再エネ出力制御の低減に向けた取り組み 第31回「系統ワーキンググループ」 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

再エネ出力制御の低減に向けた取り組み 第31回「系統ワーキンググループ」

再エネ出力制御の低減に向けた取り組み 第31回「系統ワーキンググループ」

2021年10月14日

2021年9月30日、経済産業省の第31回「系統ワーキンググループ」が開催された。そこでは、すでに九州エリアで実施されている、太陽光発電や風力発電の出力制御の低減対策が議論された。せっかくの再エネの電気をより活用できれば、CO2排出量を削減できる。そのためには、どのような方策が可能なのだろうか。

審議会ウィークリートピック

今後は九州以外のエリアでも出力制御の可能性

太陽光や風力発電といった変動型再エネの増加に伴い、九州エリアでは2018年から再エネ出力制御(抑制)が発生しているが、今後は複数のエリアで出力制御実施の可能性が高まりつつある。

設備容量kWベースだけでなく発電量kWhベースで再エネ導入量を増加させるには、再エネ出力制御量の低減が重要であり、再エネ大量導入小委や系統ワーキンググループ(以下、系統WG)では、その対策が継続的に検討されてきている。

その対策は主に、①出力制御の効率化、②供給対策、③需要対策、④系統対策の4つに分類されており、第31回「系統WG」では一般送配電事業者各社の取り組みが報告されたので、本稿ではその概要をお届けしたい。

再エネの導入状況

まずは変動型再エネ(太陽光・風力)の導入比率が高い、5エリア(北海道、東北、四国、九州、沖縄)の電力需給や再エネ導入量等を確認しておきたい。(単位はすべて万kW)

表1.電力需給と変動再エネ導入量

2020年度北海道東北四国九州沖縄
最大需要5411,4805331,637158
最低需要22759619162356
変動再エネ導入量2528173211,08843

出所:系統WG資料を基に筆者作成

図1.電力需給と変動再エネ導入量

出所:筆者作成

4エリア(北海道、東北、四国、九州)ではすでに変動型再エネ導入量が最低需要を上回っており、四国や九州エリアでは平均需要すら上回っていることが分かる。

例えば九州エリアでは、変動再エネの2011年以降の年平均導入伸び率が31%となっている。ただし近年ではその伸び率は鈍化しており、他エリアでも同様の傾向である

図2.九州エリア 変動再エネ導入伸び率

出所:九州電力送配電

表2.変動再エネ導入量の年平均伸び率

 北海道東北四国九州沖縄
2012年から2020年まで約28%約32%約29%約31%約24%
2012年から2016年まで約41%約45%約49%約52%約40%
2016年から2020年まで約14%約19%約9%約10%約5%

出所:系統WG

火力等の最低出力

優先給電の順序としては、火力等(化石燃料火力およびバイオマス)を最大限抑制したのちに、それでもやむを得ない場合には変動再エネが出力制御されるルールとなっている。 このため再エネ出力制御が実施される九州エリアでは、需要に占める火力の割合は13.2%まで抑制されており、東北等でも比較的小さな値となっている。

表3.2021年最小需要日における火力の出力

 北海道東北四国九州沖縄
最小需要日時4月11日13時5月4日12時5月3日12時5月3日12時4月18日12時
"需要に占める火力の割合
(火力計/需要)"
29.8%26.3%47.2%13.2%59.6%

出所:系統WG

火力等の出力を抑制するためには、発電を停止する(出力ゼロkW)ほかに、運転を継続しながら最低出力までkWを抑制するという2つの選択肢がある。

このため2019年の系統WGにおいて、最低出力は「技術的に合理的な範囲で最大限抑制し、少なくとも50%を上回らない」こととされ、同年10月に「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」が改定された。これにより2020年4月以降、新規の火力等設備については、最低出力を50%以下とすることが求められている。

また既設についても、新規と同様の調整機能(最低出力等)を具備することを促していくとされている。

2021年7月末時点における既設の電源Ⅲ火力およびバイオマスのうち、最低出力が51%以上である電源は表4のとおりである。

表4.最低出力51%以上の電源Ⅲ火力およびバイオマス

 事業者数(設備容量)
 北海道東北四国九州沖縄
電源Ⅲ火力(石油)00000
電源Ⅲ火力(石炭)02(30.6万kW)000
電源Ⅲ火力(LNG)00000
混焼バイオマス1(10.4万kW)3(41万kW)02(22.4万kW)0
専焼バイオマス2 (7.6万kW)4(10.8万kW)1(6.3万kW)3(14万kW)0

