―ところで、スマートメーターのデータを、マーケティングなどに利用しようという動きも出ています。それはそれでいいと思うのですが、むしろ再エネの増加に対応した系統運用のために、より必要性が高いデータなのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
高見氏:御指摘の通りだと思います。スマートメーターの導入によってDRが実施しやすくなるというのが、わかりやすいケースですが、まずは、小売り自由化をスムーズに進めることができたというのも、成果ではないでしょうか。
再エネ導入促進にあたって、スマートメーターの活用としては、配電網への負荷の軽減がキーポイントになります。配電網の端で取得したデータは、配電網の運用や増強、あるいは蓄電池などのDER(分散型エネルギー資源)の導入や活用に役立つと思いますし、その上で再エネの導入促進にもつながっていくでしょう。
また、EVへの充電を通じて、電力の潮流のしわ取り(安定化)も可能です。実は、EV充電設備を配電網のどこに設置すればいいのか、さらに充電のタイムシフトの実施ということにも、スマートメーターの情報が活用できます。その上、どこで充電してもEVの持ち主に請求がくるようなしくみづくりも、スマートメーターの通信で可能となります。
スマートメーターの役割としては、そういった電力システム本来の使い方というのは、もっと進められてもいいと思います。
―ここまで、国内を焦点に話をおうかがいしてきましたが、一方でグローバルな展開はどのように進められるのか、おうかがいします。
高見氏:米国についていえば、政権交代があり、グリーンインフラ投資が加速します。トランプ政権時代に止まっていたスマートメーターへの投資も進んでおり、活況を呈しています。
例えば、ナショナル・グリッドなどいくつかの電力会社は、エッジインテリジェンスを積極的に導入していく方向です。また、欧州ではEVの積極普及の機運が高まっています。再エネの普及と相まって、EVへの充電を計量し管理することの重要性は増しており、それに伴い、当社も来るべき時代に備えてEVの充電スケジューリングを最適化したり、充電インフラそのものを扱っている企業の買収を進めて来ました。
―あらためて、ランディス&ギアの社会における役割とは何でしょうか。
高見氏:企業の存在は社会に便益を提供できることで成り立っています。ランディス&ギアは世界で、スマートメーターとAMIの周辺事業に経営資源を集中させています。世界中の知見を集め、この分野の製品やサービスを供給し、発展してきたのが、当社の125年の歴史です。
日本においては、グリーン化、レジリエンスの強化、エネルギーのデジタル化は、大きなチャレンジであると同時に世界で存在感を発揮できる大きなチャンスとも言えます。このチャンスをものにするために、当社を推進力の一つとして最大限に活用していただければと思っています。
(Interview,Text and Photo:本橋恵一)
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