2021年1月から全国的にノンファーム型接続の受付が開始された。2021年3月12日に開催された、第27回「再エネ大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」では、この1ヶ月間の接続検討・契約申込の状況の報告のほか、東京電力パワーグリッドによるローカル系統ノンファーム型接続の適用、ダイナミックレーティング導入に向けた検討が開始された。本稿ではこれら電力ネットワークの次世代化に向けた取り組みをご紹介したい。
審議会ウィークリートピック
2021年1月13日から受付が開始されたノンファーム型接続は、空き容量の無い基幹系統に適用されるものである。つまり空き容量のある基幹系統は従来通り、ファーム型接続が適用される。
2021年2月時点、全国の基幹系統のうち約2割においてノンファーム型接続が適用されている。
表1.ノンファーム型接続が適用される基幹系統の割合
区分 | ①基幹系統全箇所数 | ②ノンファーム型接続適用箇所数 (当該設備または上位系起因) | 割合(②÷①) |
送電線 | 691 | 152 | 22.0% |
変電所 | 472 | 100 | 21.2% |
合計 | 1,163 | 252 | 21.7% |
出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委
また、ファーム型とノンファーム型を足した全国の接続検討のうち、ノンファーム型の比率は件数で22.4%、容量で17.3%となっている。
表2.接続検討(全国)のうち、ノンファーム型の比率
接続検討 | 件数 | 比率 | 容量(万kW) | 比率 |
ファーム型接続 | 267 | 77.6% | 1,069.9 | 82.7% |
ノンファーム型接続 | 77 | 22.4% | 223.1 | 17.3% |
ファーム+ノンファーム合計 | 344 | 100.0% | 1,293.0 | 100.0% |
出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委資料を基に筆者作成
このノンファーム型接続対象となる全国の接続検討を、電源種別で見たものが表3、図1・図2である。件数では太陽光が多いものの、容量では8割が洋上風力となっている。これは1件あたりの平均容量では洋上風力が圧倒的に大きいためと考えられる。
表3.電源種別ノンファーム型 接続検討
電源種別 | 件数 | 容量 (万kW) | 平均容量 (万kW) |
風力(洋上) | 3 | 177.5 | 59.2 |
風力(陸上) | 0 | 0.0 | ー |
太陽光 | 51 | 18.3 | 0.4 |
バイオマス | 12 | 11.0 | 0.9 |
水力 | 9 | 0.5 | 0.1 |
火力 | 2 | 15.7 | 7.9 |
その他 | 0 | 0.0 | ー |
合計 | 77 | 223.0 | 2.9 |
出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委資料を基に筆者作成
図1.電源種別ノンファーム型 接続検討【件数】
図2.電源種別ノンファーム型 接続検討【容量・万kW】
なお東京電力パワーグリッドでは2019年8月からノンファーム型接続の試行的取組(佐京・鹿島・那珂・港北系統)をおこなってきたが、これまでの接続検討・契約申込の件数・容量合計は表4のとおりである。
ここでも件数ベースでは大半が太陽光、容量ベースでは大半が洋上風力となっている。
表4.東電PG ノンファーム型接続の試行的取組
受付件数 | 受付容量(万kW) | |
接続検討 | 514件 | 1,364.4 |
契約申し込み | 3,879件 | 281.1 |
出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委
再エネ大量導入小委の第27回会合では東京電力パワーグリッド(PG)から、ローカル系統において試行的なノンファーム型接続の適用を開始することが表明された。
上記のように、現在のノンファーム型接続は基幹系統のみに適用されているが、既存系統のさらなる有効利用を図るため、ノンファーム型接続の対象を拡大することが発電事業者から要望されていた。
ノンファーム型接続をローカル系統にも拡大するならば、特高・高圧へ連系を希望する多くの再エネ電源が、速やかに系統連系をおこなえることが大きなメリットである。
他方、ローカル系統でのノンファーム型接続には、基幹系統とは異なる課題・デメリットがあると考えられる。
系統利用ルールが先着優先からメリットオーダー方式に変わることにより、燃料費が掛かる火力から抑制を始め、限界費用がほぼゼロの再エネは優先的に発電・給電されることとなる。
