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グリーンリソース・リユース・リサイクルがよりクリーンな電気自動車用バッテリーのカギとなる

グリーンリソース・リユース・リサイクルがよりクリーンな電気自動車用バッテリーのカギとなる

2021/07/01

脱炭素の切り札ともいえる電気自動車の普及拡大にあたって、蓄電池に利用される、リチウムやコバルトなどの希少な金属資源が制約になると言われている。資源の確保もさることながら、持続可能であるためには資源のリサイクルも必要だ。そのためには、どのような取組みが必要なのか、ドイツのエネルギー専門メディアのClean Energy Wireから、ソーレン・アメラング記者の記事を、環境エネルギー政策研究所(ISEP)研究員の古屋将太氏の翻訳でお届けする。

真の意味で持続可能な電動モビリティのためには

輸送分野のCO2排出量削減には、電気自動車への移行が不可欠だ。しかし、電気自動車の需要が急増していることから、蓄電池の環境や人に対する影響への懸念が高まっている。

蓄電池の生産はエネルギー集約的で、環境や社会に大きな影響を与える可能性のある多種多様な原材料が採掘され、使われている。そのため、生産チェーン全体を綿密に監視・管理する必要がある。また、自動車の蓄電池は寿命が尽きると環境への脅威となるため、真に持続可能な低排出モビリティへ移行するためには、リユース・リサイクルの拡大がカギとなる。

自動車、家庭、産業プラントなどで再生可能エネルギーを蓄える電池は、世界中の脱炭素化戦略の柱となっている。そのため、使用段階だけでなく、その前後も含めて真の意味での持続可能性を確保することが求められている。

市民団体は、世界中の自動車メーカーに対し、蓄電池の調達方法を見直し、サプライチェーンが排出量の多い方法や非倫理的で環境に悪影響を与える方法に頼らないようにすることを求めている。電動モビリティが急速に普及すると、廃棄される電池の量も膨大になる。貴重な資源を環境に有害なグリーンテクノロジーの廃棄物として浪費しないためには、再利用とリサイクルをより包括的かつ効率的に行う必要がある。

循環型利用を促進することは、電動モビリティの環境フットプリントをさらに改善するだけでなく、重要な原材料の輸入依存度を下げることにもつながる。ドイツの技術者協会VDIは、電池材料のリサイクルと循環利用の改善は、環境的にも経済的にも「大きな」可能性を秘めていると述べている。

欧州委員会の発表によると、世界の電池需要は今後数年間で急激に増加し、2030年には14倍になり、欧州がその約5分の1を占めることになるという。また、世界銀行が発表した数字によると、パリ協定の排出削減目標を達成するための取り組みが真剣におこなわれた場合、特定の電池原材料の需要は今世紀半ばまでに1,000%増加する可能性があるという。このような状況下では、電池原料の埋蔵量は、今日の石油やガスの埋蔵量に匹敵するほどの戦略的資産となる。

蓄電池をより環境に優しいものにするために解決しなければならない問題は数多くある。しかし、電気自動車の全体的なエコロジカルフットプリントが、内燃機関技術よりも現時点ではるかに小さくなっていることは明らかだ。

適切なリサイクルをおこなうことで、平均的な電気自動車の生産に必要な原材料は2020年には30kg以下になるといわれているが、これに対し、平均的なガソリンエンジン車では、走行時だけで17,000リットル以上のガソリンを消費する。これは、グリーンモビリティーNGOのTransport & Environmentによると、「25階分の高さの石油樽の山に相当する」ということだ。

電動モビリティへの移行は、現在世界中でおこなわれている資源採掘による環境・社会への大きな影響を軽減するための絶好の機会だ。国連環境計画の計算によると、世界の温室効果ガス排出量の約半分、生物多様性の損失や水不足問題の約90%、さらには暴力的な紛争の大部分が、最終的には資源の採取と加工によって引き起こされているという。

電池材料の入手と調達

蓄電池の原材料の大部分は、鉄やアルミニウムなど、国際市場で広く入手可能な資源で構成されている。これらの資源には、採掘による一次資源と、リサイクルによって得られる二次資源がある(コラム参照)。

電池セルに使用される他のいくつかの主要原材料の供給は地理的に集中している。一方、蓄電池業界はこれらの原材料を生産の循環の中に留めるための迅速で規模を有するリサイクル方法を確立していない。欧州委員会の「重要な原材料に関する行動計画」によると、リチウムとコバルトは重要な原材料であり、2050年までにこれら2つの金属の需要はそれぞれ60倍、15倍に増加すると予測している。

リチウムの生産量はここ数年、オーストラリアが圧倒的に多く、次いでチリ、アルゼンチン、中国となっている。世界最大のリチウム鉱床は、南米のボリビア、チリ、アルゼンチンの3ヶ国に集中しており、これら3カ国で現在利用可能な資源の約60%を占めている。鉱床のある乾燥したアタカマ砂漠地域のいわゆる「リチウムトライアングル」では、塩水からリチウムを抽出するための水の消費が大きな問題となっている。