5エリアでは、最低出力が51%以上の電源Ⅲ火力はすでにわずか2件となっており、このうち1件は最低出力運転試験で問題ない場合は50%以下とする予定である(残り1件は設備改修費用が多大となる見込み)。

現時点、バイオマス発電では50%を超過する電源数が相対的に多いが、低出力運転により燃焼不安定や蒸気温度の低下が発生し、不完全燃焼等のトラブルが発生する可能性があることがその理由とされている。ただし例えば九州エリアでは、いずれも最低出力低減に向けた試験を実施中であり、専焼バイオマス3社のうち1社は2021年度、2社は2024年度に50%以下となる予定である。

なお系統WGにオブザーバー参加しているバイオマス発電事業者協会は、会員企業を対象にアンケートを実施し、36社から回答を得たとのことである。

これによると大規模電源(50~75MW)では設備仕様上の最低出力が50~60%であり、中小規模電源(10~20MW。主に国産燃料100%)あるいはそれ以下の規模では、最低出力70~75%との回答であった。

バイオマス発電の場合、燃料の性質が化石燃料と異なるため、低出力では燃焼が安定しにくいことや、循環流動床では出力を上下変動させると設備が痛みメンテナンス費用が掛かること、不完全燃焼で排ガスのNOx値が環境規制を超えること、地元林業者との燃料引き取りの約束が守れないおそれがあること、などが理由として述べられている。

資源エネルギー庁では火力等の最低出力のさらなる引き下げに向けて、メーカーからヒアリングをおこなうなど、技術的な検討を進める予定である。

また最低出力の引下げを促すインセンティブとして、出力制御時に稼働する発電所名を公表することや、最低出力を引下げない場合の経済的なディスインセンティブを検討することが案として示されている。

予測誤差実績(需要、太陽光・風力)

出力制御を効率化させるには、需要や太陽光・風力出力の予測精度を向上させることが有益であり、これにより不必要な(無駄な)出力制御を低減することが可能となる。

5エリアの需要想定の予測誤差(2020年度)は表5のとおりである。エリアにより、大きな差異は見られない。

ここで予測誤差とは、翌日最大予想と当日最大実績より平均絶対パーセント誤差(MAPE)を算出している。

(算定式)

前日想定の最大電力需要見通し(kW)…A
当日の最大電力需要実績(kW)…B
前日想定誤差:(|B-A|)/B×100の月平均および年平均

表5.需要想定の予測誤差(2020年度)

 北海道東北四国九州沖縄
4月2.7%1.8%2.6%1.8%3.1%
5月2.8%1.9%2.3%2.7%3.7%
6月2.0%2.5%4.0%2.8%2.2%
7月2.4%2.3%3.5%3.7%1.4%
8月3.3%2.6%2.4%2.8%1.8% 
9月2.4%1.9%5.5%3.8%2.5%
10月1.5%1.4%2.1%1.5%1.7%
11月2.0%1.7%2.5%1.9%1.6%
12月1.6%1.8%2.3%1.8%1.4%
1月2.7%1.4%3.2%2.3%1.7%
2月2.4%1.7%3.4%2.6%1.4%
3月2.9%2.1%2.6%1.6%2.3%
年平均2.4%1.9%3.0%2.4%2.1%

図3.需要想定の予測誤差(2020年度)

出所:系統WGを基に筆者作成

また、太陽光・風力出力の予測誤差は表6のとおりである。

ここでの算定式は、

・前日想定誤差:当日実績(1時間値)-前日想定(1時間値)の1日の最大誤差(絶対値)の年平均(kW)…A
・年度末時点の設備容量(kW)…B
・設備量比:A/B×100…表6の数値

表6.太陽光・風力の予測誤差

 北海道東北四国九州沖縄
太陽光15.6%10.6%13.0%9.9%22.8%
風力17.0%13.4%17.0%15.6%27.8%

出所:系統WGを基に筆者作成

九州エリアでは相対的に太陽光の予測誤差が小さいようである。

しかしながら導入量も1,029万kWと大きいため、前日想定誤差(年平均)は102万kWに上る。予測外れに備えた調整力の確保が必要とされる。

発電設備のオンライン化

現時点、太陽光・風力発電ではオンライン制御が可能な発電所と、そうでないオフライン発電所の2タイプが存在する。

きめ細やかな制御が可能となるオンラインと異なり、オフラインでは前日指示が必要となるため制御量が過大となりがちである。よって出力制御量を抑制するためには、オンライン制御への移行が不可欠である。

