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【2021年版】電気自動車(EV)の人気メーカー

【2021年版】電気自動車(EV)の人気メーカー

2021年07月29日

今年、国内で電気自動車(EV)の新車種が続々と投入され、EV業界はかつての盛り上がりを取り戻し始めています。主役だった欧米メーカーに加えてトヨタやホンダなどが参入し、この2年でラインナップは19車種と倍増しました。昨年は主要EVメーカー5社の時価総額が主要自動車メーカー10社を抜き、いよいよ時代の潮目が変わりつつあります。

本稿では、21年7月時点での全世界EVシェアなどの情報をもとに、EVの選び方や人気メーカーをご紹介します。

電気自動車(EV)の販売台数シェア

欧州のEV化が顕著に

温室効果ガス”30年までに半減、50年までに実質ゼロ”を目指す脱炭素社会に向けて動き出したEVシフト。世界全体の年間CO2排出量約35Gtのうち、50年までに公道で走行する2台に1台がEVになると、1.5Gt(ロシアの年間CO2排出量に相当)、ライドシェアなどの施策と合わせると約4Gtが削減できる試算です。

昨年は全世界で320万台のEVが発売され、19年と比べて43%も増加し、飛躍の年になりました。新型コロナの影響で自動車の新車販売が16%減少したにもかかわらず、EV販売は70%増加しています。

国別・企業別シェアは?

国別シェアでは、中国・ドイツ・アメリカ・フランス・イギリスの順で、ドイツを始めとした欧州の躍進が顕著です。

企業別にみると、14%のテスラを筆頭に、SGMW(上海通用五菱汽車)、フォルクスワーゲン、BMW、BYD(比亜迪)、ベンツ、ボルボ、SAIC(上海汽車)の順となり、これらの上位企業でほぼ半分のシェアを占めています(21年)。

また、車種別シェアは「テスラ モデル3」「SGMW 宏光ミニEV」「テスラ モデルY」の順でした。王者テスラに追随する多数の中国メーカーがひしめく状況の中、「日産リーフ」は6位につけ、日本勢として孤軍奮闘しています。
一方、新車全体におけるEVの割合でみると、昨年は欧州5.0%(73.4万台)を筆頭に、中国4.8%(101.4万台)、アメリカ1.5%(22.3万台)と未だ低水準。世界全体でも3.1%にとどまり、EVの伸びしろは依然大きいといえます。

こうした世界の盛り上がりとは対照的に、日本国内の販売台数は18年のピーク以降、右肩下がりの傾向にあります。昨年、国内販売された約380万台のうち、ガソリン車が半分超で、ハイブリッド車が約135万台(35%)、EVはわずか約1.5万台(0.4%)でした。海外と比べると10倍以上のEVシェアの差があり、ニッチな市場にとどまっています。

充電設備の差が浮き彫りに

欧州躍進の背景にあるのは、充電設備の増加です。123兆円を投じた「欧州グリーンディール」政策の一環で、19年には40%の充電設備が増加し、既にガソリンスタンドの数を超えました(欧州全体で約20万基、ドイツは約11万基、日本は約3万基)。さらに、25年までに100万基の設置を予定しています。

こうした動きを受け、アメリカも50万基の充電設備の設置を予定。EV普及に向け、日本でも充電設備の大幅拡充が待たれるところです。

電気自動車(EV)の選び方

EVを選ぶ基準はドライバーによってさまざま。ここでは、価格・航続距離・目的の3つの観点を設定し、それぞれの基準で選ぶ際の参考情報をご紹介します。

価格で選ぶ

電池の量産が進んで低価格に

長らく”高い”印象のあったEVですが、近年、中国や欧州で量産が進んだことで原価の3~5割を占める電池の生産コストが減少。低価格化が進み、20年までに8割下落(12年比)しています。

また、購入者にはEV推進を目指す国から補助金があり、環境省から最大80万円が受けられます(経済産業省からは最大60万円。別途、自治体の補助がある場合も)。ただ、今年のある調査では6割の人が「200万円以下ならEVを購入する」と回答していますが、補助金を使っても、大半の人は依然200万円を上回るようです。

ちなみにドイツでは1台当たり120万円、フランスは最大90万円の補助が受けられるため、日本でもさらなる補助金の拡充が期待されます。

購入の分かれ目は「118万円差」?

