Energy×Designによる新価値創造 -国内外デザイン活用事例5選- | EnergyShift

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Energy×Designによる新価値創造 -国内外デザイン活用事例5選-

Energy×Designによる新価値創造 -国内外デザイン活用事例5選-

2020/02/17

デザインやアートはもう外見やパッケージの話だけではない。新しい価値として、デザインをより大胆に、より柔軟に取り入れているプロダクトが世界中に出てきている。では、エネルギーや電力には? パッケージングできないと考えられているエネルギーというプロダクトに、デザインをどのように応用できるのか? その事例とアイデアを、エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」の樋口悟氏が紹介する。

デザインとアートを、エネルギー業界でも経営レベルで取り込む

いま、世界のビジネスシーンでは、新たな価値を生み出すためにデザイン&アートを、製品を超えて経営レベルで取り込もうとするトレンドがある。
エネルギー業界でも、アイスランドにはLarsEn Energy Branding(リンク:https://larsen.energy/)というエネルギー業界向けのブランドコンサルティング企業が存在する。

LarsEn Energy Brandingは「CHARGE Energy Branding」(リンク:https://branding.energy/)というエネルギー・ブランディングに特化したイベントを開催しており、そこにはEnelやIKEAのような欧米メガカンパニーが参画・支援し、様々なトピックで講演やアワードが実施されている。

CHARGE Energy Brandingイベントの様子

また、デンマークの世界有数のデザインコンサルティング企業のCIID(リンク:http://ciid.dk/)は、SDGsや気候危機を背景に、従来のテクノロジーによるイノベーションから「生態系中心のイノベーション(Life-centred innovation)」をグローバル企業に提案し、自らもコスタリカに拠点を作り再エネ関連のプラットフォームを設計している。

さらに、マッキンゼー(米)の調査によると、デザインを経営に活用している企業は平均と比べ、売り上げの伸びが32%もアップし、株主へのリターンも56%高くなっているという。

これらの流れを見ていくと、今後、日本のエネルギー業界でも間違いなく「デザイン」を経営・事業戦略・プロダクト開発に取り込む流れは強まるだろう。そこで本記事ではエネルギー業界にデザインの視点を取り込むヒントになるような5つの事例を紹介する。

5つの海外事例と応用アイデア

事例01:プロダクトのデザインおしゃれすぎる球体型蓄電池メーカー Ampere Energy/スペイン(バレンシア)

URL:
https://ampere-energy.com/
参考URL:
https://togetter.com/li/1401811

Ampere Energyの蓄電池

ー概要 Ampere Energyのビジョンは「Our energy moves the world」。"Sphere S Series”という球体型蓄電池を製造している。連携するスマホアプリのデザインも秀逸。AIを活用した蓄電池充放電自動制御も提供している。 住宅用以外にも産業用向けのカスタマイズなどソリューションやエンジニアリングのリソースも提供している。

ー応用アイデア 日本の家庭用蓄電池もスペック・価格だけではコモディティ化が必然である。日本の蓄電池メーカーとともに「部屋において自慢できる心地よいデザインの蓄電池」をプロデュースできないか? これは蓄電池以外でも応用できる。

事例02:電力のデザイン世界初「ヴィーガン電力」を提供する新電力Ecotricity/英国(グロスターシャー州)

URL:
https://www.ecotricity.co.uk/
参考URL:
https://ideasforgood.jp/2018/07/14/ecotricity-vegan-energy/

ー概要 Ecotricityのコンセプトは「Join the green revolution」。 英国内で環境意識の高いヴィーガンを自認する人は2016年で約350万人に上ると推計(Compare The Market社)される。その流れでバイオマス発電が注目されているが、その燃料として鮭の死骸や豚の排泄物などを一部使った発電も多いという背景がある。そこでEcotricityは、動物の体や、その副産物などを一切使用しない水力・風力による世界初、「ヴィーガン」での電力供給を開始した。
Ecotricityの創業者Dale Vinceは、世界初のカーボンニュートラル(国連認定)かつヴィーガンなサッカーチーム(イギリス4部に所属)「フォレストグリーン・ローバーズ(リンク:https://www.fgr.co.uk/)」の会長も兼務している。あの世界的に有名な建築会社Zaha Hadid Architectsが手掛けたスタジアム「Eco Park」(ほぼ木材素材)は太陽光・風力で電力が賄われ、ピッチはオーガニックな芝。ファンに提供されるフードは100%ヴィーガン。ユニフォームやすね当てはプラスティックではなく「竹素材」と徹底されている(笑)。

ー応用アイデア 日本でも「すでに起こりつつ有る巨大市場」になりつつあるヴィーガン層をターゲットにした新電力や、事業プロセス全体をヴィーガン志向にした蓄電池などが考えられる。ビジョン・価値観でセグメントしたプロダクトや事業開発は熱量が高いファンをひきつけやすく、かつヴィーガンは富裕層・高感度なアーリーアダプターであるケースが多い。こういった新たなセグメントやトレンドに着目した事業開発は、単なる環境志向ではなく儲けを両立した「三方よし」の商売に繋がるだろう。

事例03:発電所のデザイン世界で最も美しいデザイナーズ水力発電所Ovre Forsland(ウーヴレ・フォシュラン)/ノルウェー

URL:
https://www.helgelandkraft.no/Vannkraft/om-oss/vare-anlegg/ovre-forsland-kraftverk/
参考URL:
https://vimeo.com/135559258