ドイツ応用生態学研究所(エコ研究所)が発表した数字によると、現在の電動モビリティの生産拡大の傾向を維持するためには、2030年には全世界で約24万トン、2050年には110万トンのリチウムが必要になるという。2020年時点での確認済み埋蔵量は1,700万トンだが、潜在的な資源量はもっと多いと考えられている。

とはいえ、需要の増加は価格の上昇につながる。すなわち、これまで未知であったり、採算が合わなかったりした資源の探査や採取がより魅力的になり、例えば、アクセスするのに非常にコストがかかる深海の鉱床などがその対象に含まれる。

チェコとドイツの国境に位置するオレ山にあるリチウム鉱山は、約1,000万台の電気自動車を駆動するのに十分な量のリチウムを保有していると考えられている。また、ドイツでは、ライン川流域の地熱を利用して「世界初」のCO2ニュートラルな車載用リチウムを抽出するパイロットプロジェクトが進行中であり、技術革新に伴う新たな調達方法の多様性を示している。また、ポルトガルからノルウェーまで、リチウムやその他の貴金属を対象とした多くのプロジェクトは、欧州各国が鉱物資源の供給を再考していることを示している。

確認されたリチウムの埋蔵量は、2008年の時点からすでに4倍になっている。エコ研究所によると、確認されている資源の潜在的な可能性をすべて含めると、約800億トンのリチウムが利用可能であるということだ。ドイツの資源庁DERAはこのように、2019年の重要原材料指数でリチウムを「中程度のリスク」に位置づけている。現在、供給が地理的に集中しているにもかかわらず、調達国の「優れたガバナンス」によって安定供給が保証される可能性が高いとしている。

一方、コバルトについては、政治的に不安定な国に埋蔵量が集中していることや、地政学的な理由から、ドイツの産業界がアクセスできない可能性があるため、DERAはリスクが高いと判断している。コバルトの採掘は、世界の生産量の60%を占めるコンゴ民主共和国(DRC)に集中している。DRCのコバルト鉱山は、危険な労働環境や児童労働が蔓延していることで知られている。また、ドイツの連邦地球科学・天然資源研究所(BGR)によると、DRCは近年、新規鉱山プロジェクトへの投資が最も多い地域となっている。

ドイツのヘルムホルツ研究所の研究者たちは、蓄電池生産の需要だけでも確認されたコバルト資源量を上回る可能性があるとし、コバルトをより広く利用可能な代替物に置き換えるための研究を進めることを提唱した。自動車メーカーのテスラは、コバルトには多くの問題があるため、コバルトの使用をやめる方針だ

同様に、リチウムの優位性は揺るぎないものではなく、より優れた特性を持つ他の材料がとってかわる可能性もある。しかし、一般的には、この2つの元素と、ニッケル、銅、黒鉛などの他のさまざまな素材の需要は、今後数年間で大幅に増加すると予想される。

自動車メーカーのBMWや化学メーカーのBASFなど、多くの大企業が自社の調達活動の透明性を高めようとしている。しかし、幅広いNGOの集まりである「サプライチェーン法イニシアティブ」は、電動モビリティや再生可能エネルギーへのシフトに伴う資源市場の大きな変化を考えると、個々の企業による試みは不十分であると指摘している。

企業にとって公平な競争条件を整えるためには、より良い資源調達基準を施行する効果的な法律が必要だと訴えているのだ。欧州レベルではサプライチェーン法が提案されているため、ドイツ政府は国内法の制定に踏み切ったが、環境面での重要性が軽視されているという批判を受けている。

古い電池はどうなるのか?

多くの研究では、電気自動車の蓄電池の平均寿命は8年から10年とされているが、すでに多くの蓄電池がより長い期間使用されている。複数の蓄電池メーカーが「100万マイル蓄電池」の登場が間近に迫っていると述べているように、将来の蓄電池はさらに長持ちするかもしれない。これらの蓄電池は、自動車よりも長持ちし、何度も使用できる可能性がある。

充電容量が約80%以下になると、一般的には自動車に使用するには適していないとされている。現在はまだ、寿命が尽きた電気自動車用蓄電池の数は比較的少ないという。フォルクスワーゲンは、クリーンエナジーワイヤーに対し、現在の古い蓄電池の処理は、古いプロトタイプモデルなどの「内部で発生したもの」に限られていると述べている。

顧客から戻ってくる蓄電池の量は大きなものとはなっていないが、今後10年間で大きく増加すると予想されている。ローランド・ベルガー社によると、2030年には、EUにおける古い電気自動車用蓄電池の量は170万トンに達する可能性があるという。これをリサイクルすることで、コバルトやニッケルなどの貴重な素材に対する現在の需要の30%をカバーできる可能性があるという。


自動化された手順が確立されていないため、人の手で解体されることが多い電気自動車の蓄電池 / 写真:フォルクスワーゲン

セカンドライフで環境負荷を軽減

蓄電池を分解してリサイクルするよりも、他の用途に使用できるようにする方が効率的だ。

自動車協会ADACによると、2,500回の充電を繰り返した自動車用蓄電池の残存容量は約75%であり、その段階で廃棄することは環境的にも経済的にも無理があるという。