依然として本体価格ではガソリン車と価格差があるものの、ガソリン・電気などのエネルギー代も考慮すると、長い目で見れば燃料代が安いEVに軍配が上がるはずです。

具体的に計算すると、日本で10万km走った場合、ガソリン車の燃料代は69万円なのに対してEVの電気代は31万円です。つまり、車両の実質価格の差が69-31=38万円を切ると、両者のコストパフォーマンスは逆転します。

さらに前述の補助金を勘案すると、80+38=118万円以内の価格差であれば、EVはガソリン車より少なくとも経済的に優位な選択に。あくまで平均価格の比較ですが、200万円のガソリン車の購入をお考えの方は、318万円以下のEVであれば”買い”といえるでしょう。

航続距離で選ぶ

EV購入の際に気になるのは値段だけでなく、その航続距離(1回の充電あたりの走行距離)。充電を頻繁に行わずに済むかどうかは、EVライフのQOLを大きく左右します。近年は電池性能が向上し、車種によっては航続距離が約300-400kmと10年前に比べ、ほぼ倍増。さらに充電時間は30分まで短縮し、使い勝手が良くなってきています。

航続距離は基本的には価格に比例し、ざっくり言えば「約0.5~1.0km/万円」の関係にあります。ただ、中国の小型EVではSGMW「宏光ミニ」(120km/48万円)や長城汽車の「欧拉黒猫」(300km/115万円)のような”例外”も登場しつつあります。

400kmを超える車種は、現在のところ多くはテスラ・ベンツ・BMW・アウディなどの海外メーカーに限られますが、今後数年以内に国内外のメーカーから500-600kmの車種が登場する見込みです。

目的で選ぶ

  • アウトドア重視

アウトドアに利用するなら、コンセントから差込プラグを用いて直接バッテリーに充電でき、外部電源つきのプラグインハイブリッド車(PHEV)がおすすめです。三菱アウトランダーPHEVは最大1500Wまでの消費電力に対応可能した家電を利用でき、BBQやワーケーション、非常時にも使えます。

  • 小回り重視

小回りを求めるなら、コンパクトで環境性能に優れ、地域の足にもなる小型EVが将来的にはおすすめです。

来年には、トヨタの2人乗りEV「シーポッド」の個人向けが販売になります(昨年の道交法改正で2人乗りEVは軽自動車となり、車検が義務付けられました)。中国でも、SGMWが米GMと組んで4人乗りEV「宏光ミニ」を昨年販売し、45万円の低価格で大人気となっています。

現在、軽自動車が自動車全体の約4割を占めているように、小型EVはEV普及のカギとなるでしょう。

電気自動車の選び方

電気自動車(EV)の主要メーカーをご紹介

国内シェアの大きい主要EVメーカーを中心に、特徴・価格・航続距離をご紹介します。

※価格・航続距離の記載は各メーカーの人気車種(または最安車種)のもの

※価格・為替は21年6月時点。航続距離はいずれもWLTCモードでの数値

海外メーカー

  • テスラ

EV業界の筆頭メーカー。2月に「モデル3」 の価格を大幅値下げし、6月にはパナソニックが同社株を高値で売却するなど、話題を提供し続けています。

価格:モデル3 439万円

航続距離:450km

 ・BMW

主力の「i3」はレンジエクステンダー(航続距離を伸ばすための小型の発電用エンジン)を搭載し、4段階の強力な回生ブレーキを備えます。昨年には後継となる「i4」を発売(価格810万円、航続距離590km)。

