なぜ金を出すのか。一言で言えば、他に手がないからだ。日本の脱炭素力の弱さを示しているとも言える。基本的になんでもそうだが、具体的なタマがなければ、最後は資金コミットメント、これがパターンだ。
そもそも日本は、太陽光は撤退の嵐、風力は海外からの草刈り場になっているという状況で、海外に出していける再エネメニューがない。もちろん、岸田総理が述べたように蓄電池を含む車の脱炭素など、まだ提供できうるソリューションは広く見ればあるが、やはりエネルギーの脱炭素は一丁目一番地。再エネの技術支援があれば、それを掲げるというのが筋だ。しかし、ないものは出せない。例えば先ほど問題視したアジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブを入れ込むことで、弱いながらもアピールするしかない、という格好になる。
国際的にアピールできる強い材料がない、ということになる。
加えて、気候変動の世界では、途上国に対する資金援助を先進国が積み上げるというコミットメントを過去にしているのだが、このコミットメントに金額がなかなか集まらない。そのため、今回のCOPは改めてどれだけ資金を積めるかが、一つの大きなテーマとなっていた。
日本がアピールできる手は一手しかない。そう金を多く出すことだ。
ただ、日本もこれから新型コロナウイルスからの経済復興をしていかないといけない局面だ。お金を海外に出すのではなく、国内に使うべきではという議論は至極全うであり、筆者自身、外務省にいたころから、費用対効果の計算がちゃんとされているのか、疑問なしとはしないところがあった。
脱炭素に関していえば、海外が虎視眈々と日本の脱炭素市場を狙っている状況だ。今回発表した最大100億ドルの拠出、これを2兆円のグリーンイノベーション基金に上乗せして、国内強化をはかった上で海外に対して打って出て、外貨を稼いでから資金コミットメントをはかる、という流れでも良かったのではないか。
さらにいうと、すでに気候変動の文脈で、日本が世界の財布としてねだられてしまうというのはいまに始まった話ではない。過去には緑の気候基金に15億ドル、さらに増資で最大15億ドルの拠出を実施、表明してきており、最大クラスの大口の拠出国となっている。さらに輪をかけてそれらをも大きく超える資金の拠出に今回コミットしたわけだ。
節目の国際会議の度に資金コミットメントをして財布代わりに使われる、ということについて、個人的には批判的に見ている。まずは全うに日本の脱炭素の力をあげるべきではないか。
今回はこの一言でまとめたいと思う。
『落とし穴はあった しかし、岸田総理が脱炭素に向かい始めたのは良いサイン』
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