水力発電所Ovre Forsland

ー概要 Ovre Forslandは、ノルウェー大手電力会社「ヘルゲランズクラフト(Helgelands Kraft As)」が所有し、発電容量は33GWhだ。ノルウェーらしく開発計画には、トナカイの群れへの影響が最小限に抑えられるランドスケープデザインが盛り込まれている。ノルウェーは国内電力の95%を水力発電で賄っていると同時に、EV普及率世界トップの再エネ大国でもある。自然と調和した幻想的で前衛的なデザインの水力発電所は、この発電所を目当てにしたノルウェー観光をするデスティネーションであり、同時に地域住民の誇り(シビック・プライド)にも繋がっている。

ー応用アイデア 実は日本でも廃墟となった発電所・変電所(リンク:https://syasin.biz/urbex/list/powerplant/)が隠れたマニアの観光スポットとなっているらしい。また“熱狂的なダムカードブーム”を呼び起こしたダムや橋、マンホールや工場などのインフラ土木系の景観に「萌える」マニアは世界中にいる。一見、デザインとは無関係な発電所・変電所や産業用の太陽光・蓄電池などに「美しさ」や「萌える」というコンセプトを持ち込み新しい価値を作れないだろうか?

事例04:電力不要というデザイン世界初の電力を一切必要としない冷蔵庫「MittiCool」/インド(グジャラート州)

URL:
https://mitticool.com/product/mitticool-clay-refrigerator50-liter/
参考URL:
https://www.youtube.com/watch?v=at0cwScRXHc

ー概要 インドの陶芸職人の家系に生まれたMansukhbhai Prajapati氏が立ち上げた、粘土製の家電ブランド「MittiCool」。粘土でできた冷蔵庫は、冷蔵庫の上段の箱に入れた水が、側面に滴り蒸発する際に、冷蔵庫内の熱気を奪うことで冷却効果が発揮される。野菜や果物、牛乳なら約2~3日程度保冷できる。インドの伝統的な知恵と陶芸技術が生かされた「温故知新」的な冷蔵庫は、環境に優しくサステナブル。かつ価格も8,000インド・ルピー(約1万2千円・50リッター)と安価。国内外の多数のデザイン及びイノベーション系のアワードを受賞している。

ー応用アイデア 日本でも省エネ家電や省エネサービスは多々あるが、省エネという括りに囚われている限り似たり寄ったりのコモディティ化は避けられない。MittiCoolのように「電力を一切必要としない×●●」というコンセプトで素材をゼロベースで考えたゼロエネ家電やゼロエネIoTプロダクトなどを商品開発できないだろうか?

事例05:存在を意識させないデザインデザイン志向のエネルギーIoTプロダクトを生み出すNature/日本(東京)

URL:
https://nature.global/
参考URL:
https://www.youtube.com/watch?v=7tyAO8pgy4U

ー概要 Natureは、三井物産出身の塩出晴海氏(現CEO)らがボストンで起業した。ミッションは、「自然との共生をテクノロジーでドライブする」だ。累計10万台以上を販売したスマートリモコン「Nature Remoシリーズ」や、手軽に家庭のエネマネを実現できる「Nature Remo E」を展開している。
特筆すべきは「デザインを意識させないシンプルでさりげない美しさを持つデザイン」。塩出CEOのブログを見ても明らかに戦略的にデザインに取り組んでいることがわかる。Nature Remo EをトリガーにP2P電力取引など次世代電力インフラ基盤となるプラットフォームの構築を目指している。

ー応用アイデア Nature以外では、mui(リンク:https://mui.jp/)という注目企業がある。muiは人間と自然とテクノロジーが穏やかに共生する未来をビジョンに、IoT型の木製スマートディバイスを開発している。前述したCIIDが掲げる「生態系中心のイノベーション(Life-centred innovation)」のように、日本のエネルギー事業者でも、生態系までステークホルダーに捉えた太陽光パネル・蓄電池・電力サービスを商品開発できないか?

エネルギーはクリエイティブの源となる

デザインやアートをエネルギー業界に持ち込んだらどんなワクワクすることができるだろう? そんな思いでこの記事を書いた。

私は、エネルギーとは「人に活力を与え、元気にし、生きる喜びを与える源」だと捉えている。いま日本社会、世界では暗く悲惨なニュースも数多い。しかし、エネルギー業界で働くわたしたちは、誰よりも創造的に人々を動かす源となるエネルギーを生み出し、「この世の中を明るく元気に、しなやかに美しくする」という愉快で壮大なミッションがあるのではないだろうか? と熱燗を飲みながらこの記事を書いた。

樋口悟
樋口悟

国際航業株式会社エネルギー部デジタルエネルギーグループ。エネルギー診断クラウドサービス「エネがえる」担当。1996年東京学芸大学教育学部人間科学課程スポーツコーチ学科卒業。1997年ベルシステム24に入社、2000年大手上場小売企業グループのインターネット関連会社で最年少役員に就任。2011年に独立起業。大企業向けにSNSマーケティングやアンバサダーマーケティングを提供するAsian Linked Marketingを設立し30以上の大手上場企業のプロジェクトを担当。5年で挫折。2016年国際航業株式会社新規事業開発部に入社しエネルギー領域の事業開発を担当。