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Hailo社の高性能エッジデバイスが、CASEやスマートシティを飛躍させる イスラエルスタートアップインタビュー

Hailo社の高性能エッジデバイスが、CASEやスマートシティを飛躍させる イスラエルスタートアップインタビュー

EnergyShift編集部
2020/05/18

イスラエルは米国シリコンバレーに匹敵する、スタートアップ企業の集積地だ。さまざまなハイテク企業が登場する中、イスラエル大使館の協力により、Utilityに関わる企業5社のインタビューを行った。第1回は、エッジデバイスのディープラーニングプロセッサを開発しているHailo社。プロダクトマーケティングディレクターのLiran Bar氏にインタビューを通して、製品の特長や今後の社会にどのように役立つのかうかがった。

高性能・省電力・超小型のエッジデバイス

―最初に、会社の概要を教えてください。

Liran Bar氏HailoはAIに特化したチップメーカーで、私たちは独自のディープラーニングプロセッサを開発しました。HailoのAIチップは、スマートデバイスがニューラル・ネットワーク(NN、人間の脳内の神経回路をモデルとしたネットワーク)ベースのアプリケーションをエッジで効果的に実行できるようにすることで、複数の産業向けに視覚的なインテリジェンス(知能)と感覚的な知覚から得られるデータの収集・分析を変革するものとなっています。

設立は2017年2月で、現在、テルアビブの本社に60名の従業員を抱えています。最近では東京にもオフィスを開設しました。合計で8,800万ドル以上の資金を調達し、中でも日本電気(NEC)は新たな戦略投資家の1つとして参加してもらっています。

最初の製品は、Hailo-8™で、現在、サンプルを特定の顧客に提供し、テストしてもらっています。本格的な生産は、2020年の第3四半期を予定しています。

Hailo Liran Barプロダクトマーケティングディレクター

―「Hailo-8」の特長について教えてください。

Bar氏:Hailo-8チップは、NNのコア特性を利用した、革新的なアーキテクチャで構築されており、デバイスがより効率的にAIを実行し、検出や分類などの高度なディープラーニング・アプリケーションを、これまでクラウド上のみで可能だったパフォーマンスレベルで実行できるようになっています。

Hailo-8プロセッサの処理能力は、26TOPS(Tera Operations Per Second:1秒あたり1兆回計算する単位)となっており、面積と電力効率において他のソリューションよりもけた違いに優れています。必要なメモリを含め、すべてにおいて小型で、1ペニー硬貨よりも小さいことが特長です。

また、セマンティック・セグメンテーション(画像に何が映っているのか認識する技術)やリアルタイムでの物体検出などのミッションにおいて、競合他社を凌駕しています。Hailo-8と他のチップを比較した実測結果によると、Hailo-8プロセッサは、同じタスクを実行しながら消費電力を大幅に削減しています。実際に、Hailoのチップは、ResNet-50(画像分類のニューラルネットの1つで、50のレイヤがある)のような画像分類推論タスクを、他の主要なチッププロバイダの20倍の電力効率で実行しました。

Hailo-8チップ

―エッジデバイスであることの利点とは何でしょう。

Bar氏:過去2~3年の間に、インテリジェンス(AI)がクラウドからエッジデバイスへと移行しつつあります。HailoのAIチップは、自動車、スマートシティ、流通・小売り、インダストリー4.0など、さまざまな業界向けに視覚的なインテリジェンスと感覚的な知覚に革命をもたらしています。

HailoのAI対応のデータ処理は、クラウドではなくカメラ自体で行われるため、大幅なコスト削減、効率的な処理、少ない待ち時間、高信頼性、高いプライバシーの保護を実現します。

しかし、これまでこれらの市場のすべてに適合し、適切な処理能力を持ちながらも、高い柔軟性と拡張性を維持できるAIエッジデバイスを設計することは、数少ない企業でしか実現できませんでした。

パンデミックのモニタリングもAIで

―AIによるディープラーニングによって、高度な認識が可能になるということですが、具体的に、どのような場面での活用を想定されているのでしょうか。

Bar氏:ディープラーニングは、さきほどお話ししたように幅広い業界で活用されています。

自動車では、歩行者の認識や衝突回避、ハザード検知、後方衝突警告、車線変更支援、駐車支援などの改善につながる可能性があります。また、Hailoのプロセッサは、リアビューカメラ、フロントカメラ、サイドミラーの性能を大幅に向上させます。

スマートシティでは、カメラが公共の安全に対する脅威を効果的に検出し、暴力事件の特定、行方不明者の捜索、盗難車の発見などを支援することができます。

流通・小売りのいわゆるスマートリテールにおいては、店舗内に数百台のカメラを設置し、ローカルで迅速かつ効果的で最小限の遅延で処理する必要があるビデオを生成しています。HailoのAIチップは、1台のデバイスで複数のカメラを処理できるため、非常に費用対効果の高いソリューションとなっています。これにより、お客様が買った商品が素早く認識されます。

一秒一秒が大切となってくるインダストリー4.0では、HailoのAI対応データ処理は、クラウドではなくカメラ自体で処理することで、大幅なコスト削減、検査のためのより効率的な処理、最適化された品質保証を実現します。産業用IoTを新しいデジタル時代へと導くということです。

―エッジデバイスであることで、プライバシーの保護がしやすく、スマートホームにも導入しやすいということでしょうか。

Bar氏:Hailoプロセッサは、データのソースである家庭内でデータを処理することができます。これは、プライバシー保護、信頼性、応答時間の短縮につながります。このことは、高齢者の生活を支援するデバイスにとっては特に重要です。エッジでデータを処理できるデバイスは、高齢者の転倒などによる怪我や急な病気による危険な状況を明らかにする分析結果を適切に送信しますが、不必要な個人情報は機密情報のままとなります。

―安心、安全で便利な社会を支えるデバイスということですね。

Bar氏:その通りです。Hailoのような技術の採用は、交通規制をより効果的に実施するのに大きく役立ちます。

例えば、新型コロナウイルスの感染拡大においては、公共の場所に人が集まることを防ぐための新たな規制が各国で導入されています。こうした場所に体温を感知するセンサーを導入することで、保健所への注意喚起や、人が集まることに対する注意喚起も行うことができます。このとき、Hailoの技術を組み合わせることで、クラウドに映像を送信することなく、エッジでローカルに処理できれば、プライバシーを損なうことなく、人々の体温などのチェックができます。

また、新型コロナウイルスの感染拡大は、世界的なサプライチェーンの混乱をもたらしています。工場の操業停止など、業界全体が閉塞しており、業界のリーダーたちはこの大混乱に対抗できるソリューションを模索しています。

私たちは、その答えの一部はAIにあると信じています。例えば、AIを搭載したセンサーによるより優れた自動化は、サプライチェーンの効率を改善しますし、「自動配送」のような「ソーシャル・ディスタンス」のための実用的なソリューションも提供するでしょう。 さらに、高齢者を支援するパーソナル・ロボットや、スマートシティにおけるプライバシーを損なわないモニタリングの改善など、さまざまな可能性があると考えています。

Hailo website

(Interview&Text:柴田 奈々)

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