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ビル・ゲイツもNextEra Energyも注目、「リニア発電」とは何か?

ビル・ゲイツもNextEra Energyも注目、「リニア発電」とは何か?

2021/06/08

これまでの発電機の常識を変える発電システムがある。それが「リニア発電」だ。発電機を開発するのはカリフォルニアを拠点とするMainspring Energyというスタートアップ。マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツなどが出資し、再エネ系電力会社のNextEra Energyが熱視線を送っている。自家発としても系統運用の補助としても使える多用途が魅力のリニア発電機とは?

スタンフォード発の新進気鋭スタートアップ

リニア発電とは、永久磁石が往復直線運動をする振動によって発電する仕組みだ。

動画を見てもらえればわかるが、エンジンのピストンがそのまま回転運動に変換せずに発電する、ということになる。

振動を回転運動に変換せず、直接電気エネルギーに変えるためエネルギー効率が高い。

この技術を利用した自動車などのエンジンシステムは「Free Piston Engine Linear Generator (FPEG)」と呼ばれる。回転軸であるクランクシャフトが不要で、省スペースというメリットもある。以前、トヨタも開発に取り組んでいることが報じられた

Mainspring Energyは、カリフォルニアを拠点にリニア発電機によるソリューションを展開するスタートアップだ。2010年にスタンフォード大学出身のシャノン・ミラー、マット・スヴルセク、アダム・シンプソンの3人のエンジニアによって設立された。

2021年5月4日時点で、ビル・ゲイツや米国の大手電力持株会社American Electric Power、欧州勢のEquinor Venturesなどから2億2,800万ドルあまりの資金を集めている。

バイオマスや水素を燃料にすればクリーンな発電

Mainspring Energyのリニア発電の仕組みについて、もう少し紹介しよう。

ピストンには永久磁石がとりつけてあり、銅のコイルの内側で動くようになっている。一方、シリンダーには空気と燃料をまぜたものを送り込み、一般のエンジンのように燃焼させる。

この燃料のエネルギーと、反対側にある空気のバネ(Mainspring)によって、磁石となるピストンが銅のコイルの内側で直線運動する。エンジン発電機では、ピストンの直線運動を回転運動にして、発電機を回転させているが、リニア発電機の場合は回転することなく発電していくということだ。


出典:Mainspring

また、温度を1,500℃未満に維持するため、窒素酸化物(NOx)をほとんど発生しないクリーンな発電システムであることも特長。高効率ゆえにCO2の発生も抑制できる。

再生可能エネルギーであるバイオガスや、カーボンゼロの水素といった多様な燃料種別に対応できることに加え、製造やメンテナンスコストも低く抑えられる。一般的なディーゼル発電機に欠かせないエンジンオイルも不要だ。自家用発電機として利用できるだけではなく、急峻なグリッドの変化に応動して給電できる負荷追従用の発電機としても貢献することが期待されている。再エネの変動を緩和することができるということだ。

主なスペックは三相交流480V、発電容量240kW。標準的な8フィート×20フィートサイズのコンテナにパッケージされている。


出典:Mainspring

こうしたリニア発電機の特性から、Mainspring Energyのターゲットは多岐にわたる。商業・産業需要家向けには自家用発電機として、送配電事業者にはグリッドの安定化のための電源として販売できる。また、電気自動車の充電やマイクログリッドを構築するリソースのひとつとしても活用できる。

購入方法は、直接購入とエネルギーサービス契約の2つだ。エネルギーサービス契約では、顧客は中長期の契約を結び、発電した電力量に応じたサービス料金を支払う。初期投資なくリニア発電機を導入できる。Mainspring EnergyはNextEra Energyとタッグを組んでエネルギーサービス契約を提供している。

NextEraと1.5億ドルのプロジェクトファイナンス

2021年3月9日、Mainspring Energyが第一号の発電機Mainspring Linear Generatorを発表し、再エネによる大手発電会社NextEra Energy Resources(NEER)と1.5億ドルの売買契約およびプロジェクトファイナンスを結んだと明らかにした

NEERは2021年上期から購入を始め、自社の顧客にMainspring Linear Generatorを導入する計画だ。具体名は明かされていないが大型スーパーマーケットチェーンでテストを行い、最大で30の店舗に導入を拡大するとしている。

この他にも、大型小売店や食料品店などへの出荷を進めており、物流、通信、さらに排水処理施設ではバイオガス100%による提案を行い、協議中だという。

さて、NextEra Energyグループの近況にも触れておきたい。4月21日の発表によると、2021年第一四半期の持株会社であるNextEra Energyの収益は、前年同期の11億7,000万ドルから約1.6億ドル増の13億3,000万ドルとなった(調整後ベース)。NEERも堅調で、第一四半期だけで全世界で1,750MWの再エネ発電所および蓄電設備を契約したという。

リニア発電機という新技術で再エネへのシフトをサポートするMainspring Energyと、一時は石油メジャーの時価総額を抜いた飛ぶ鳥を落とす勢いのNextEra Energy。多彩な可能性を秘めたリニア発電機が、両社のタッグによっていかに活躍するかに注目だ。

山下幸恵
山下幸恵

九州大学文学部卒。九州電力グループ会社にて大型変圧器・住宅電化機器の販売に従事。新電力ベンチャーにおいて、ディマンドリスポンスやエネルギーソリューションの提案を行う。自治体および大手商社と地域新電力の立ち上げを主管。福岡市にて、気候変動や地球温暖化、省エネについての市民向けセミナーを実施。2019年よりエネルギーライターとして活躍中。

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