石炭からの燃料転換に向け、日本でもアンモニア発電の実証試験が2021年10月からはじまった。東京電力ホールディングスと中部電力が共同出資するJERAは、大手機械メーカーのIHIと協力して、日本最大の石炭火力発電所である、碧南石炭火力発電所(発電出力800万kW)で同規模では世界初の燃焼試験をはじめた。
碧南火力発電所(愛知県碧南市)
出典:IHI
JERAは、まずは少量の混焼からはじめ、2024年度にはアンモニアの比率を20%まで引き上げ、CO2の排出を削減する計画だ。そして2050年の脱炭素に向け、アンモニア100%の火力発電を目指す。
一方、ガス体であるアンモニアは石炭だけではなく、天然ガスの代替燃料としての利用も期待されている。
三菱重工は、100%アンモニアで稼働するガスタービンの実用化に向け、4万kW級のガスタービン開発に乗り出している。ところが、アンモニアは燃焼時にCO2が出ない一方、有害な窒素酸化物(NOx)が出ることが課題となっている。三菱重工では空気の量を調整することでNOxの発生を抑え、2025年以降に実用化し、発電所へ導入する計画だ。
4万kW級アンモニアガスタービン
出典:三菱重工
アンモニアを使った発電技術は日本が先行しており、海外展開も期待されるだけに、日本政府も支援強化を図っている。経済産業省は脱炭素技術の開発や普及を促す国の2兆円基金から最大700億円を投じ、2030年度までにアンモニア100%発電の技術を確立し、2040年代に実用化する目標を掲げる。
日本でアンモニア発電に対する動きが加速する背景には、火力発電、とりわけCO2排出量が多い石炭火力への国際的な批判が高まっていることがある。
日本も2030年までに効率の悪い石炭火力を廃止する方針だが、まだ150基(2020年7月時点)の発電所があり、電源構成の32%を占めている。さらに天候などで出力が変動する再生可能エネルギーを調整する役割があるとして、2030年時点でも19%の電源を残さざるをえない状況だ。そのため、既存の石炭火力を活用しながら、CO2排出量を可能な限り減らすためにアンモニア発電の実用化が急がれている。さらに、アンモニア発電の技術が確立できれば、石炭火力への依存度が高い、アジア各国に輸出し、CO2の排出量を削減できる可能性が広がる。
ただし、普及に向けては残された課題も多い。
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