一方、定置型の蓄電装置として再利用することは、自動車用としてリサイクルすることに比べて負担が少ない。自動車から取り外した後、さらに15年間は運用することができるということだ。

この使い方には小規模な利用と、多数の電池を接続する産業用の利用があり、自動車メーカー各社が実験をおこなっている。再生可能エネルギーが中心となる電力網の安定化を目的とした定置型蓄電池の需要は、今後数年間で急速に増加することが予想される。

大きな可能性を秘めたリサイクル

蓄電池は寿命が尽きると産業廃棄物となる。しかし、原材料の調達が困難であることや、現在のリサイクルが非効率であることを考えると、使用済みの蓄電池の処理方法の技術開発は、環境への影響を改善する大きな可能性を秘めているといえる。

Transport & Environmentによると、2035年には、必要とされるリチウムの5分の1以上、コバルトの3分の2以上が、電気自動車の蓄電池のリサイクルから得られるという。「このことは、蓄電密度の向上と相まって、採掘の影響を減らし、輸入への依存度を大幅に下げることになります」という。

(ドイツ)エコ研究所によると、鉄、銅、ニッケルなど、一部の素材のリチウムイオン電池からの回収率はすでに90%に達している。しかし、リチウム、マンガン、黒鉛など、その他の素材の回収率は非常に低く、新しい方法の開発が進んでいるものの、産業用途にはまだ十分な効率が得られていない。


蓄電池を粉砕すると、さまざまな有価物を回収することができるが、中には分離してリサイクルするのが難しいものもある / 写真:フォルクスワーゲン

時代遅れの法律

廃棄された蓄電池は、法律により埋め立て地に廃棄することはできない。2006年のEU電池指令に基づいたドイツ電池法では、小売業者は顧客から電子機器用電池を無料で引き取らなければならないのだ。その後、小売業者は蓄電池をメーカーに渡すことができる。

しかし、この指令は、リチウムイオン電池が急速に普及する以前のものであり、現在主流となっている技術に使用されている部品のマテリアルフローは規定されていない。

現在の指令では、小型蓄電池の部品は燃焼させて廃棄することができるが、大型で高エネルギーの自動車用蓄電池の材料は、少なくとも50%をリサイクルしなければならない。ところが、ADACによると、指令が要求するリサイクルレベルは、筐体の金属やプラスチックを再利用することですでに達成されており、電池セル内の貴金属の扱いは未着手のままになっている。その方がはるかに低コストだからだ。

電池を完全に放電させ、セルをケースから取り出した後、セル内の有価物をリサイクルするには2つの基本的な方法がある。

まず、電池内の成分を溶かすか、あるいは粉砕して粒状にし、それを乾燥させた後にろ過して成分を分離する。ドイツ連邦環境庁によると、通常、リサイクルの取り組みは、貴金属など(ニッケル、コバルト、銅、鉄、アルミニウム)を分離することと、カドミウムや鉛などの重金属が環境中に流出しないようにすることに重点が置かれている。

このようにして回収された資源の中には、経済サイクルに再投入されずに、例えば道路建設のための充填材になってしまうものもある。そのため、「リサイクル」の正確な意味を新たに厳密に定義する必要があると、環境庁は述べている。

自動車用蓄電池の環境配慮設計には、業界標準がない。各自動車メーカーはそれぞれ異なるモデルを使用しているため、廃棄やリサイクルの手順を自動化することは困難だ。現状では、分離は手作業でおこなわれることが多い。

ドイツ政府は、リサイクル量が大幅に増加する前に、リサイクル能力を向上させることを目的としたいくつかの産業および研究プロジェクトを支援している(例:LithoRecLiBRiLithoRec IIEcoBatRecNew-Bat)。

欧州委員会は、循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)の一環として、2020年末に新しい電池規制を提案した。

この規制は、既存の単に小売と廃棄物管理の側面がカバーされている、2006年に制定された既存の指令に取って代わるものだ。新しく提案された指令では、電池部品の安全な廃棄、クリーンで倫理的な調達、持続可能な生産条件、回収クォータ、セカンドライフ、耐久性、環境に配慮した設計などの循環型経済の側面を個別に扱っている。また、2024年半ばまでに電気自動車や産業用ストレージ向けに販売できるのは、カーボンフットプリント開示をおこなった蓄電池のみと規定している。

*この記事の関連コラム「バッテリーの中身は?」はこちら

 

記事:ソーレン・アメラング(Sören Amelang)Clean Energy Wire記者

元記事:Clean Energy Wire “Green resources, reuse and recycling are key to cleaner e-car batteries” by Sören Amelang, 4 May 2021. ライセンス:“Creative Commons Attribution 4.0 International Licence (CC BY 4.0)” ISEPによる翻訳

古屋将太
古屋将太

認定NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)研究員。デンマーク・オールボー大学大学院博士課程開発・計画プログラム修了、PhD(Community Energy Planning)。地域参加型自然エネルギーにおける政策形成・事業開発・合意形成支援に取り組む。著書に『コミュニティ発電所』(ポプラ新書)。共著に『コミュニティパワー エネルギーで地域を豊かにする』(学芸出版社)。

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