パリ協定の第6条はカーボンクレジットに関するしくみであるとはいえ、京都メカニズムとは同じではない。3つのしくみで構成されており、それぞれ6条2項、6条4項、6条8項で規定されている。
6条2項は、二国間クレジットに代表されるように、2つの国の間で取り決めを行ない、GHG排出削減プロジェクトを実施してカーボンクレジットを分け合うというもので、基本的には国連は関与しない。パリ協定においてはすべての国が削減目標を持っているので、その目標からクレジットを分け合うということになる。
6条4項は、国連主導型のクレジット発行となるもので、京都メカニズムのCDMと似ている。CO2排出削減プロジェクトを実施した上で、国連の機関の認証を受けるということになる。
6条8項は非市場型メカニズムとよばれるものだが、貧困対策など途上国の持続可能な開発に対する対価の市場化を避けたいという途上国側の意思がはたらいて設定されたものだ。先進国がプロジェクトを実施したことで、先住民の生活が脅かされる、といったことは避けたいということだ。とはいえ、具体的にどのようなプロジェクトが想定され、先進国が実施していくのかは、明確ではない。
Nature in Delivery of Paris Goals(11月6日)
では、争点は何だったのか。そしてどのように合意されたのか。
6条4項については、争点は2つあった。1つは京都メカニズムで使用されなかったCDMのクレジットの流用だ。これを認めてしまうと、実質的なパリ協定におけるGHG排出削減が弱められることになる。一方、ブラジルや中国などは未使用のクレジットを多量に保有しており、利用したい考えだった。結論は、京都議定書第一約束期間終了後、すなわち2013年以降のCDMクレジットに限っては認めるということだ。もっとも、京都議定書の第2約束期間は2013年から2019年までだが、これはついに発効することはなく、クレジットが中に浮いていたということも指摘できる。
6条4項のもう1つの争点は、ダブルカウントの回避だ。実は、削減目標(NDC)といっても、国ごとにその内容が異なっている。日本の場合、日本全体の排出削減量が規定されているが、排出量の算定が難しい国の場合、算定できる分野のみを目標にしているようなことがある。
したがって、対象外の分野からのGHG排出量を削減した場合、プロジェクトを実施した国と受け入れた国の間でGHG排出削減が正しく計算されず、二重の削減量となってしまう可能性があるというものだ。これを避けるためのしくみを立ち上げることで合意された。なお、6条2項についてはすでにダブルカウントを避けるしくみが含まれている。
6条2項の争点は、プロジェクトの利益の拠出だ。6条4項ではクレジットを国連機関が認証することから、利益の5%を適応資金として拠出することになっている。6条2項は国連機関を使わずにクレジットが発行されるが、これがアンフェアだということだ。結局「適応資金を拠出することを強く促し、拠出額を報告する」ということで合意された。日本にとっては、二国間クレジットの利益の拠出を最低限にすることができたわけだが、途上国としては適応資金が不足することにもつながる。結局のところ、その分の資金拠出は先進国に求められるのかもしれない。
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