになる。日立でも造船でもないことから、併記ネームをHitzとした。なお、ユニバーサル造船は現在、JFEホールディングス傘下のジャパンマリンユナイテッドに吸収されている。

脱炭素を目指す、日立造船の製品・サービスとは

日立造船のエネルギー分野の事業で最も大きいウエイトなのは、ごみ焼却施設だろう。ほかにも汚泥を発酵させてメタンを作るメタン発酵システムがある。

一方、発電設備自体も扱っており、ロールスロイスやGE(ゼネラル・エレクトリック)、バルチラなどの発電機を海外から輸入、国内で扱っている。

風力発電事業については、北九州沖でのNEDOの3MW級の洋上風力発電実証機に参画しているが、日立造船としての優位性が発揮できるかどうかは未知数だ。

サービスという点では、小売電気事業にも参入している。調達先の4分の3は廃棄物発電となっており、供給しているのは、年間約4億kWhだ。また、供給量の半分は再エネ100%の電気である。

下図は電源種区分をしたグラフだが、廃棄物発電こそ4分の3であるものの、FIT電源となっている分については、非化石証書なしでは再エネと見なされないので、結果として再エネが半分ということになる計算だ。

その他の事業としては、船舶用機器、プラント用機器、半導体製造用機器に加え、加速器という最先端の実験に用いられるような器具の制御機器も取り扱っている。

一方、社会インフラとして橋梁、シールド掘進機、電解装置・水素発生装置も製造している。

素材の分野ではカーボンナノチューブなども製造している。このカーボンナノチューブが全固体電池の開発につながってくる

意外なところで、かつては杜仲茶も製造していた。これはトチュウの果実からポリイソプレンが抽出されるためで、ポリイソプレンは形状記憶などの性質を持つ素材。果実を扱うのだから、葉を用いて杜仲茶も展開しよう、ということで販売していた。この事業は2002年に小林製薬に譲渡され、現在に至っている。

脱炭素と経営ビジョン「Hitz 2030 Vision」

日立造船では、長期ビジョン「Hitz 2030 Vision」を設定している。その内容としては、基本的には現在の延長で進めていくというものだ。

クリーンなエネルギーとして、風力やバイオマスに取り組んでいるので、これを推進するということであり、クリーンな水もプラントなどで実践してきた。クリーンなエネルギーとクリーンな水という、2つのインフラ事業は、今後も必要性は増す一方である。

新たに開発する技術としては、グリーン水素など原料としてメタンを合成する、いわゆるメタネーションが注目される技術だ。メタンであれば都市ガスのインフラがそのまま使えるという利点がある。この他にも、CO2を原料として使う、CCUの技術開発も進められている。

中期経営計画では、今後も4,000億円レベルの受注・売上げを維持する一方で、営業利益率を現在の5%から10%に引き上げていくとしている。利益率をあげていくということは、同じ売上げであっても価値の高い仕事をするということ。どのように価値を高めていくのかが注目される。

一方、日立造船の事業を通じた脱炭素だが、グラフが示すように、CO2排出削減量について、2019年度末で1,518万トンとなっているものに対し、2022年度末には2,206万トン、2030年度末には約4,000万トンの削減目標を立てている。

日本のCO2排出量は12億トンなので、これに比しても1社での削減量としては大きい

グラフで注目されるのが、赤色で示された部分だ。中国・インド・東南アジアでの廃棄物発電(ライセンシー含む)が大きく増加している。日立造船の海外事業の売上は約3割だということを述べたが、今後は海外事業の売上げが伸びていかないとこのグラフのようにはならない。いかにして廃棄物発電を海外に定着させていくかが、日立造船の海外展開において重要なところだ。

注目は全固体リチウムイオン電池

最後に、全固体リチウムイオン電池についても紹介しておく。

全固体電池の特徴は、同じリチウム電池でも液体を使ってないので、液漏れせず、液体を入れる容器が不要なため、小型化が可能であるということだ。また、-40℃~100℃と、高温でも作動し、発火もしないので安全性が高い。

2021年3月の展示会で最大級の全固体リチウム電池を発表したことで、このときの株価が急上昇したようだ。

とはいえ、最大級といってもセルのサイズはスマホよりちょっと大きいくらい。今後は、特殊環境用、医療向け、次世代自動車用電池などに向けて、サイズをさらに拡大していくことが課題だ。

2021年2月にはJAXAと宇宙での実用化に向けた実証の実施も決定しており、日立造船としても非常に期待のかかる分野である。

まとめ

全固体電池が大化けするかどうかは未知数だ。トヨタ自動車、村田製作所、海外企業とライバルも多い。一方、水素関連事業については、いかにしてコストを削減するかなど、商用化に向けた課題は多い。

こうした日立造船にとって、現在の脱炭素事業の中心は廃棄物発電であるといえる。サーキュラーエコノミーの時代に、海外市場でどこまで拡大できるかが、もっとも重要だ。

ただし、廃棄物発電においては、一方で廃棄物そのものを減らすことも必要だ。そのことと、廃棄物発電の拡大の両立は、きちんと考えていかなくてはいけない。

そして、廃棄物発電を補完する形で、風力発電とバイオマス発電があるという構図だ。

廃棄物を減らしていく流れの時代の中で、他の再エネを拡大させつつ、廃棄物発電とバランスを取りながら成長していくことが、この会社にとっては非常に重要となってくるだろう。

(Text:MASA)

 

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もとさん(本橋恵一)
もとさん(本橋恵一)

環境エネルギージャーナリスト エネルギー専門誌「エネルギーフォーラム」記者として、電力自由化、原子力、気候変動、再生可能エネルギー、エネルギー政策などを取材。 その後フリーランスとして活動した後、現在はEnergy Shift編集マネージャー。 著書に「電力・ガス業界の動向とカラクリがよーくわかる本」(秀和システム)など https://www.shuwasystem.co.jp/book/9784798059020.html