しかしながら、ローカル系統にはそもそも再エネ電源しか接続していないケースが多いため、基幹系統におけるノンファーム型接続と比べ、再エネ電源に対する出力制御(無補償)は増加することが予想される。
東電エリアでは太陽光発電の接続量が増加しており、一部のローカル系統(東電PGの場合154kVと66kVが該当)では、空き容量不足を解消するための増強規模が大きくなり、工期が長期化することが懸念されている。
東電PGでは、今後の想定潮流が運用容量(N-1電制適用後)を超過することが予想され、従来であれば系統増強の対象となる送電線のうち、予想工期が長く増強規模が大きいローカル系統10件を試行的なノンファーム型接続の対象として抽出した。
表5.ノンファーム型接続試行適用対象のローカル系統
出所:東電PG
これら10件のローカル系統においては、特高・高圧および低圧事業用(10kW以上)の発電設備がノンファーム型接続試行適用の対象電源となる。
適用開始時期は、特高・高圧では2021年4月から、低圧事業用では5月からの開始が予定されている。
なお系統への実際の接続時期に関しては、特高・高圧の電源では2024年度以降の接続が条件として設定される。これは現在開発を進めているノンファーム型接続システムの実運用開始が2024年度を予定しており、それまでの間に発電出力制御が出来ず送電線過負荷が発生することを避けるためである。
なお低圧事業用発電設備については、このような接続時期の条件は設けられない。
既存の送電設備の運用容量そのものを大きくしようという技術が、ダイナミックレーティングである。送電線の運用容量は熱容量や同期安定性等の複数の制約により決定されるが、特にローカル系統の大半では熱容量が制約となっている。
送電設備が熱により破壊されること(※)を防ぐため、送電設備(および部品等)ごとに許容温度が設けられている。
(※架空送電線の場合は、熱によって弛むことによる地上構造物との離隔の喪失)
表6.送電設備の許容温度例
変圧器 | 地中ケーブル | 架空送電線 | |
ウィークポイント | 絶縁紙 | 絶縁紙 | 導体 |
許容温度 | 105℃ | 85℃ | 90℃ |
出所:東電PG
現在日本ではこの熱容量を、例えば外気温 40℃、風速 0.5m/s、日射量 1,000W/m2などの一定の固定値を用いて「静的な」数値として設定している。この結果、送電設備の熱容量は現実の気象に左右されることなく、固定的な値となっている。
ここで容易に想像がつくように、寒い日や風が強い日は、架空送電線は外気で冷却されることにより、同じ電力を送電しても送電線は許容温度を超えにくくなると考えられる。
ダイナミックレーティングは外気温や風速等の気象条件を動的に把握し、送電線の熱容量・運用容量を動的に拡大しようという技術である。
図3.送電線ダイナミックレーティング(DLR)のイメージ
出所:再エネ大量導入・次世代電力NW小委
欧米諸国ではすでに、送電混雑の低減や設備利用最適化によるコスト効率化を目的としてダイナミックレーティングが採用されており、再エネ導入の促進にもつなげられている。
欧州のENTSO-E(欧州大陸の系統運用者)ではダイナミックレーティングの成果の例として、最大容量が40%~100%増加した事例や、90%以上の時間で平均容量が10~15%増加した事例を紹介している。
なおダイナミックレーティングは日本でまったく使用されていないというわけではなく、東電PGからは変圧器での採用事例が紹介された。
東日本大震災後の供給力不足の中、送電設備がネックとならぬよう開発された技術である。
東電PGの変圧器ダイナミックレーティング装置では、電力潮流や外気温、変圧器の絶縁油温度等をリアルタイムで測定・監視することにより、絶縁紙の温度限界値まで運転する。
熱容量を超過することが見込まれる場合には、発電機に対して出力制御を指令するものである。
ダイナミックレーティングでは外気温等をリアルタイムで計測するが、仮に前日に取引される卸電力取引所のスポット市場に活用するならば、翌日の正確な気温予測が不可欠となる。このため当面は、ノンファーム型接続電源の出力制御量低減を目的とした実需給断面での活用が想定される。
また現在、地域間連系線の運用容量は電力広域的運営推進機関において算出されている。。このため地域間連系線におけるダイナミックレーティング導入の是非について、広域機関で検討が進められる予定である。
海外での豊富な事例を参考に、幅広い領域において日本でもダイナミックレーティングの導入が進むことを期待したい。
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