日本ではあまり紹介されない海外のエネルギー業界最新ニュース。EnergyShift編集部が厳選してお送りする。
仏トタルは浮体式風力発電などの再エネプロジェクトを加速している(Simply Blue Energy社のビデオより)
太陽光が40% 2019年アメリカの電源構成
太陽エネルギー産業協会(SEIA)の新たな報告書によると、2019年、アメリカの太陽光発電設備による電力供給量が13.3GW増加した。これは全体の40%にあたる。
「関税*が成長を遅らせようとも、太陽光産業はそれに屈さないと、我々は常に述べてきた。今回の報告書はそれを実証するものだ」とSEIAのCEOである Abigail Ross Hopper氏は語る。この他にも、2009年末にはわずか1GWだったアメリカの累計稼働太陽光発電容量が現在76GWを超えていることや、2019年に住宅用太陽光発電容量に2.8GW以上の記録的増加がみとめられたことなどが記されている。
国の投資税控除(Investment Tax Credit)の期限切れに先立ち、2021年には20.4GWの太陽光発電設備の設置を計画。今後5年間で、アメリカの太陽光発電設備は2倍の容量になることが予測されている。
*トランプ政権による中国製太陽光関連製品への関税
Solar Accounted For 40% Of New US Electricity Generation Capacity In 2019(CleanTech 2020/03/18)
仏トタル、再エネプロジェクトを加速
仏トタルは二つの大きな風力関連の取引を発表した。同社は3月19日、デベロッパーであるSimply Blue Energyから、大西洋北部のケルト海にある96MWのエレバス浮体式洋上風力プロジェクトのシェアを80%購入。更に、子会社経由でデベロッパーGlobal Wind Power (GWP) Franceをデンマークの親会社から買収し、フランスにおける1GWの風力プロジェクトの権利を獲得したのだ。
欧州石油メジャーとして肩を並べるシェルとBPは、それぞれGW規模の再エネプロジェクトを持っているが、このところのトタルの戦略は両社を凌ぐ勢いだ。
トタルの計7GWの低炭素プロジェクトのうち、3GWを再生可能エネルギーが占める。同社は2040年までに、収益の15~20%を低炭素プロジェクトから得ることを目指している。
Total Becomes Latest Oil Major to Enter Floating Wind Market(Greentech Media 2020/03/20)
グリッド革命新章の幕開け 米マサチューセッツ州がクリーン・ピーク・スタンダードを開始
2020年3月20日、米マサチューセッツ州知事Charlie Baker政権は、電力需要が最も高くなる時間でのクリーンエネルギー利用推進プログラム「クリーン・ピーク・スタンダード(Clean Peak Standard)」の詳細を最終決定した。6月から30日間の検討期間を開始する。
2018年に可決したこの規則は、電力需要がその季節のピークとなる時間帯に、クリーンエネルギー供給の実績を作り出すものだ。州の公共事業者は年間の総電力量のうち、一定の割合でクリーンエネルギーの供給実績を残さなければならない。2020年に1.5%からスタートし、割合は年ごとに増加する。
他州でもこういった規則の議論がされているが、実行する州はマサチューセッツが初となる。目標は、クリーン電力をグリッドが最も求めている時間帯にシフトするための価格シグナルを作り出すことだ。クリーン電力は需要に合わせて生産できないため、バッテリー技術の向上にも役立つと考えられる。
欧州、浮体式水上太陽光と営農型太陽発電の両立
ノルウェーの大手石油会社Equinorは、伊石油ガス会社Saipemと手を組み、「沿岸部に適した浮体式水上太陽光発電技術ソリューション」を開発する。Saipemの担当者は、この技術は大きな水場を持たない地域や強風地域にとって理想的だと述べている。Saipemは伊エネルギー大手Eniが30%を出資している。
この提携の目的は、水上太陽光のプラグ・アンド・プレイシステム、つまり容易な製造と輸送、組み立てを強みとするモジュール化されたシステムを開発することだ。
また、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)を推進する新生業界団体Solar Power EuropeのCEO であるWalburga Hemetsberger氏は、太陽光と農業の組み合わせに、農作物の収穫量増加、水の消費量減少、再生可能エネルギーの産出という「3つの利点」を見出す。「これが気候中立(climate-neutral)の欧州の在り方であり、地元の農業とローコストな太陽光エネルギーは持続可能な欧州経済のエンジンとなりうる」とHemetsberger氏は語る。
Europe Puts Focus On Floating Solar & Agrivoltaics(CleanTechnica 2020/03/22)
インドの採炭企業、太陽光発電開発を加速
インド南部のテランガナ州に拠点のある公営採炭企業SCCL(Singareni Collieries Company Limited)はデベロッパー各社に向け、合計容量34MWの地上設置型(野立て)太陽光発電所の開発をオファーした。SECI(Solar Energy Corporation India)が代理でこの入札を呼びかけた。
これは3月初めに、同じくSCCLの代理でSECIが行った合計34MWの地上設置型(野立て)太陽光発電、32MWの屋根上太陽光発電、そして15MWの浮体式水上太陽光発電プロジェクトに加えての入札募集とみられる。SCCLは2018年初頭、地元テランガナ州に計550MWの太陽光発電所の建設計画を発表していた。インドではSCCLの他、Coal IndiaやNLC Indiaといった採炭企業も再生可能エネルギーのプロジェクトに目を向けている。
Indian Coal Mining Company Tenders 115 Megawatts Of Solar Projects(CleanTechnica 2020/3/23)
(Text:EnergyShift編集部 鶴田 さおり)