オンライン化の進展状況は表7のとおりであり、太陽光では特に「⑤旧ルール事業者のオンライン切替え率」において、エリア間の差異が大きい。すでに出力制御が実施されている九州では高めであるが、それでもまだ半数程度にとどまっている。

九州の①オンライン化率は70.1%であるが、表7の数値は当面の出力制御対象者(旧ルール高圧500kW以上等)に限った設備容量であるため(九州では642万kW)、その対象外も含めると九州では太陽光が1,029万kW存在するため、オンライン化比率は実際には4割程度に留まると考えられる。

また風力ではエリア間の違い、太陽光との傾向の違いも大きい状態である。

表7.オンライン化の状況(2021年7月末時点)

  北海道東北四国九州沖縄
太陽光①オンライン化率
((②+④)/(②+③+④))
67.9%44.1%57.9%70.1%47.7%
②新・無制限無補償ルール、オンライン事業者29.8179.7892523.8
③旧ルール(30日)、オフライン事業者50.5280.1721924.5
④オンライン制御可能な旧ルール事業者76.941.5101980.3
⑤旧ルール事業者のオンライン切替え率
(④/(③+④))
60.4%12.9%12.2%50.8%6.3%
 
風力①オンライン化率
((②+④)/(②+③+④))
82.7%81.4%28.6%18.5%0.0%
②新・無制限無補償ルール、オンライン事業者43.587.604.80
③旧ルール(30日)、オフライン事業者9.230.12051.11.2
④オンライン制御可能な旧ルール事業者0.443.886.80
⑤旧ルール事業者のオンライン切替え率
(④/(③+④))
4.2%59.3%28.6%11.7%0.0%

出所:系統WGに筆者補足

発電事業者は、オンライン制御に移行することにより制御量が減少するため、中期的には自社の経済的メリットが大きいはずであるが、実際には移行は停滞しつつある。

この理由としては、PCSの交換や通信線の構築等のため、1MW規模発電所では500万円程度の初期費用が掛かることが指摘されている。

これらの発電事業者は、次回のPCS交換のタイミングではオンライン化への移行は検討するものの、それまでは現状維持という考え方のようである。

このため九州電力送配電からは、一般送配電事業者のみではこれ以上のオンライン制御への移行促進は困難であり、業界団体や国からの協力を得たい旨の発言がなされている。

一部委員からは、オンライン制御に移行しない事業者名を公表する方策が提案されているが、資源エネルギー庁事務局からは法的根拠がないため、公表は困難である旨が回答されている。

2021年度九州本土における出力制御見通し

第28回系統WG(2020年12月)において、九州エリアの2021年度出力制御率は4.6%との見通しが報告されていたが、今回その見通しが更新された(8月までは実績)。

月により増減はあるものの、年度累計では同程度の4.6%というシミュレーション結果となっている。

表8.九州エリア2021年度太陽光出力制御見通し

 4月5月6月7月8月9月~3月年度累計
第28回系統WG(2020年12月)16.4%10.7%2.4%0.1%0.0%2.8%4.6%
今回(第31回系統WG)14.4%13.6%1.1%0.1%0.0%3.4%4.6%

出所:系統WG

2020年度冬季の需給逼迫や2021年度夏季の火力発電所トラブルに伴う供給力確保策として、揚水発電所の補修日程を低負荷期(春・秋)に変更せざるを得なかったことにより、出力制御量の増加要因となっている。

他方、オフライン電源のオンライン化が前回想定よりも進展したことが、出力制御量の減少要因となった。

まとめ

オフライン電源のオンライン化は有効な方策ではあるものの、より重要な対策である需要側リソースの活用については、まだ十分な施策が打たれていない状態である。

EV(電気自動車)を含む蓄電池や水電解(水素生産)などによる、上げ方向のデマンドレスポンス(DR)の活用に向けた検討が進められることを期待したい。

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

この記事を読んだ方がよく読んでいる記事

審議会を見るの最新記事