——スマートメーターを通じてエネルギービジネスを進化させたい。
そう語ったのは、電気やガスのスマートメーターを製造するLandis+Gyr(ランディス&ギア)の日本法人代表取締役社長、高見栄造氏だ。スマートメーター製造企業として、世界的に知られるランディス&ギア。一時は東芝の傘下に入ったことでも話題を集めた(現在、両者は資本関係はないものの、良好な関係は継続している)。
折しも昨今の日本では、次世代スマートメーターの議論が活発化しつつある。そうした中で、同社は日本にどのようなイノベーションをもたらそうというのか。
―ランディス&ギアはスマートメーターでは世界有数の企業です。その日本法人の社長に就任されたわけですが、あらためて御社の日本での役割について、社長としてどのようにお考えなのか、その点からおうかがいします。
高見栄造氏:私自身は、大手ITのグローバル企業から、キャリア半ばで新しいことにチャレンジするために転身しました。前職ではさまざまな商材を扱ってきましたが、そうした中、スマートメーターに興味を持ち、この分野に専念することにしました。
ランディス&ギアは現在もスマートメーターのプロジェクトに加わっており、国内の電力向けのスマートメーターに使われている技術でも大きなシェアを有しています。結果として、将来のスマートメーターに対する大きな責任を持っていますし、あるべき姿に導いていくためのお手伝いができると思っています。現在、日本では次世代スマートメーターの検討は進められていますが、その発展に寄与したいと思っています。
―スマートメーター事業におけるランディス&ギアの優位性というのは何でしょうか。
高見氏:スマートメーターについては、3つのレイヤーで見ることができます。それはエッジ(端末)、通信、センター(システムやソフトウェアなど)です。
このうちスマートメーター本体となるエッジについては、エッジインテリジェンスということが世界的な潮流となっています。どういうことかというと、スマートメーターをスマートフォンのようにインテリジェント化し、アプリケーションをダウンロードすることで需要家やグリッド(送配電)事業者に必要な機能を提供するものになるということです。
今のスマートメーターは計量して通信するだけですから、この間に頭脳をはさみこむというイメージでしょうか。
では、エッジインテリジェンスを通じて、何が実現できるのか。
まず、ユーザーにとってのメリットですが、HEMS(住宅エネルギー管理システム)のような機能を提供することができます。例えば、各世帯の電力消費のパターンを分析処理して表示することができます。いわゆる見える化ですが、さらにDR(デマンドレスポンス、電力需給に応じた節電)や節電アドバイスが可能になりますし、EV(電気自動車)充電のタイムシフトにもつながります。
一方、グリッド側では、地絡(地面への漏電)やトランス(変圧器)の容量不足、需要側での電圧の情報などを、メーターで検知することにつながります。
さらに、住宅用太陽光発電の余剰電力を3軒先のEVに充電するようなことにも使えるようになるかもしれません。
エッジインテリジェンスを通じて行われることは、スマートメーターのデータの全てをクラウドに集めなくても、さまざまな情報の提供や操作が短時間で可能になるということですし、通信網への負担も減らすことができます。
―通信の部分も課題があります。日本ではマルチホップ式通信が主に使われていますが、今後はどうなっていくのでしょうか。
高見氏:ランディス&ギアでは、通信手段として、Wi-SUN等のメッシュをはじめ、セルラー方式、PLC(電力線通信)など、いろいろな方法にグローバル規模で対応しています。適材適所の考え方で、セルラーとメッシュを組み合わせる方式もあります。これらを含め、通信についてはベンダー間の互換性を標準技術で担保しようというのが世界的な大きな流れとなっています。また、そこに向かって研究開発も進めています。
スマートメーターを全体的に発展させていくためには、通信を標準化した上で使いこなしていくことが重要ですが、同時に1つだけに限定するものではなく、ニーズに合わせていろいろなオプションがあるのが望ましいですね。
そうした中にあって、セルラーについては既に標準技術ですが、メッシュは標準化が進んでいないので、ここは、日本発の標準技術であるWi-SUNの普及に貢献したいと考えています。
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