21年発売予定のフラッグシップモデル「iX」には、イスラエルの新興メーカー・イノヴィズのLiDAR(光による検知と測距)を搭載し、実用的なレベル3の自動運転も視野に入れています。22年までに電池生産工場に約665億円を投資し、30年までに「1000万台のEVを販売」「売上の少なくとも50%以上の電動化」を目指しています。

価格:i3 505万円

航続距離:466km

  • フォルクスワーゲン

好調なコンパクトSUV 「ID.3」の後継となる、SUV「ID.4」を2月に欧州で販売開始(価格520万円、航続距離485km)。日産「アリア」の強力なライバルになるとみられます。24年までに1.4兆円をEVに投資し、25年には260万円前後のEVを発売予定です。

価格:ID.3 450万円

航続距離:330km

  • ベンツ

高価格EV「EQC」に次ぐ新型「EQA」を4月に発売。回生ブレーキは5段階で強さを調節可能です。

価格:EQA 640万円

航続距離:422km

  • ルノー

傘下の「ダチア」から低価格EVを販売。ハイブリッド車「ゾエ」はここ数年、欧州で最も売れているEVです。今秋には現行の半額程度の新型車を、25年までに10車種を欧州でそれぞれ販売予定。30年までに自社モデルの最大90%の電動化を目指しています。

価格:スプリング・エレクトリック 226万円

航続距離:220km

国内メーカー

  • 日産

世界初の量産型100%EV「リーフ」が国内シェアの約9割を占める国内筆頭メーカー。昨年3月にテスラ「モデル3」に抜かれるまで、世界一の販売台数(50万台)を誇りました。

巻き返しを図るべく、”世界戦略車”と位置づけるクロスオーバーEV「アリア」を年内に発売予定(見込み価格660万円、航続距離610km)。1500億円を投じてイギリスに電池工場を新設し、30年早期までに全ての新車電動化を目指しています。

価格:リーフ 332万円

航続距離:320km

  • トヨタ

昨年、2人乗り超小型EV「シーポッド」を発売し、22年には個人向けを販売予定。30年までに電動車800万台(うちEV・FCVは200万台)が目標です。

価格:シーポッド 165万円

航続距離:150km

  • ホンダ

昨年10月に待望の量産EV「Honda e」を発売。愛らしいデザインとカラーが特徴です。40年までに全ての新車電動化を宣言しています。

価格:Honda e 450万円

航続距離:308km 

  • 三菱

昨年、欧州でSUVのPHEVで販売台数No.1(PHEV全体で第2位)を獲得。23年度までに軽自動車の商用EV「ミニキャブ・ミーブ」を2割値下げし(以前は240万円強)、同社のガソリン車との価格差は約90万円に。電池などを低価格の最新のものに替え、航続距離は維持する見込みです。

価格:ミニキャブ・ミーブ 200万円

航続距離:150km

  • マツダ

22~25年に3​車種のEVを投入、30年までにEV比率を25%まで引き上げる予定です。

価格:MX-30 EV MODEL 451万円

航続距離:256km

  • レクサス

昨年10月にUX 300eの発売予約を開始。スバルとEVタイプのSUVの共同開発も進めています。

価格:UX 300e 580万円

航続距離:367km

おわりに

群雄割拠の様相を呈するEV業界。小型EVはニューフェーズの到来を予感させますが、この秋参戦する”第二のテスラ”「ルーシッド」にも要注目。効率的なバッテリーとモーターを搭載する高級EVを擁し、ライバルは「ベンツ」を標榜。小型化・SUV化・高級化が新たな競争のトレンドになりそうです。

「CASE」(コネクテッド技術・自動運転・シェア化・電動化)と呼ばれる、”100年に1度の変革期”を迎えた自動車業界から今後ますます目が離せません。

EnergyShift編集部
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