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トヨタ・日産、初となる蓄電池の海外拠点を建設も海外進出に付きまとう不安も

トヨタ・日産、初となる蓄電池の海外拠点を建設も海外進出に付きまとう不安も

2021年12月23日

12月7日、トヨタの北米事業体であるトヨタモーターノースアメリカ(以下、TMNA)が、ノースカロライナ州に車載用蓄電池の新工場を建設すると発表した。トヨタの車載用電池工場が米国に建設されるのは初めてのことで、名称は「Toyota Battery Manufacturing, North Carolina(トヨタ・バッテリー・マニュファクチャリング・ノースカロライナ:TBMNC)」に決定した。

慎重派のイメージを覆すべく、EVに対して急進的な動きを見せるトヨタだが、この新工場に掛ける意気込みは特に熱い。TMNAと豊田通商からの投資額(設備や用地、建物分を含む)は約12億9,000万ドル(約1,430億円)に上るとされており、再生可能エネルギー(再エネ)も100%導入だ。2025年の稼働時には年間で20万台分、将来的には6本の生産ラインによって120万台分のリチウムイオン電池を製造していく見通しとされている。

また、EVに関して先行してきた日産自動車も、2022年度には欧州に、2025年度には米国に車載用電池のリサイクル工場を建設する予定だ。日産の海外での電池のリサイクル拠点は初となる。

車載電池のリサイクルに当たっては、住友商事と共同出資した子会社、4Rエナジー社のノウハウを活用していく見通しだ。2020 年代半ばには、V2X と家庭用バッテリーシステムの商用化を目指していく。4Rエナジーでは、現在、福島県浪江町に拠点を置き、廃車から取り出した電池を加工している。

日産は11月末に発表した長期の成長戦略で、上記の計画を表明していた。

車載電池は、コバルトやリチウムなどレアメタルを原材料に使っており、コストが非常にかかる。確保に向けては、世界レベルで入手難易度が上がっているため、日産は、リサイクルによってそれらの課題を克服していく戦略だ。

海外拠点製造に付きまとう懸念点とは

このように、国産自動車メーカーの蓄電池に向けた動きは盛んになっており、海外工場の建設は今後も進んでいくに違いない。しかし、グローバル化の中で海外生産拠点への注力が増え続ければ、国内産業の空洞化が生まれやすくもなる。

産業の空洞化について詳しく言うならば、製造業の生産拠点が海外移転することで、国内市場や雇用の縮小を招き、技術水準等に影響を与えて経済が弱体化することといえる。

確かに、海外拠点の設立は現地の市場を獲得しやすく、企業レベルではメリットがあるだろう。しかし、海外に拠点を持てば、その分だけ国内関連会社への受注は減っていくことになる。受注が減りサプライチェーン(供給網)への関与が減ればその分だけ、雇用機会の喪失にもつながっていきかねない。技術を持った現地の人間が海外別企業へ転職すれば、技術力も流出していく。

もちろん、これらの懸念を裏返せば、外資を誘致するメリットにもつながっていく。最近話題になった世界的な半導体大手、台湾積体電路製造(TSMC)の国内誘致は、技術流出を防ぐための関連法遵守を定めた上で行われた。そして、その目的は、工場稼働後の安定的な生産や投資、技術開発の継続、需要ひっ迫時の増産要請など、経済安全保障への布石だ。

とはいえ、外資に頼って国内半導体の需給バランスをとり経済安全保障を保つ状態への不安もある。どちらにしても不安は付きまとうだろう。

そうなれば、やはり国内拠点の隆盛が一番望ましい。トヨタがEV本格参入のアピールを繰り返しているこの機運に乗って、EV関連の国内製造拠点が増えていくことを求めたいところだ。

 

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高橋洋行
高橋洋行

2021年10月よりEnergyShift編集部に所属。過去に中高年向け健康雑誌や教育業界誌の編纂に携わる。現在は、エネルギー業界の動向をつかむため、日々奮闘中。

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