台風や豪雨などの自然災害が、被害を補償する損害保険各社の大きな経営リスクになるなか、損害保険大手の東京海上ホールディングスは、気候変動リスクを軽減させるため脱炭素戦略を強化する。2030年度までに東京海上グループが排出する温室効果ガスを60%削減させるという。
多発する自然災害の発生は、火災保険などの支払いを増やし続けており、日本における年間支払額は1兆円を超えている。こうした状況が続けば、損保各社は巨額の支払いを補填するため、火災保険料を引き上げなければならない。保険料が高騰し続ければ、誰も保険料を支払えなくなり、損害保険の業務そのものが成り立たなくなると言われている。
損保各社にとって、気候変動リスクにどう向き合っていくのかが、大きな経営課題となっている。
そのため、三井住友海上などを傘下にもつMS&ADホールディングスやSOMPOホールディングスなどは、2050年脱炭素の達成を目指している。
こうしたなか、東京海上日動などを傘下に持つ、国内最大手の東京海上ホールディングスは5月28日、脱炭素社会の実現に向け、2030年度までの新たな目標をまとめた。
その目標は、東京海上グループが排出する温室効果ガスを2015年度比で60%削減し、同じく2030年度までに、主要拠点で使用する電力を100%再エネに切り替えるというもの。さらに東京海上日動が保有する社有車をEV(電気自動車)やプラグインハイブリッド車(PHV)、HVなどの電動車にすべて転換させるという。
国内最大手が新たな戦略を掲げたことで、損保業界における脱炭素の取り組みが一段と加速しそうだ。
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